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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第四章 子供の領分
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4/10 学び舎の切符


 私たちが通うことになるのは王立魔術学院、この国で最高峰の水準を誇っている学校である。魔術学院と銘打つだけあって、魔力を持つものを管理するための施設でもある。

 ただ、魔力持ちが全員、この学院に入学できるわけではない。その理由としては単純に人数が多すぎるから。管理できないのだ。


 何と言っても魔術特化のランスリー家が持て囃されることでもわかるように、魔術に重点を置くお国柄の根底は、国民の半数が魔力を持って生まれてくるということにある。管理しきれずに事故が起っては元も子もないし、さすがに一つの学校に押し込めるなんてことはない。


 ちなみに王立の学校は三つだ。


 私たちが通うことになっている王立魔術学院『ヴェルザンティア』、武芸に秀で騎士を専門に排出する王立騎士学院『ウルジア』、そして王立魔術学園『スクルディア』。

一般的な認識としては、『ヴェルザンティア』と『ウルジア』が貴族の学校、『スクルディア』が平民の学校という感じ。


 まあ、厳密にいうと魔力量によってはいるところが決まるのだが。


『ヴェルザンティア』と『ウルジア』は魔力保有量が規定値に達した者だけが入学を許される。そして規定値に達してたら魔術学院か騎士学院かを選ぶ権利を得る。一応、そこは自由意志、ということになってはいる。狭い自由である。そして形骸化した自由でもある。なぜなら通うのはほとんど貴族なせいで親の意向反映しまくりだからだ。


 それでもたまに平民でも規定値を越えて入学してくる子もいるし、長男や女性が騎士の道を歩んだりすることもある。柔軟な貴族がいないわけではないのだ。


 そして『ヴェルザンティア』『ウルジア』に達しないまでも一定値をを示した生徒が通うのが『スクルディア』なのだが、しかし『スクルディア』には平民しかいないそうだ。何故って、貴族にも魔力量が少ない子だっているけど、プライド高い貴族様方はそういう子を隠すものだからだ。それこそ一族の恥と罵って。


 貴族にとって『ヴェルザンティア』あるいは『ウルジア』へ入学することは当然のこととされている。つまりはそうでない者は、異端で不要。……形は多少異なっていても、エルがそうだったように。

 よほど愛が深いか偏見がない家でないと、たいてい一族から追放という憂き目にあう。それで済めばいい方で、いっそ秘密裏に『事故死』させられることもあったらしい。


 魔力だけが人間の全てではないだろうに。まあ口にすれば『ランスリー(魔術特化の筆頭公爵家)がそれを言うのか』となじられること請け合いだろうとは思う。思うが、え? 堂々と言うけど?


 まあいい。


 そんなこんなで入学は魔力が基準になる。魔力コントロールを身に着けるにあたって周囲とレベルを合わせるという目的が始まりではあったはずだ。ともあれ測定が入学試験みたいなものなのだ。試験っていうか、五歳と十三歳の魔力測定は国民の義務だけども。


 五歳は大体魔力が安定して、魔術を顕現し始める年ごろなのである。そこで第一回の測定をして、人は魔力のあるなしと適性属性を知る。そして十三歳はご存知入学の歳。五歳で魔力持ちと発覚した子供たちが一堂に会し、魔力量を測って学校を選ぶ。


 エルはもちろん『規定値』以上だ。ぶっちゃけもともとの『物語』では騎士学院『ウルジア』に通っていた。魔術として行使ができなかっただけでもともと彼は魔力はあったのだ。まあ現在は迷わず魔術学院をセレクトしている。なぜって次期当主様だからだ。そもそも魔術行使ができるようになってから判明したことではあるが、エルは剣より魔術タイプだ。舌なめずりする魔術狂(変態)を何度撃退したと思うんだ。あれだぞ、魔術で撃退すれば魔術狂が悦び、体術で撃退すれば何処からか筋肉達磨が湧いてくるという悍ましい事態になって、最終的に二人まとめて地面とお友達にしなくちゃならないんだぞ。日に日にエルに容赦がなくなっていったのは仕方がないと思う。


 そんな我が義弟は現在はガンガン魔術を行使して、そのおかげか魔力量も上昇。余裕の規定値越え、今回の入学者の中でも高判定をたたき出した。素晴らしい。流石エル。可愛い。最初の測定会場では色々あって死んだ魚のような瞳でエルに見つめられ、最終的に仕切り直した魔力測定だったけど。


 え、でも私は悪くないんだよ。なぜか警備を突破して進入してきた運はいいけど頭はよくない賊が悪いんだよ。色々思うところがあって魔術というか私の戦闘能力に関してはある程度公に認識してもらうという方向性を決めていたからちょうどいいかなって思いはしたし実際イイカモになってもらいはしたけど同級生の命を守った私は褒められるべきだと思うの。ジルには後日笑顔でなじられたけど。仕切り直しの魔力測定の事ですらネチネチと言われたけど。


「前代未聞の魔力量数値をたたき出すとは何事ですか。まさか本気を出したのですか。ランスリーが擁する武力が高すぎて周辺諸国が無駄に警戒してしまったでしょう」


 凍えるような笑顔だった。


 しかし実は私、真面目に測定などしていない。なぜならば本気で魔力をこめたら測定器ごと測定会場そのものが塵となって破壊されるであろうことに測定前に気づき己でセーブしたからである。それでも歴代最高得点たたき出したのはご愛敬である。それを懇切丁寧に説明したところ我が悪友たる王子殿下は深くため息をつき遊ばしてこう述べられた。


「分りました。貴方はおかしいが怒らせなければ害はない。それで行きましょう」


 何処へ行くのだろうか。何か疲れている王子殿下は少々支離滅裂であらせられた。休息をとることをお勧めした。残念なものを見る目で見られた。


 ……まあ、過ぎたことは置いておこう。






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