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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第八章 黒の落失
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8/1 幕は上がる


 主人公ちゃんが落ちてきた。


 何を言っているのかわからないかもしれないが私にもさっぱりわからない。どうしてこうなった。


 ……なんていうか、ごく簡潔に流れだけを説明すると、『森でいろいろ発散しようぜ!』→『やってきました『秘魔の森』! 突撃しようぜ!』→『森へと勇んで飛び込もうとしたら、あら大変! 親方! 空から女の子が!』←イマココ。


 なんでそうなった……。


 なんなの? 皇女といいこの子といい、空から降ってくる系少女が流行ってるの? 『シー〇』リスペクトなの? 確かに彼女はかわいいけれども。そしてどうしてそろいもそろって私の目の前に落ちてくるの? 狙ってるの? 私はいったい何度居もせぬ親方を探せばいいというのか。


 私は腕の中にジャストフィットしている少女をお姫様抱っこしたまま、さすがに数秒固まっていた。しかし、いつまでも現実逃避ばかりをしてもいられないのである。なぜなら。


「……シャロン? ……彼女は、いったい……?」


 警戒をにじませて聞いてくるのはジル。


「シャロン、僕には今、空から突然現れたように見えたけど……魔術かな? でも魔道具とかは持っていないみたいだね」


 こちらも観察を怠らないエル。


「シャーロット! 我は! 森、入るのだぞ! む、なんだそれは。我、そやつは知らんぞ? 寝ているのか? ならば寝かせておけばよかろう! 我、遊びたい!」


 欲望に忠実なのはエイヴァ。


「お嬢、離れてください」

「お嬢、それ、ウチらが見ます」

「尋問、得意です」

「ちゃんと手間、省きます」

「「お任せください」」


 そっと影から交互に、最後はユニゾンで語り掛けてくるのは本日の護衛『影』であるディーネとノーミー。彼女たちは変わらず物騒である。行動の選択肢が一択しかない。いや確かに得体のしれない子なんだけど。この双子に預けるのはいろんな意味で不安しかない。というか意識すらない少女相手にやめてあげて。


 とりあえず。腕の中の少女は気絶していて名前もわからない状況ではあるが、彼女と一緒に落ちてきた学生かばん、彼女の持つ黒髪、さらには身にまとったセーラー服。まごうことなき女子高生である。しかも日本の、女子高生である……。だってめっちゃこの制服知ってる……。基本は長年変わらぬ古き良き伝統のセーラー服なんだけど襟・袖・裾のラインアクセントと白いタイが地味だがかわいいこれはなんと『刈宮鮮花』の出身高校の制服である。よく考えると前世と今世の時間の流れが同じであったと仮定して、かつ何事もなく生きていたならば『刈宮鮮花』は高校生の子供がいてもおかしくない年齢だったりするのだ。懐かしすぎる。成長した娘を見て己の青春を懐古するおばちゃんの気分にシンクロする。


 ちなみにこの制服、ラインカラーが注文時に好きな色を選べたりして人気があった。当時の私はモスグリーンを選び、同級生であった前世悪友はライトブルーを選択していた。なお、腕の中の彼女はオフホワイトを選択したらしい。これはこれでいい色である。


 いや、そこは今はどうでもいい。懐かしんでいる場合じゃない。問題は彼女が降ってきた正にその場に私以外の輩がいたということである。しかも空からこんにちはした決定的瞬間をばっちりみられている上に人外が混じっていて護衛は殺る気に満ち溢れている。なんという四面楚歌。


 私の頭脳はうなりを上げて回転をした。なぜって……不審者としてこの少女を処理したところでぶっちゃけ原作・『明日セカ』が崩壊している現在、私は全然困らないのだけれども特に罪のない少女が不憫すぎる。事故でやってきた異世界で不審者扱いからの尋問(拷問)とかそれなんて不幸。泣きっ面に蜂どころじゃない。理不尽でしかない仕打ちである。


 まずは思い出そう。『明日セカ』ではそもそも『主人公』はどうやって不審者扱いをまぬかれた? 前例のなかった『異世界人』であることを証明した決め手は何だ?


 物語の演出としてかなりの省略はされていたが、完全ご都合主義でもなかったはずだ。そう、確か最初は王城の一室に軟禁され、さまざまに取り調べられた『主人公』。やがてその『出現場所に魔術の痕跡がなかったこと』『魔術知識のなさ』『この世界に存在しない素材である衣服・携帯などの持ち物』『異世界に関する供述の矛盾のなさと詳細さ』そして彼女自身の『人柄』でゆっくりと疑いを解き、やがて興味を持った『ジルファイス・メイソード』とともに戦うまでになるんだけれども、……うん、ダメだ。役に立たない原作である。だってそんな悠長にしている時間はない。私は今、この場で、彼女が不審者ではないことを証明して、なおかつランスリー家で保護をしたいのである。ではさてどうするか……?


 ――ここまで、思考にかかったのは0.1秒。


 そうして次の瞬間、私ははじき出した答えに基づいて、行動を開始したのである。









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