告白
英理とノアは2人で夜景を見ながら立っていた。
「エリ、俺は土俵に立てたのかな?」
英理はノアに向き直る。
「ごめんなさい。私、好きな人がいます」
「これだけやっても、ダメなのか」
「私、ノアさんに謝らなければいけないことがあります」
「どんなこと?」
「王政や制度を崩壊させるためにノアさんに近づいて騙しました」
ノアは英理を見つめる。
「最初から勝ち目はなかったってことか……」
「ノアさんだけに会ってれば、ノアさんのことを好きになってたと思います。それにあの時はそこまでその人に対しての自分の恋心を自覚してませんでした」
「そっか」
「私、本当に殺されてもおかしくない酷いことをノアさんにしました。ノアさんの好意を利用したこと、裏切りのようなことさせたこと、最悪な行為だったと思います。だから、本当にいろいろ覚悟してここにいます」
「許すよ」
「え?」
「わざわざそんな自分の命が危うくなるようなことを言いに来なくて、二度と俺の前に姿を出さないこともできたのに、こうしてそれを伝えにきてくれたエリのことはやっぱり好きです」
「俺はエリの上流院での姿を見たことで、一緒に話していく中で、王政や制度はおかしいと思えてきたんです。だから自分のやったことに何の後悔もないんです。むしろ今の世界を見ると、やってよかったと思ってます」
「ノアさん……」
「言ったはずです。俺はエリが一番大切だって。エリが一番幸せになる道を選んでくれたらそれでいいです」
「ありがとうございます」
英理は涙を浮かべ頭を下げる。
「これからは友達として会ってくれればうれしいな」
「はい、友達として会いたいです」
「よかった」
ノアはにっこりと笑う。
「その好きな人にはもう想いを告げた?」
「まだです」
「では、今から想いを告げに行ってください。エリならきっと大丈夫だよ」
「ありがとうございます。頑張ってみます」
ノアは微笑み、英理に近づき背中を押す。
英理は涙を袖でふきながら走る。
ノアは夜景を見て思う。
……友達としてであっても、たまに会えるならそれでもいいか。
英理は走る、好きな人のもとへ。
そして英理はたどり着く。想いを告げる人のいる場所に。
その男は、目の前に現れた英理の姿に気づく。
「クリスさん?」
英理は微笑む。
「ルイさん」
クラウンはホテルの最上階のベランダで涼んでいた。
「本当に好きだったんだけどな……」
クラウンはつぶやき、目を瞑り心地よい風にあたる。
「クラウンさん、ごめんなさい。私、ルイさんのことが好きです。だからクラウンさんの気持ちには応えられません」
「こればっかりはどうにもならないからね。仕方がない、あきらめるよ」
「ごめんなさい」
「今からルイに告白しに行くの?」
「いえ、ノアさんに殺される覚悟で謝りに行きます。生きて帰れたらルイさんに告白しに行きます」
「そっか。俺が全て黒幕だったと言っていいよ」
「私もわかってて騙したんですから同じです」
「別にわざわざ言いに行かなくてもいいのに」
「いや、そうしないと自分を許せないです」
「そっか……いってらっしゃい」
「いってきます」
クラウンは目を開ける。そして夜空を見上げた。
ルイは英理が必死で走ってきたかのような顔を見る。
「何かあったか? クリスさん」
英理は呼吸を整える。
ルイさんが私のことを好きかどうかはわからない。そんな素ぶり見たことないし、自信もない。でも、この人とずっと一緒にいたいと心の底から思える。ダメだったとしても想いだけでも伝えたい。
「ルイさんに伝えたいことがあるの」
「うん」
英理の真剣な表情を見て、ルイも真剣な顔をする。
「私、ルイさんのことが好きなの。私の恋人になってください」
ルイは驚いて英理を見つめる。
「ルイさんの火事場での姿に私は惹かれた、それからのルイさんと時計屋で話してる時間、私は幸せだった。ルイさんに言われて私、気づいたんだ。転生前の自分の姿とか関係なしに、ずっと一緒にいたいと思う人は誰か」
「私にとって、それはルイさんだった」
「だからルイさんが好きです。私と付き合ってください」
ルイは英理を見つめる。そして口を開く。
「俺もクリスさんのことが好きだ。俺と付き合ってください」
英理は驚き、目を見開く。
「はい!」
英理は涙を浮かべ笑顔で大きく返事をする。
「これからは恋人としてよろしくお願いします」
「よろしく」
ルイは微笑んで思う。
……俺も火事場で消火栓の鍵を石で叩き壊そうとしてるクリスさんの後ろ姿に惹かれた。
水をかけられて助けられた時にはクリスさんに恋してた。
時計屋での話す時間は幸せを感じた。
「ええ? でもルイさん、なんで私のこと?」
英理は興奮した様子でルイに聞く。
ルイは笑う。
「俺も火事場でクリスさんに惹かれたんだよ」
英理とルイは笑い合う。




