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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第三章 愛の化物
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3/52 誰かの英雄、誰かの悪魔


 そう、何もかもぶっちゃけてしまうのであれば、私が記憶を取り戻したあの頃ってタロラード公爵とエイヴァは接触して直だったはずだから。

 計画も、『魔』と公爵の意思疎通も、そこまで進んではいなかった。


 でも、


 ――『判っていたなら、なぜだ? そなたは後悔する方法など選ばんだろう』


『……そうよ? だからこそ、この結果に辿り着いたのよ』


 私は負ける賭けはしないし勝てない勝負は挑まない。でも後悔する道も選ばない。


『そんなことも分からないなんて……馬鹿なの?』


 ――『とんでもなく冷たい視線キタ。いやいやそれは知っているし理解もしているが、それを踏まえてなぜだと』


『なんで私が一から十まで説明してあげなくちゃいけないのかしら』


 ――『……えっと、』


『馬鹿なの?』


 ――『いや、』


『馬鹿なのね』


 ――『いやいやそうじゃなくt』


『馬鹿だと認めたら説明してあげるかもしれないわ』


 ――『我は馬鹿です』


 きりっと言い切った自称神はとっても不憫な気がしなくもなかったので、はぁ~あとため息も深くついて私は教えてあげることにした。


『取り返しは着いたわよ、あの時点ではね。でもそれは、私が、そのほかの全てをどうでもいいものとして捨てた場合の話よ』


 強引でも、無茶でも、不敬でも。

 世間も社会も全部ないものとして、彼らを救うためだけに動くなら、出来ないことじゃなかった。それは確かだ。

 が、


『嫌よそんなの』


 ――『は?』


 正直に真顔で吐露した私にとっても失礼な『何言ってんだこいつ』を含ませた『は?』が返って来た。むかついたので青っぽい光の上に紅茶をそっと乗せた。何とバランスを取って浮いているではないか。そういうシステムなのか。


『私は優先順位がはっきりしているの。まあ、それを踏まえなくても無理ね。記憶を取り戻した直後の時点での私の評価は最悪。驚きの四面楚歌。味方はゼロ。知っているでしょう』


 この自称神、私を転生させた張本人であるからには『明日セカ』を知り得ているだろうに一体シャーロット・ランスリーを何だと思っているのだろうか。もと人見知り内弁慶勘違いちゃんであるという黒歴史はどうあがいても覆せないのだ。


『豚領主代理がランスリー家を牛耳っていて自領は没落間近だったし、国王とも王子ともパイプなんてなかったわ。その状態で魔に立ち向かって国王とその弟の仲介ができる公爵令嬢がいったいどこの世界にいるのよ。寝ぼけてんの? 下手したら不敬罪で断罪されるのは私よ。もしくは頭が可哀想な子として病院に監禁の二択ね。まあ逃げるけど。でもそしたら私が追われちゃうじゃない。嫌よ面倒臭い』


 ――『面倒臭い』


『そうよ。優先順位があるって言ったでしょう。私は領を守りたかったし、そのあとはランスリー家の皆を家族として守りたかった。『ランスリー公爵令嬢』と言う立場の放棄は、彼等に未来を約束できないあの時点では選べるわけがなかった』


 ――『いや、だが義弟の騒動の時は家を出ようとしただろう、』


『馬鹿ね、エルの時はランスリー家はエルがいれば大丈夫と思ったからよ。あんなにカワイイ義弟や使用人さんを置いていきたいわけないでしょ。馬鹿ね』


 ――『何度でも馬鹿にしてくるこの娘。えっ、でも家を出ても出来たってことだろう』


『あの時点ではね。あれで公爵令嬢じゃなくなった時はタロラード公爵には冒険者として接触予定だったわ。でも自称神、貴方は前提を無視しているわね。エルが来てランスリー家も領も大丈夫と思ったから取ろうと思えた行動なのよ』


 この世界で生きる私には、この世界のルールに従う必要がある。

 私は聖女じゃないのだ。誰かが死ぬ選択肢を最善だとは口が裂けても言わないが、大事なものと知らない他人なら自分にとって大事なものを取る。利己的で傲慢だ。しかしそれが私。誰に罵られても。前世親友も言ってた。『貴方公僕にだけはなれないわよね。独裁者だったらお似合いよ』って。


 打算も計算もあって当たり前。

 ……確かめたいこともあったしね。


 ――『確かめたいこと?』


 つい口から洩れた言葉を拾って自称神が紅茶をこぼさないように首をかしげる。芸が細かい。

 私は笑った。


『……いったいどこまで、「シナリオ」は曲げられるのか?』










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