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X'mas Rose〜聖夜に咲く白き薔薇は紅に染まる  作者: 里井雪


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エピローグ〜守護者

 ふぅ〜 なんとか間に合ったようだ。


 私は、我が父ニールと母ロゼの物語を書き終えた。もはや思い残すことなど……。


 ない、ない、ない、ない、ない、ない。


 さて、そろそろ夜が明ける。そっと覗いた隣室では、眠り薬で無理やりに寝た妻と、息子が寝息をたてている。その寝顔をじっと見つめ、私は心の中で『さよなら、ありがとう』と呟いた。


 明け方の薄明かりの中、窓の外を見れば、二階の窓に届くほどに成長したケヤキの木、秋には美しい紅葉を見せてくれるが、今は冬、葉を落とした枝が寒風に戦いでいる。


 あれ? 微かになにか聞こえる。歌か? どこかで聞いたような曲だ。


〜♪

Sah ein Knab' ein Röslein stehn,

Röslein auf der Heiden,

War so jung und morgenschön,

Lief er schnell, es nah zu sehn,

♪〜


 そうか! これは、イーサ王宮から逃れて来た王付きのメイドが聴かせてくれた曲、母がこよなく愛した歌『野ばら』だ。


 だが一体、誰が?


 窓の下を見る。まだ仄暗いが、確かに人影が見えた。赤い髪? まるで母のような!!


「ド、ドロシーおばさん! なぜ、ここに!!」


「あはは、鈍いなぁ〜 ウィルは。気配で気付いてくれないから唄っちゃったよ」


「あ、あの……」


「窓はそのまま開けといて、後ろに下がってくれるかな」


 譬え話ではなく、本当に(ましら)の如く、ドロシーおばさんは、器用にケヤキの木に登った。だが、木と窓の間はかなり離れている。ところが、やはりダンピールの運動能力は尋常ではない。五メートルを助走なしで飛んだと思ったら、クルリと宙返りをして、音もなく窓際に着地した。


「お隣の二人、起こさなかったよね」


「え、ええ」


 私は祖父母とも言うべき存在、魔族の国に亡命したミシュラ・ワハームの村長エーリヒ・マイアー、と、アンナによって育てられた。その頃、故あってドロシーおばさんとも同居していた。


 だが、リバがクトゥル・アル・シュタールの属国となり、私は成人するとすぐ祖国に戻され結婚した。だが、ドロシーおばさんは私を訪ねてきてくれている。いつも、突然に……。


 女性の年齢を明かすのは気が引けるが、もう彼女は四十歳を超えているはずだが、魔族の血故、その容姿は、まだ女学生のよう。ショートヘヤーがよく似合う、チャーミングな女性だ。


 最後の挨拶にでも来てくれたのか? だけど、なぜ、窓から入る必要がある?


「魔族の幹部を説得するのに時間がかかってね。でも、間に合ってよかったよ。窓から来たのはね、魔王の密書を届けるためさ」


 彼女は、本当に鋭い、私の表情を見るだけで、何を考えているのかが手に取るように分かってしまうようだ。


「どういうことですか? 全く事情が飲み込めません」


 私は密書を受け取り開封しようとした。


「ああ、手紙は、後でゆっくり見てくれればいい。時間がないので、単刀直入に言うね。今日の試合、八百長をやってほしいのだよ」


「や、八百長ですか!」


「ああ、魔王の意向により、今日の試合は引き分けにする」


「じゃ、この手紙は?」


「そ、八百長のシナリオが書かれている。観衆にばれないよう、上手くやってね」


 ドロシーおばさんが言うには、魔族の国は人族の国との平和な共生を望んでいる。この試合の引き分けをもって、魔の森、ミシュラ・マ・フルシュの領有権は折半、今は魔族領となっているリバ北部も両国の共有、さらに、宗主国と属国となったリバとクトゥル・アル・シュタールの関係を対等とし、同盟を結ぶ、というのだ。


