第2章:新入生、都(みやこ)(2)
気づいたら、クラスでも寮でも、どの友達の輪にも入れなかった。
そうじゃない。入る勇気がなかった。
寮は幸い個室。個室にいるときだけが気が休まる。
クラスを見渡すと、たぶんあたしが一番身長が高い。175センチ。目立たないようにと思っても、生徒が立って集まる場所では必ず目立つ。170センチ以上の子、他にいないもん。たくさんのクラスメートの顔が一斉に見えることもある。「キリンさん状態」誰かがそんな風に言ったのが聞こえたこともある。
思いあまって先生に相談した。
「できるだけ力になってあげます。それで、どうするのが希望?『トランスだけど仲良くして』って声を掛けたら良い?」
ちょっと違和感のある提案に聞こえた。でもどうすれば...正直分からなかった。
「本音としては、女子に生まれ変わりたい。こんな心配をしなくて良い身体になりたいんです。または、彼女の入学直後の発言を、みんなの記憶から消したい」
「困ったわね。ドラえもんじゃなきゃできないことは無理だし。ホルモン治療とか、性別適合手術のための休学とかだったら、協力はしますけど。もともとトランスの生徒をフラットに扱うよう、職員にも生徒にも、指導はしてるからねぇ...」
正直、あたしの気持ちの中で整理がつかなかった。本音は「女の子の集団の中で、突出しないように、同化したい」なのかな....。できっこないってわかってるじゃん。
なので、先生と話しても、結論が出なかった。
トラブルが発生したわけではない。いじめられたわけでもない。その後アウティングのような言動があったわけでもない。例のあの子も、悪い子じゃ全然ない。すぐ謝ってくれたんだもの。あんなに仲良くなろうと、声を掛けてくれたんだもの。実際には、あたしがお友達とのかかわりを避けているだけかもしれない。でも、あの入学直後のやり取りが、いつまでも尾を引いている。
この学校の方針はとってもありがたいんだけど、あたしの身体の特徴だったら「トランスとして突出する」ことを受け入れるしかない。そういえば、ダンジョン入試の最終日に校長先生がおっしゃっていた「入学後も3年間のダンジョンと感じるかも知れません。学校はなにも仕掛けないのですがね」。
「まずは、自分をいじめないようにね。」先生に言われたことばが身にしみる。




