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【連載版】愛してると言われても、頭上の数値は『殺意MAX』ですが?  作者: セトガワ トウ


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13/14

13話 エラー

 みんな逃げろ。

 そんな叫び声がして、一人の男子生徒が中庭を汗だくで走り抜けてくる。


「実習で使うはずのアサシン・ゴブリンが逃げ出した。危険すぎる、すぐに建物に入れ!」

 

 アサシンゴブリンの名を聞いた途端、生徒たちの顔が青ざめた。

 普通のゴブリンより、ずっと動きが速く攻撃性が高いと有名だからだ。

 

「ねえ見て! あれじゃない!?」

 

 男を追ってきたかのように、遠目にゴブリンを確認できた。

 皮膚が青白く、鷲鼻で醜い顔をしている。

 背丈こそ1メートル50センチもない小柄だけど、油断はできない。

 凄い速さで迫ってくるゴブリンに、生徒たちは悲鳴をあげて逃げ惑う。


「ソラリス、僕の後ろへ。下手に逃げるより安全だ」

 

 凜々しい顔をしながら、アーサーが私の前に立つ。

 なにも知らなければ、かっこよくて惚れるだろう。

 でも、すべては彼の仕込み。

 あの生徒はアーサーの息がかかったもので、わざとゴブリンを逃がした。

 ゴブリンは、爪と牙を抜かれているため殺傷力はほぼない。

 そこをアーサーが仕留めて、かっこつける。

 すべては、自分に惚れさせるために。

 ――なにか手頃な物はない?

 私は周りを見る。

 握りこぶし大くらいの大きめの石を見つけたので、それを素早く拾う。

 このイベント、黙って見ていてはダメなのだ。

 アーサーが撃退に成功すると、私はバッドエンドに近づく。

 彼は自信をつける上、その後やることなすこと上手くいくようになってしまう。

 最終的に、私と結ばれる可能性が高まる。

 だから絶対に妨害したい。


「僕の大切な人を傷つけるつもりなら、この剣で返り討ちにしてやろう!」

 

 チラッとこちらに視線を送ってからアーサーは剣を抜き、走り出した。

 そのタイミングで、私は足を出した。

 

「――おわぁっ!?」

 

 足をひっかけられたアーサーは、ダイブするように地面に突っ込む。

 私はすぐに持っていた石を地面に置いた。


「なにをするんだ、ソラリス!?」

「違いますわ、石に足を引っかけたのです」

 

 起き上がったアーサーに、そう説明しておく。

 この間、ゴブリンは私たちには見向きもせずに校舎に向かっている。

 猛獣と同じで、逃げる者を追う性質だ。

 アーサーが倒さなかった場合、校舎から出てきた先生が退治してイベントは終わる。

 残念だったわね、アーサー。

 勝利を確信して笑いかけたとき――アーサーが思いがけない行動を取る。


「逃げるな、この醜い化け物め!」

 

 落ちていた小石を投げたのだ。

 それは走行中のゴブリンの後頭部に直撃した。


「……シャァ……?」

 

 ゴブリンは立ち止まり、静かに怒りながら振り返った。

 その鋭い目は、完全に私を捉えていた。

 どうやら、私が投げたと勘違いされてしまったらしい。


「あ、あれ、剣は?」 

 

 最悪なことに、アーサーは転んだときに遠くに飛ばした剣を取りにいく。

 当然、私を守る人は誰もいない。

 そんな中、アサシンゴブリンは怒り任せに私に襲いかかってきた。


「シャアアア――!」

 

 跳躍して飛びかかってくるゴブリンの動きはあまりにも速い。

 一か八かで動き出すが、これはやられてしまうと本能で悟った。

 腕で頭を守り、防衛の構えを取る。


「……クソ。マジでだりぃ」


 気だるげな声を聞こえ、黒い影が私とゴブリンの間にスッと入り込んできた。

 ――日本刀を持った男子生徒だった。

 彼は剣を抜くことなく、鞘ごとゴブリンの頭部をたたきつけた。

 

「ギシャア!?」

 

 耳をつんざくような悲鳴をあげ、ゴブリンがごろごろと地面に転がって動かなくなった。

 よく見ると、頭部が大きくへこんでいる。

 たった一撃で、あんなダメージを与えたことに私は驚く。


「歌やら魔物やら、騒がしいな。昼寝もできねぇよ」

「あ……ええと、助かりましたわ」


 ……この人は、木陰で眠っていた男子だ。

 なぜ日本刀を持っているのかと疑問に思っていた。

 彼は私のことを眺めた後、興味深そうに話す。


「お前、わざと足を引っかけただろ。おもしろい性格してんな」


 見られていたらしい。

 どう言い訳するか頭を悩ませていると、アーサーが駆けつけてきた。


「ソラリス、怪我は!?」

「問題ありませんわ。彼が助けてくれたのです」

 

 私にとっては命の恩人。 

 でもアーサーにとっては、計画を邪魔した憎き相手になっているようで厳しい口調で言う。


「僕の獲物を横取りして、邪魔したな」

「妙な言い方だな。それじゃまるで、初めからお前が討つ予定だったみたいだ」

「うっ、そんなことは……」

 

 図星だったアーサーは一気に勢いが消え、後ずさる。

 完全に見抜かれている。

 私はゲームのキャラを思い出しながら、彼をチェックする。

 ウェーブがかった黒髪に、アーサーよりも整った中性的な顔立ち。

 筋肉質でスタイルがよく、血のように赤い瞳は一度見たら忘れないだろう。

 ……やっぱり、こんなキャラいなかったよね。

 念のためシステムを起動して、私は思わず声を漏らしてしまう。


「え!?」

 

【ERROR】

  

 たったこれだけが表示されたからだ。

 システムエラー?

 心配そうにアーサーが顔をのぞき込んでくる。


「どうしたんだい、ソラリス?」

「いえ、なんでもありませんわ」


 動揺を隠そうとすると、黒髪の彼が薄く笑う。


「ソラリスか。あんたは、少し違って見えるな」

「違って見える? どういう意味でしょう?」

「俺にはどいつもこいつも、なにか役割を演じているように見える。だが、お前は少し違う気がした。一応、覚えておく」

 

 そう言って、彼は校舎とは逆の方に歩き出す。

 この人も、この世界がゲームの世界だと気づいている? 

 でも確信は持っていないような話しぶりだった。

 少しでも手がかりが欲しい私は、咄嗟に声をかける。


「お名前をうかがっても?」

「カゲロウだ」

「その剣、特殊な形状ですね。なんという剣でしょう」

「さあな」

 

 短く答えると、カゲロウはさっさと立ち去ってしまう。

 失礼だとカンカンになるアーサーの横で、私は彼の背中を眺めた。

 なぜ、彼にはシステムが機能しないのだろう?

 私と同じように特殊な存在か、もしくはバグ的なものだろうか。

 私の知らないDLCで出てくるキャラなのかもしれない。

 ……ボツになった未実装キャラだったりして……。

 謎だ。


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