「リバにとっては、とてもありがたいことですが、クトゥル・アル・シュタールのメリットが何もない気がします」


「魔族、それも魔力の高い者には、夢見の力、予知能力があるのだよ」


「はい?」


「数日前、魔王の夢に、君の子が出て来た」


「ニールのことですか?」


「いいや、まだ、奥方のお腹にいる、君の娘だよ」


「!!!!』


「そう、彼女はブラッディローズの力を持って生まれる」


 なるほど!! 理解した。


「私が家族ともども魔族の国に協力することが条件ということですね」


「そういうこと、魔族幹部の中には、君の妻君を暗殺せよ、なんて、暴論を言うヤツもいたけどね」


「ドロシー叔母さんが説得してくれた、ということですか」


「うん、従わなければ殺す! と言ってやっただけだけどね。でも、魔王、僕の姉は、道理が分かる女だよ。真の敵はオステンだ、という点をよく理解している」


 オステンはイーサを滅ぼし自国領とし、リバはクトゥル・アル・シュタールの属国、両国にとってウインウインの共闘だったわけだが、オステン皇帝の領土への渇望は止まる所を知らない。魔族の国もいつまでも安泰とはいかないだろう。


 確かに魔族軍はこの世界随一というくらい強い。だが、オステン機甲師団の物量はそれをも上回る。犠牲は覚悟の上、十倍の兵力で来られては、精強な魔族軍も敵わないだろう。


「私は命を救われる身、否はないですが……」


「ああ、分かってるよ、君の娘をロゼの二の前には決してさせない。そこは、僕を信じてほしい」


 ドロシーおばさん、しばらく沈黙を保ち、何か考え事をしているようだったが。


「ちなみに、娘ができたと分かって、その名前、ロゼと付けるんじゃないだろうね」


「ニールと並び、不吉ですか?」


「う、うん、まぁね。子供が一生使う大切な名前なのだから、よく考えてよね」


「はい」


「あ、もう明るくなってきたね。見つからない内に、僕は失敬するよ。またね、ウィル」


「ええ、本当にありがとうございました。ドロシーおばさん、あなたは、私の命の恩人です」


「ま、感謝するなら、これを決断した魔王にすべきじゃないかな」


 そう言った、ドロシーおばさんは、窓枠に手をつきその反動を利用して、ケヤキの木に飛び移る、するすると木を降りたかと思うと、瞬く間に朝霧の中に消えた。


 きっとこれは神の配剤、天国にいる父母の恩寵が地上に届いたということだろう。


 だが、であるが故に、私には重い、重い、責務が生まれた。ニール、やはり娘の名は、ロゼにしよう。同じ名を持つ二人が、あのような悲劇に堕ちぬよう、命を賭けて守らねばならない。


 私の名、ウィルは「勇敢なる守護者」を意味する。


 そう、神は、今……。


〜♪

  私の魂を、最も相応しい場所に運ばれた。











 去年のクリスマスからですね。長い間、お付き合いいただき、ありがとうございました!


 今回は、原点中の原点、なろうに書き出して完結できず削除してしまった旧作品の「リベンジ」でした。


 難しい言葉を使ってしまいがちな私なので、分かり易くしようと思って始めた一人称を封印し、時々意図的に崩してはいるものの、文芸風表現も多用。しかも転生なしのエピックファンタジーにしちゃいました。


 さらに、さらに、「人殺し」大好きな本性丸出しで、ほぼ全てのメインキャラを殺しております。まーー、誰が残るかがお楽しみ的な? このエピローグは、いくらなんでもねぇ〜 と考えた忖度みたいな?


 だから、ウケないのは覚悟の上ではあったのですが、いや、ここまでとは(^^;;


 ただ、去年あたりから、なろうに書いた小説を読んでくださった方から、YouTubeの音声作品や朗読劇の脚本を書くお仕事が来るようになりました。「私の作品を評価してくれる人もいるじゃん!」と思えるようになり、これは、これ、結果論と冷静に受け止めてはいます。


 でも、次の長編は一人称に戻してノクターンで出そうかな? やっぱり、ブクマやPVそれなりに来た方が張り合いありますからね。


 なーーんて、内容のこと、全然言ってないじゃん!


 ヒロインのロゼは、私の定番というかデフォキャラみたいな感じ? 私からみた理想の女性ですね。


 アンジュは『山椒大夫』の安寿なんですが、小学校の国語の時間、安寿が自殺するというストーリーがどうも納得できなくて……。でも、今なら分かる気がするので、そこを描いたつもりです。


 あとは、ドロシーですね! 前作でも似たようなキャラを出したのですが、今回の「僕っ子」が似合うな。きっと次の作品にも出てくると思います。


 ということで、いつものごとく、末筆となりましたが、この物語を読んでいただいた全ての方のご多幸を祈念いたしまして、終章のご挨拶とさせていただきます。

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