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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第四章 子供の領分
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4/14 熟考の必要性について


 ――私はそこまで回想して、死んだ魚の目が腐った魚の目になった。


 なんでって、ここまでの経緯でもなかったことにしたいぐらいの軽率っぷりを露呈している分際で、私の質問に対して返ってきたエイヴァの答えがあまりに単純明快だったからだ。

 曰く、『王立魔術学院ヴェルザンティアに、我も入学するのだ! 同級生だな、シャーロット!』。

 大変眩しい神々スマイルだった。ふざけんな美形爆散しろ。


 いや、ていうか、は? はあ? はああああ?


 なんだそれは。幻聴か妄言であると撤回するのを期待したがそれは叶うことがなかった。

 ……入学。同級生。断定形で言いやがって決定事項か? 決定事項なのか。無駄に歳食った世間知らずのくせにやらかしやがったなこの無鉄砲系美形が。


 ……頭痛が痛い。たいへん痛い。誰か優しさをください。バケツにいっぱいください。だってさらに問い詰めていったところによると、


 エイヴァは私に言われて、『世界』というものを知りたいと思うようになったらしい。なのでそのために勉強しようと思ったらしい。でも、自分一人で人間に混ざるのは今までの経験から難しかろうということも理解していたらしい。


 うん、今更感があふれているもののここまではそこそこ自己分析ができている。馬鹿は馬鹿でも頭のいい馬鹿であるだけはある。が、問題はここからだった。


 そんなこんなで行き詰ったために私に相談に来ようと思ったらなんだか忙しそうで。観察していたらどうやら学校に行く準備をしていると判って。肉体年齢を自在に変えられる腐っても最強の『魔』であるからして十三歳の少年に化けなおり。見よう見まねで平民に混ざって魔力測定しに行ったら見事合格しちゃいました。晴れて入学と相成りました同級生だねよろしく☆


 ……だそうで。

 ……。………。


 いったん落ち着こう。深呼吸しよう。大丈夫大丈夫。私、冷静。状況判断の出来る大人。決して目の前の愚物をこの世とさようならさせたりとかしない。


 あの時の私は腐りきった魚の目をしていたと思う。


 いや、アレだ。勉強しようと思ったのはいい。人間に混ざろうと思ったのも、まあ予想の範囲内だ。その過程で私に協力を仰ごうとするのもありだろう。

 ――けどっ!


 なぜもう少し早く来なかった? そしてどうしていきなり接触してきた?


 お前……お前、常識がないくせにいきなり学院生活とかできるとでも思っていたのか? 思っていないだろ? だって自分一人で人間に混ざるのは難しいって自己分析できているではないか。出来ているのになぜ市井からつつましく始めるんでなく貴族がいっぱいの学院に挑戦しようとしたんだ。己でハードルを上げてどうする? 自虐趣味か? 私への挑戦か? ぶん殴るぞ。


 しかも公爵邸に不法侵入しているし。警備は何をやっていると言いたいところだが、現状奴は私の次に高い実力を持つ『魔』である。馬鹿だが、弱者ではなく頭が悪いわけでもない。だから決して我が家の警備が手薄ということはなく彼らが無能というわけでもない。この規格外が無駄に実力を発揮しただけだ。軽々と乗り込んできたのだろう。私が一人である所を見計らって。


 よし、馬鹿が馬鹿をやらかしても対抗できる策を考えよう。かわいそうに、このような事態を警備隊が知ったら発狂して土下座して血反吐を吐くような努力を始める気がする。愛が重い。すこぶる重い。しかし恐らく私が彼らに与える愛も重たいのだろう。だから手遅れになる前に私が先手を打とう。


 ともかく。


 私はそこからエイヴァをとりあえず一人で入学会場に行かせ、エイヴァの言い訳を考えつつエルの待つ馬車に転移し、入学式を終え―――、

 おんぶお化け以下美少年三人に捕獲された。


 ……イマココだ。








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