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クローバー  作者: 瀬賀拓
3/11

第2章 別れと出会い。

翌日の土曜。


健一は長山からの電話で目を覚ますことになる。


「もしもし。早川?今日お前に俺の彼女紹介したいから、いつものバイキングで昼飯食おうぜ!!」


「・・・うん。分かった。」


一応聞こえた健一は目を擦りながら寝惚けまなこで答えていた。


「なんか寝惚けてるなお前。」


健一の大きなあくびが長山の受話器から聞こえてきた。


「仕方ないじゃん!昨日仕事終わった後、深夜にいきなり沙紀に遭遇して家まで送って帰ったんだから。そりゃ疲れるさ。」


健一はそう言って晃に愚痴を溢した。


「ヤッパリ前から思ってたけど、沙紀ちゃんおかしいよ?」


「お~お前もそう思うか。そうだよアイツ絶対変だよな!!」


「いや、お前を頼りにしてるってことで。」


「そりゃあ、アイツとは中学からの付き合いだから分かるけど、いくらなんでも、夜遅くは無いよ。」


健一に呆れ、長山はため息をついた。


「ハァ~わかってないね~。とりあえず今日の昼、よろしく頼むよ。」


「OK牧場!!」


そう言って、電話を切る健一は早速眠気をとるため朝シャンをしにバスルームへと行った。


一方、沙紀は彼氏とのデートで別れ話を切り出そうとしている所だった。


「沙紀、話しって?」


彼氏の松中祐一郎が何か気にしている。


「私達、もう別れよう。」


平然と言う沙紀に松中は焦った。


「どうして!?」


「私が知らないとでも思ってるの?」


沙紀は冷たい口調で言った。


「えっ、何が?」


「前から私と小百合に二股かけてたでしょ。」


松中なんとか平静を装うも冷や汗が出る。


「そんな証拠どこにあるんだよ!」


「私、昨日キャンパスで二人がキスしてるとこ見たの。」


松中は返す言葉がなかった。


しばらくの沈黙の後、やっと口を開いた。


「スマン!小百合とはただの遊びだ。許してくれ、頼む!!」


松中はなんと土下座で謝った。


「サイテー!ウヮ!!こんな男の彼女だったなんて!ありえない!!サ・ヨ・ナ・ラ!!」


沙紀はそんな松中を冷たい言葉で斬り捨てた。


沙紀の言葉に松中は怒りで体が震えていた。


「こっちが下手に出れば好き勝手な事言いやがって、テメェ!!」


逆ギレして殴りかかろうとする松中の脛を沙紀は蹴りあげ必死に逃げた。


歩道橋の真ん中で脛を抑えている松中。


「オイ待て!!沙紀、悪かったスマン。」


その頃、健一は長山の新しい彼女を紹介されていた。


「紹介するよ。彼女の茜だ。」


「上村茜です。よろしく。」


ふと、健一は心のどこかで何かが引っ掛かかった。


(どっかで見覚えあるような?う~ん??)


