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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第四章 子供の領分
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4/42 少年は、回顧する(エイヴァ視点)


 エルシオの、年齢?


「貴様、今確か……十二であったか? 『当時』?」


 意味が解らん。と、首を傾げれば、エルシオは苦笑を浮かべる。苦笑が似合う男である。エルシオはしかし少し考えるようにジルファイスに話を振った。


「んー、ジルは覚えていらっしゃいますか? 一年半ほど前の事件ですが」

「一年半? ……あぁ……。ええ、秘密裏に処理をされましたが、首謀者が盛大に処罰を受けましたからね。あの時分はまだエルとは面識もありませんでしたが、大まかなところは私も耳にしています。……まさか」


 振られたジルファイスは不可解そうに眉を寄せていたが、はっとしたようにエルシオを見る。深く頷くエルシオ。憐みの視線を深めるジルファイス。いったいそこで何の理解が生じたのだろうか。分らぬ。我、我……、


「我が聞いたのに! 仲間外れか? 隠し事なのかっ!?」

「「えっ」」

「仲間外れはいけないのだぞ? 我、泣くぞ? 喚くぞ? よいのか!?」

「「えっ、いや、」」

「ぅぅぅぅううううう……」

「ちょっ、ええええエイヴァ君!?」

「エイヴァ、落ち着きましょうか、仲間外れなど、」


 盛大にエルシオとジルファイスが慌てているようだが、我の視界は次第に潤み――

 ぽっすん。


「……ほぁむ?」


 我の頭に手を置いて、ぽんぽんと撫でるのは、この話題に沈黙を守っていたシャーロットであった。


「仲間外れじゃないわ、エルのちょっとした事件の話よ。……実はあなたもちょっとだけ絡んでるのよ? この事件」


 ぐりぐりと。我の頭をなでながらシャーロットが告げた言葉に涙も引っ込めて「はっ?」と間の抜けた声を発したのは我だけではなかった。


「ちょ……え? どういう意味なの、シャロ?」

「私も知りたいのですが? そのような詳細は聞いていませんよ。エイヴァがあれで何をやらかしたと?」

「わわわ、我、知らぬぞ! 何もしておらぬ!」


 口々に詰めよる。というか、『事件』が何かも、我、分らぬ。やはり、仲間外れか? そうなのか?


「そうねえ、……まずは事件の事だけれど、エイヴァはもしかしてなんの事件かわかっていないのね?」

「我、分らぬ!」


 断言した。シャーロットは冷めた瞳で我を一瞥してエルシオを見る。


「そう。……エル?」

「うん……? あー、一年半前、僕は引き取られて半月くらいだったんだけど。ちょっとほかの家とのいざこざがあってね? 誘拐されたんだよね。一晩で解決したけど」


 一晩。なるほど、シャーロットの暗躍であろう。しかし……


「そうなのか。む? だが、我、それ、知らぬぞ」


 何処に我が絡んでいるというのだ。しかしシャーロットの冷めた瞳がさらに冷たくなった。背筋が寒い。なぜだ。


「そうね忘れてるのね。犯人なお馬鹿さんがうちに侵入するときに使用された頭のおかしい性能の魔道具、作ったのは貴方でしょうに」

「「は?」」


 険のこもった声が二つ上がった。エルシオとジルファイスだった。


「え? うん? ……そうで……あったか?」

「そうであったのよ。『結界無効』と『感知無効』の効果があったみたいね。私が回収して破砕したけれど。豚に真珠を与えてはだめよ?」

「…………………そう、であったような……?」


 作った、か? 作った……気もする。一時期、暇であったから……適当に……作った、ような? うむ、作ったな。


「そうであった! で、あれば、我、仲間外れではないな!」

「そこじゃないよね。そんなおかしな効果のものを作っちゃだめだからね」

「規格外が過ぎていますね。改めて実感しました。シャロで十分だというのに。二度とそれを作成してはいけませんよ」


 窘められた。とても真剣な顔だった。シャーロットすら頷いていた。『シャロで十分』のところでにっこりジルファイスへとほほ笑んではいたが。


 と、いうか。事件はわかった。しかし分からぬ。


「今、それが何の関係があるというのか?」


 どういう流れでそれを思い出したのかよくわからず首を傾げれば、真顔から一気に遠い目になったエルシオ。


「……その時、僕、まだ十歳だったんです」

「ふむ」

「それ、誘拐は本物だったけど、裏があったんです」

「……ふむ?」

「……………………シャロが、鬼畜だったんです」


 ……うむ。






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