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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第四章 子供の領分
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4/9 愛され警報避難中


 風はゆるく花は咲き乱れる。

 ――春です。出会いの季節がやってきました。私とエルはこの度晴れて王立魔術学院の生徒と相成ります。


 ……ははっ、……大騒ぎだった。

 拠点の中心が王都に移るからね、引っ越しの準備が大変で。予想以上にてんてこ舞いだったよ本当に。私の予測が甘かった。


 ……ああうん、荷物を纏めるのは別に大変じゃなかった。そもそも一応仮にも公爵令嬢だから私が動く間もなく使用人さんたちが完璧に用意してくれた。素晴らしい手際だった。流れるように暗器を持ち込もうとしたら『何をなさるおつもりで?』と没収されたけど。しかしそれはダミーだ。本物は空間収納でがっつり確保している。我が覇道は始まったばかりである。まあ冗談だ。ただの趣味だ。


 ともかく、私が本邸を抜けることによって生じる穴も補てんできるように仕込んできたし、そこらへんは全然心配していない。月一はチェックで戻ってくるし。

 うん、だからまあ何が一番大変だったって、アレだ。

 使用人さんたちの仁義なき戦いだ。


 メリィやアリィを筆頭に専属コックとかね、ゼッタイ連れて行くって決まっている人たちは余裕綽々だったけれどもそれ以外がいけなかった。多分余裕綽々なメリィたちの態度もいけなかった。

 そして王都と本邸を転移で気軽に行き来できるせいで、これから私たちが住むには王都別邸に使用人さんが足りないのが一番いけなかった。


 新しく雇うよりは気心知れている人の方がいいわよねえ、だったら本邸から――って、エルにぽろっとこぼした一言が光の速さで屋敷を駆け巡った。


 で。


 いつもは素晴らしい連係プレーを見せる彼ら・彼女らが……。

 暴動を起こした。

 いや、正しくは仕事に支障をきたさない水準を維持しつつ、そこかしこで抗争が勃発した。なにそれ器用だね君達。


 私とエルはドン引きした。


 抗争を繰り広げつつ私たちが望めば連れて行くだろうという目論見があったのだろう、もともと最高水準だった仕事能力はさらなる向上を遂げ、お前ら全員エスパーか状態になっていた。

 言われずとも片付く仕事、効率化していくスケジュール、洗練されていくファッション、美しくなっていく屋敷。


 私とエルはドン引きした。


 なにこれ恐い。え? すごく怖い。


 ……結局、能力の向上が著しかったメイドさん三人、庭師一人、護衛五人を、連れていくことになった。

 決まった瞬間。そう、その瞬間のすさまじい阿鼻叫喚はまさか私はこの世の終わりを宣言してしまったのだろうかと呆然とした。


 ごめん、なんか、ごめん。多分私なんにも悪くないけど、なんか、ごめん。とりあえず私の後ろでメリィが誇り高く笑っててごめん。

 皆優秀だったよ、すごくかわいかった、帰ってくる、帰ってくるから、その時のおもてなしすっごく楽しみにしてるから!


 使用人さんたちの愛が深すぎてツライ。

 そのほかにも雑事はあったけど使用人さんたちの形相が一番怖かったし執念にどこまでも後ずさりしたかった。


 だってその他の雑事なんて、ただ至る所から祝辞が届いたり、これを機に娘・息子が同級生だからと言ってすり寄ってくるおバカさんたちをさばいてみたり、アホほどジルから手紙が届いて本人もやってきて叩き出しただけだ。


 平和だろう?


 まあいい。学院のことに話を戻そう。












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