「健一、なにしてんだよ!!早く自己紹介しろよ。」


長山がせかす。


「え~、ども。早川健一です。晃がいつもお世話になってます。」


「あのな!!」


長山突っ込み照れる。


「よろしく。以前どこかでお会いしませんでしたか?」


突然、茜から言われ驚く二人。


「えっ!?健一、知り合いなの!?」


「う~ん?さっきから気になってはいたんだが......」


茜は困った時にでる癖で頭をかいた健一を見て思わず笑ってしまった。


「ハヤケン全然変わってないね、そのしぐさ。」


「ハヤケン・・・・もしかして、竹内!?」


健一は驚いた。


やっと分かってもらえた茜は嬉しそうに頷いた。


「イヤー!元気?」


久しぶりの再会にテンションが高くなった茜と健一は笑いながら話を始めた。


長山は二人の会話についていけず、ただ驚くばかりだった。


「ちょっと、おまえら知り合いなの!?」


「知り合いもなにも同じ小学校で5、6年の時、少年野球で一緒だったから。」


『ね~』


明るく答える二人に長山は目が点になった。


「エッ!?ちょっと、早川、そんなに仲良かったなら忘れるなよ!!てか、ハヤケンって呼ばれてたの!?」


ハヤケンと言う聞き慣れない呼び名に長山は動揺した。


「あぁ。少年野球の連中だけにな」


「本当に忘れるなんてヒドイはよね!!でもまぁ、無理もないか。私、中2の時に両親が離婚して母方の苗字に変わったの。」


茜はあっさりと答えた。


「そうだったんだ。」


「ネェ×2ハヤケンのお父さんとお母さん元気?」


茜の発言で長山は更に焦った。


「中3の時、二人とも交通事故で死んだ。結婚記念日に…」


しばらく沈黙が続く。


「・・・なんか悪いこと聞いちゃったね、ごめん。」


茜は落ち込み謝った。


「気にすんなって。さぁ~てバイキングだからじゃんじゃん食べようぜ!!」


健一はこの空気を打破しようと明るく振る舞うも完全にカラ元気である。


「よし、取りに行くか。」


健一の気持ちを察した長山が健一の調子に合わせた。


三人はなんとも言えない空気の中、料理を取りに行った。


その頃、松中から必死に逃げてきた沙紀は自分でも無意識のうちに健一のマンションに来ていた。


「結局ここに来ちゃった・・・・・」


沙紀は静かにため息をつきボソッと呟いた。


「さてと、早川♪~居留守使うなよ~出てこ~い!!」


そして、沙紀は気を入れ直していつもの調子でドアを叩いた。


しかし、部屋からは返事も聞こえなければテレビなどの雑音も聞こえなかった。


・・・あいにく健一は外出中。


しかし、沙紀は動じることなく、郵便受けに手を突っ込み合鍵をとった。


「ふっ」


そう鼻であしらった沙紀は鍵を開け健一の部屋へと入っていった。


「な~んだ本当に留守なんだ……それにしても、相変わらず綺麗な部屋だな~」


健一の部屋に侵入するも肝心の健一がいないので面白くない。


「ウ~ン?なんか面白いゲーム無いかな~?」


そう言って沙紀はテレビ周辺をごそごそとあさっていた。


しばらくして、健一と昔遊んだ格ゲーを発見する。


「懐かしいなぁ!これ昔、早川と対戦したゲームじゃん。よし!これでしばらく時間潰そ♪」


そう言って沙紀は勝手に遊びはじめた。


一方、三人は食事を終えて帰る所だった。


「スマンちょっとトイレに行くわ。」


「あっ俺も。」


そう言って健一と長山は連れションしに行った。


茜はそんな二人をよそに沙紀に電話をかけた。


「あっ、もしもし沙紀?今、何処にいるの?」


「今~?友達の家でゲームしてる。」


沙紀はゲームしながら電話にでた。


「友達って?」


「あ~、中学の。」


「そっかぁ。今、晃達と遊んでいてさ。沙紀もどうかな~て、思って誘ったんだけど。まぁ、中学の時の友達と一緒ならいいや。そうだ、昨日、ちゃんと帰れた?」


「ウン!!ちゃんと帰れたよ。ごめん!!今、良いところだから後でかけなおすねじゃあね。」


そう言って沙紀は電話を切りゲームを続けた。




「全く。しょうがない子だな~♪」


茜はそんな沙紀に半ば呆れていた。


すると二人がトイレから戻ってきた。


「お待たせ。」


「ううん。ところでさぁ、アドレス教えて。」


「あぁ!!いいよ。」


茜に言われ健一はケータイのアドレスを教えた。


「ありがとう。この後どこかで遊ばない?」


久しぶりに健一と再会し、大はしゃぎの茜はすかさず健一に提案した。


「う~ん?今日は帰るわ。」


「も~、久々に昔の友人にあったんだからもう少し遊ぼうよ~」


昨日、沙紀がだだをこねたみたいに茜が健一に対してだだをこねてきた。


「俺、今日、調子悪いんだ…」


「そっか……じゃあ、今度また遊ぼう!」


茜は健一が疲れている姿を見て諦めた。


「あぁ、そうだな!じゃあね~♪」


健一は茜と長山に手をふった。


茜と長山の二人は健一を見送り腕を組んで健一とは反対の方向へと歩いて行った。


(長山も良い彼女を持ったな~茜か、懐かしいな~)


などと思いながら健一は家路につく。




一方。


「今日のお前はなんかヤケにはしゃいでいたな。」


未だ興奮冷め遣らぬ茜に対し長山の方は半ば苦笑いを浮かべていた。


「だって 10 年ぶりの再会だったんだもん。それに……」


「それに?」


「ううん、なんでもない。」


茜は危うく口が滑りそうになった。


「あっ、ごまかした!なんだよ~。」


長山は気になって仕方がなかった。


「教えな~い。ねぇ、バッティングセンター行こ♪」


茜は明るく笑い話題を変えてきた。


「あっ、話題変えたなっ!ったく。」


長山は、明るく笑うも内心かなり気になっていた。


マンションに着いた健一は鍵を開けようとするとドアが開いているのに気付き不審に思いながら恐る恐る入ってみた………


「おかえり~この格ゲー面白いね。」


すると、そこにはいつもの笑顔をみせる沙紀がゲームをしていた。


「お前どうやって!?てか勝手にゲームやるなよ!!」


シッシと追い出す健一を無視し沙紀は鍵を見せた。


「じゃーん!」


「お前、俺のスペアを使ったのか!?」


健一はすかさず沙紀から鍵を取り上げた。


無くした時用の予備に健一はいつも玄関の郵便受けに入れていたのだ。


「あ~もぅ返してよ。」


二人はとうとう鍵の取り合いっこをし始めた。


そうこうしているうちに二人は近くのベットに倒れ健一が沙紀の上に覆い被さってしまった。


(キャッ)


上にいる健一をジーと見つめ沙紀は平気な様子でニコニコと笑っている。


一方の健一は顔が赤くなりあわてて飛び起きた。


「わりぃ!!で、何しに来たんだよ。」


健一の問いかけに黙った沙紀は少し間を入れ落ち着いた口調で健一に話してきた。


「今日、彼氏と別れ話をしたんだ~。そしたら彼氏が怒って殴ろうとしたから、逃げてきた。」


「……なんで別れ話を?」


健一も沙紀の話を静かに聞き静かに応えた。


「彼、二股かけてたし、私、べつにそこまで好きじゃなかったから。」


「・・・ふぅん。で、いつからここに?」


「ウ~ン?昼ぐらいかな?」


沙紀はまたいつもの調子で答えた。




「お前、部屋荒らしてないよな?」




「大丈夫!ゲーム以外さわってないから。」


健一はひとまずホッとした。


「で、いつまで居る気なんだよ!!」


「ウ~ン?いつまでいようかな~?」


沙紀はとぼけて笑った。


「お前なぁ~」


「ネェ×2早川♪久しぶりに勝負しようよ。勝負。」


沙紀はまるで子供のようにウキウキとはしゃいでいた。


「いや、俺ちょっとドライブしてくるわ。」


静かに過ごしたい健一はそう言って鍵を郵便受けの奥にしまい部屋を後にした。


「え~!?私も行く!!」


慌てた沙紀はゲームを辞め健一の後を追った。

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