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美女と天女  作者: 美貝
空手部勧誘から逃げきれ!--WEDNESDAY
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WEDNESDAY- A Day Off 18



彼の手が動いた。




何、やるか?!


あたしは身構える。




彼の手があたしの方へ伸びる。



(来る!)




・・・かと思ったら、その手はかの可愛いエコバッグの中へと消えていった。



可憐なシロクマさんが、彼の手の動きに合わせていびつな形に変形する。




変なの。


湊人君自体は、シロクマってよりむしろ豹とかネコ科の肉食獣のような印象を与えるのに。


何てミスマッチなんだ。




春果君と並ぶと面白かったな。


キティー(子猫)ちゃんと、豹か。


同じネコ科なのに、歴然とした違いよ。




毛づくろいとかさせてみなよ。


子猫の春果君、抱き付きたいくらい可愛いだろうな。


その一方で、こいつからは狩りの前の研ぎ澄まされた緊張感みたいなのを与えられそう。


とても近寄れたもんじゃないよね!




とか目の前の光景に想像を膨らませてたら、彼の手が長方形の爽やかなアイスブルーのプラスチックパックを握ってまた出て来た。




そして、その手があたしの方へ差し出される。




「今日の礼だ。世話になった」





湊人君はそれだけ言うと、あたしの手にそのプラスチックパックを押し付けて、武道場の方へ歩いて行った。





長い足でサッサと歩くから、一瞬でその姿は見えなくなった。


それを見て初めて、あたしは彼があたしの歩調に合わせて歩いてくれていた事に気づいた。




手の中にあるプラスチックパックを見ると、最近CMで良く見るブランドのウェットティッシュだった。



手に優しいノンアルコールで、何とペパーミントの香りつき。


爽やかな香りのチョイスが何とも湊人君のイメージにピッタリだ。


除菌率99.9%!


イイネ!b




・・・・。(,,Ծ‸Ծ,, )




結局、いい奴か嫌な奴か、よく分かんない人だったな、湊人君・・・。





そして、あたしはこの薄暗くなった頃合いに一人ここに取り残されてると。




・・・おっけー、分かった。



ま、別にいいんだけどね。




何だろう、この何か、果てしなく損した感じ。



何だろう、この、何か女としてのそこはかとない敗北感。




普通、せめて明るめの道までは送ってくれるもんなんじゃないの?




あ、でもあたしそう言えば女扱いされてないんだったっけ。





・・・。





帰ろう。





お風呂にお湯をためて、入浴剤入れてゆっくり浸かろう。


今日は、とびっきり女の子らしくフローラル系の香りで決まりだ。


色も白がいいな。





明日は午前中に初級英語があるし、疲れを取って楽しい授業に備えよう。


春果君も来るみたいだし。




彰姉ちゃんや湊人君に比べたら、春果君がとってもとっても分かりやすくて親しみやすい子に感じてしまうよ。



明日は春果君一人で来てくれるといいんだけどな。




他も来ると、どっと疲れるし。(⁰︻⁰)




薄暗くなりつつある道を、あたしはトボトボと歩いた。



色鮮やかな花の色も不鮮明になり、生命の躍動する香りもなりを潜めちゃってた。


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