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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第四章 子供の領分
144/661

4/13 確かに貴方は美しい、


 ――あの後。我が屋敷・ランスリー公爵本邸にて学院へ意気揚々と出発する直前。衝撃のドッキリのあと、私は心で叫んだ。


 な ん で お 前 が こ こ に い る ?


 引き攣った顔は内心の絶叫をよく表していたことだろう。そして次の瞬間、本能のままに行動した。

 すなわち、目の前のアホを黄金の右足で蹴り上げ、勢いそのまま胸倉を鷲掴んで投げた。

 もう一度言おう、投げ捨てた。奴は飛んだ。綺麗な放射線を描いて部屋の中を飛んだ。途中で持ち直して普通に着地されたけど。消滅すればいいのに。


 こうされてさえ困ったように笑って話しかけてくるこの頭のいい馬鹿(エイヴァ)

 つまり最古の『魔』。


「ひどいぞ、シャーロット」

「ひどい? 何処が?」


 理解不能につき反射で返した私は悪くなどない。なおこの部屋は今の数瞬で防音対物対魔結界を張っているので叫び倒したところで問題はない。喚いてやろうか?


 私は眇めた目で目の前の白髪透目の美形――エイヴァを見下ろした。しかしそんな私の表情に気づく様子もなく、懲りもせずに再び近づいて来ようとするアホの子。


 ……アホの子には躾が必要だったので、私は慈愛の微笑みで教育的指導を行った。

 笑った瞬間エイヴァがその場で固まったようにも思うが、気のせいだ。


 とりあえずそのままエイヴァは正座。慣れない姿勢にすぐ動こうとするが、笑顔で動くなと命じた。涙目? そんなものは見えなかった。泣きたいのは私だ。だって目の前に頭のいい馬鹿がいて私に迷惑をかけようとしている。


 子供の姿で。

 うん、子供の姿で。

 おいなんだそれ。


 ほんの数か月前に遊んだ奴の姿は神々しいまでの美青年だったんだけど。二十代半ばかってぐらいの。腰まで伸びた白髪が艶やかで透色切れ長の瞳が凛々しい『魔』だったんだけど。色気ダダ漏れの性犯罪者だったんだけど。

 しかし今、目の前のこいつはせいぜい私と同い年くらい。すなわち、十代前半の姿なのである。


 貴様何をもくろんでいる。


 なぜならあれは今、私が纏う制服と似たような布切れを肩にかけてはいないだろうか。嫌な予感しかしないし私の予感はよく当たる。ふざけろよ。


 いや、馬鹿な目論見をしていようともそれに伴い子供の姿であろうとも、確かにそれでも奴は美形だ。純白の髪は肩よりちょっと長いくらいなってるが艶やかでサラッサラ。透色の瞳は年齢に合わせて子供っぽくはなっているがきりりと涼やかで将来有望であると他人は思うだろう。美麗ボイスは相変わらず犯罪的だ。


 さすがは人間離れした美貌の持ち主。いやそもそも人間ではないのだが。


 ……ていうか何気にこの世界の顔面偏差値ってものすごく高いな。

 きらきら綺麗系美少年のジル、繊細でほんわか系美少年のエル、そして神々しいミステリアス系美少年のエイヴァ。

 各種とり揃えております。

 これ前世のアイドルグループなんて目じゃないわ。トップ獲れるわ。笑いが止まらんぐらい濡れ手で粟だわ。


 いや、話がそれた。

 今追求したいのはそこじゃない。


 つまりそのように奴は美形ではあるし私は美少年の鑑賞は大好きだがだからといって別にそれは免罪符にはならないのである。

 時間もないから、ド直球で聞くことにした。


「で、説明をしてくれるんでしょうね? そのふざけた恰好の意味と、ここに来た訳を?」


 私は聖母の微笑みを浮かべたまま、彼に尋ねた。












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