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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第六章 世界の澱
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6/3 『神』であるならば


 自称神がえぐえぐ言い始めてしまったので、とりあえず慰めておいた。なんだろう、ごめん。ごめんってば。普段周りにいる人間がメンタルが強いから……つい。だってジルならこのくらい毒を持って返してくるし、エルならあきらめて受け入れるし、エイヴァならトンデモ角度のポジティブ解釈をしてくるんだもの……。うん、私が言いすぎた。私が悪かったから。青っぽい人魂モドキの光のくせにガチ泣きしているとわかる器用な感情表現はやめてほしい。……この自称神、案外繊細なのかもしれなかった。


 ――『ぐすっ。……で?』


『『で』?』


 やっと落ち着いた自称神が恨みがまし気な視線をしているのだろうと思われる感じで問いかけてきたので、私は首をコテリと傾けてオウム返しに返した。すると器用にも地団太を踏んだ自称神がまたしても喚いた。


 ――『で!? そなた、何しに来たのだ!? ここ数年にわたる完全無視からの突然の訪問の、理由は!? 我をいじめに来たとでもいうつもりか!?』


 朗らかに言いそうだなそなたは!


 その叫びはなんかいろいろと諦観というか哀愁というか漂っていた。自称神、私への理解が深まっている。成長したなと思った。なので。


『そうね。八つ当たりに来たのよ。夢見が悪くて胸糞悪かったから』


 そう真顔で返してみた。


 ――『……』

『……』

 ――『…………』

『…………』


 私たちは、十秒ほど、見つめ合った。そして。


『いやね。半分冗談よ』


 ――『半分本気ではないかっ!』


 真顔の私に、間髪入れないこの突込み。久しぶりにもかかわらずこの自称神、衰えていないなと思った。まあ、ともかく。


『戯れはこのくらいにして、本題に入りましょう』


 私はいったん菓子と紅茶を片付けると、新たにソファとテーブルのセットを召喚し、紅茶を改めて淹れ直す。どちらからともなく私たちは向かい合ってそこに腰を落ち着けた。「本題、あったのだな」とか「神領域になじみすぎている……我より我が物顔をしている……」だとか、「前置き、長かったな」だとか。いろいろと聞こえた気もしたが、空耳だろう。


 ともあれ、私は『本題』を切り出す。


『――私がこの空間に来たのは、自称神。あなたに、聞きたいことがあったからよ』


 ――『聞きたいこと? 『神』たる我にか? そなたが?』


『そうよ。悪い? ……随分と『情報』が出そろったからね。一度『確認』しておきたかったのよ。……まあ、答えられないことは答えなくていいわよ』


 ――『……それで、なんだ。聞きたいこととは』


『前世『刈宮鮮花』が読んだ小説『明日世界が終わるなら』――通称『明日セカ』。あれは現世『シャーロット・ランスリー』の生きる世界の、ありえた未来(・・・・・・)の一つだったわ』


 ――『うむ』


『それを私はとっくの昔に改編したわね』


 ――『木っ端みじんだったな。『魔』たるものはまさかの年齢詐称学生ライフを送っているようだし、死ぬはずだったものは、生きている。……だが、それが……どうしたのだ?』


 今更だろう、と自称神はいぶかしむ。そしてどういう仕組みかさっぱりわからないが紅茶をすすっていた。口があったのか……。


 ではなくて。


『まあ、そうね。未来は変えられることも、もうあの小説から未来は変わったことも、わかっているわ。……だから、私が確かめたいのはそこではないの』


 そこで、私は右手で指を三本立てる。


『主に聞きたいことは三つよ。一つ目は――』


 三本の指を一本にする。自称神の視線が、それを追った。多分。


『あなた、『刈宮鮮花』を『知っていた』わね?』














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