第2章:新入生、都(みやこ)(1)
(補足)このあと含め、入学後の風景と試験風景とは、時間軸的につながっているというより、控え室の会話を介して内容的にゆるくつながっている、というものです。校内の風景・試験風景についても、連続したものではないかも知れません。
「きみ、もしかして男子?そうだよね、歩き方とか、体型とか、もろにそうじゃん」
びっくりした。入学初日、いきなり、大きな声で話しかけてくる同級生。
たまたまクラスがシーンとしてる時だった。一斉にクラスメートの視線を集めてしまった。
ここって、トランスの子がはいっても、女子としてフラットに接してくれるって聞いた。それであこがれて入学した。それなのに、こんなことって?
入学式の次の日、クラスで自己紹介。「あたしは、○○都(みやこ)っていいます」
いきなり「男子だよね」例の彼女だった。「トランスっていうんじゃ?」別の子が反応した。
平然を装って自己紹介を続けようとしたけど、だんだん声が震えてきた。
先生から注意が飛んだ。「みなさんに注意します。この学校はご存じの通り、募集要項に性別を謳いません。入学を受け入れた以上、学校は全員フラットに接します。誰がトランスとか、学校も一切公言しません。本人にアウティングも求めませんし、みなさんにも、アウティングをあおるようなことも慎んでもらってます。偏見をもたずに接して下さい」
先生が出て行ったあとも、動揺して心臓がばくばく。思わず、ふさぎ込んだ姿勢のままとなった。一日中そんな姿勢で過ごし、終業後、身を隠すように、寮に帰っていった。部屋に閉じこもってしまった。
次の日、例の彼女が話しかけてきた。
「昨日はごめん!あのあと先生から、個別にも、凄く注意されたんだ。仲直りしよう。今日放課後、一緒にカラオケ行かない?」
この子、声が大きい。近くの席の子が一斉に振り向いた。気持ちが落ち着かないままだったので、おもわず答えてしまった。
「ごめん。カラオケ好きじゃないから」
「残念!またなにかあったら誘うね」
一人カラオケは大好き。でも誰かとカラオケにいくと「やっぱり男子の声だね」って言われることが多くて。今はそんな気になれなかった。
彼女はクラスの中でも抜群に行動的。いつもたくさんのお友達に囲まれている。
その後一度、買い物に誘われたけど、思わず断った。そのあとは全く誘われなくなった。




