表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第四章 子供の領分
155/661

4/24 彼我の哀愁


「……変態故に?」


 エルたちは一旦首をかしげたが先ほど目にした変態の変態による奇行を思い出したのだろう。得心していた。……そう。二人は剣術やら筋肉やら魔術やら実験やらへの愛情が過ぎる社会生活不適応者だった。騎士団も宮廷魔術師団も手に負えないほどに、イッちゃっていた。結果はあえなくリストラである。彼等の当時の上司は常識的に生きていたのだ。そして彼らはそれぞれの実家に出戻った。


 けれどそれで矯正されるのであれば真の変態とは言えまい。


 つまり二人は変わらず己の愛を貫くという名目を曲げず。ディガ師匠は自宅で弟子をとっては逃げ出されるという蛮行を繰り返し、ノーウィム師匠は研究室に再就職したはいいもののそこでもやっぱり変態ぶりを発揮し追い出されるという愚行を反省もしなかった。馬鹿には制裁が待っている。二人は実家からすら縁切りという名の丸投げをされた。その歴史をこれまで垣間見ることがなかったのはひとえに彼らは己の興味のあることにしか思考を働かせようとしない天才型の馬鹿だからだ。なお路頭に迷っていたところで、我がランスリー家のお抱えとなって浮浪者一直線を回避したようである。何その奇跡。ちなみにそんな前途真っ暗な話を嬉々として私に語って聞かせた師匠連たちの神経はもはや存在することを疑うのがおろかなのかもしれなかった。彼等の頭の中には筋肉と魔術しか詰まっていないのである。


 ともかく。


「そんな話を聞かされて、彼等を野に放っていいとでも?」


 私頑張りましたわ、と告げれば悲しいほどに同情的な視線を頂戴した。


 なお、学院に押し込むしかなかったのは、彼らの『素晴らしい』所業のうわさが、ある程度年齢のいった層……ちょうど現当主の間では、有名すぎたからだ。彼らの脳裏には悪夢の変態トークがこびりついているらしい。過去、いったい彼らに何をされたのであろうか、ひどい脅え様であった。仕方がないから国王に密かに談判し、宰相に魔物除けの香草の話をちらつかせて、ねじ込んだ私は本当に頑張った。ちなみにディガ師匠を騎士学院に配属しなかったのは、もういっそまとめて私の目が届くところにいてくれた方が精神衛生上健全だからである。


「……シャロン、ディガ師匠は僕らのクラス担任だったよね……?」


 虚ろな、虚ろな目をした、エル。何て可愛そうなんだろう。私も可哀想だ。だって能力順でクラス分けだから、私とエルとエイヴァは同じクラスだ。運命とは残酷である。ちなみに頭痛をこらえている様子のジルのクラス担任はノーウィム師匠だ。そして教科担当としてどの学年にも彼らは出没する予定である。なぜなら彼らは変態であるがゆえに無駄に能力は高いからである。そして元ランスリー公爵家付というのがダメな方向に目晦ましになってしまったようだ。凄惨である。


 しかし、希望はある。そっと、私はエルとエイヴァの手を取った。微笑む。


「……安心なさい。あれはただの変態から節度ある変態へと進化させました」


 にっこり。


 速攻で、『やっぱり変態なのかっ』とかいう突込みが方々から上がったけれども。エルだけは、はっと顔を上げ。


「そんな……っ。すごいシャロン、あの人たちにそんな進化を遂げさせるなんて……、少しだけ希望が見えてきたよ……!」


 きらきらと。


 私を見るエルの目は、心底尊敬にあふれていた。


「……どれだけ、変態だったのだ……?」


 ぼそりと呟いたエイヴァの言葉を黙殺し。


「まあ、うふふ、なんだか楽しそうな方々と、これからお勉強できるのですね!」


 ほわほわっとしたイリーナ様のはしゃぎ声をスルーして。


 各々ようやっと教室に入り、待ち構えていた筋肉に圧倒されながら話を聞いている。

 ――イマ、ココである。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