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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第三章 愛の化物
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3/51 可能性と選択肢は現実と仲良くできない


 ――『う、うほん。つまり……あれだな。とりあえず我も椅子に、いや、あれだ……』


 今更何か混乱している自称神がグダグダしているが、割と初めから私が無礼もマックスで優位である。本当にお前は神を自称していて大丈夫なのか。あと『十三年越しの話』ってなんで十三年も温めてたんだ。多分あれだろ? 魂な私がさっさと話せと促したにもかかわらず重要なところに限って聞き取れなかったあれだろ? あの時話せる内容なら今までにも話せたはずだ。私が記憶を思い出したのは九歳の時である。ならばなぜ今まで話しに来なかったのか。


『うむ、怠惰か』


 ――『聞けよ。我今必死に本題に入ろうとしてるのだが。あとなんでその結論自己完結した? 訊けよ。理由はあるのだぞ? 本当にあるのだぞ? そなたの精神は守りが固いのでな、こうやって入り込むのがなかなか骨が折れるのだ』


『なるほど怠惰か』


 ――『え? 結論同じ? いや、百歩譲ってそれもあるとして、基本そなたガードが固すぎるのだ。なんでそんな追い出しにかかってくるのだ? 隙間にするっと入り込むのに三年かかったであろう』


『隙間にするっと入ってくる不法侵入……ストーカーは間に合ってます』


 ――『違う。ストーカーが間に合っているのは判っておるが我はストーカーではない。だから汚物を見る目をやめよう。……やめよう?』


『ははっ、お巡りさんこいつでーす』


 ――『やめよう!? この神領域でそなたがそんなことしたら何か変なものが召喚されそうだからやめよう!』


 あまりに懇願してきたので、召喚するつもりだったがやめてあげた私は優しいと思う。


『では三年かけて私の精神に不法侵入を果たしたその執念深い行動の心をどうぞ』


 ――『言い方が悪意に塗れてる』


『……どうぞ?』


 ――『はい、話します! 記憶を取り戻さないなら不干渉でよかったが、うっかり思い出したことに気づいて! あわてて様子を見たらそなたがあまりに好き勝手動いとるもんだから! いったいどういうつもりなのか確かめに来たんです!』


 にっこり笑ったら軍隊のように背筋を正した、かのような雰囲気で一気に言った自称神。

 私は思った。


『やだ器が小さい。そんなの潔くあきらめろよ』


 声に出ていたようだ。しかし自称神は諭すように、告げてきた。


 ――『我、多分、器、大きいと思う。だってこんなに傲岸不遜な相手にもちゃんとお話しようとしてるもん。我頑張ってる。すごく頑張ってる』


 最後は自己暗示だった。しかしやはりあまりに今更だ。私が傲岸不遜・厚顔無恥なことは転生以前から知っていたはずだ。人選ミスと判じなかった十三年前の自称神の自業自得であって私は全然悪くないと強硬に主張する所存である。


 というか、やって来たその理由もについても、そんなもの諦める意外に選択肢ないだろう、既に。

 だから。


『今更だわ、そんなの』


 ため息を吐き出せば、わが身の不幸を嘆いていた自称神がピクリと肩をはねさせた、ように見えた。芸が細かい。


 ――『……どういう意味だ?』


 引き攣った声で自称神は問う。私はにやりと笑った。


『だってここ(・・)は、現実だもの(・・・・・)


 交差する視線(多分)、落ちた沈黙、ピリッと張った空気。

 自称神は嘆息した。


 ――『判っていたのか』


『判んないはずないでしょ。私を誰だと思っているのよ』


 前世の記憶を取り戻したらそこは物語の中でした?

 それを現実と、ホイホイ心の底から受け入れて納得する方が異常だろう。

 これは『物語』。でも、現実だ。理解はした。受け入れもした。しかし納得は別物だ。


 ――不安になるのだ。例えば不気味なまでに物語そのままの人物設定を見た時。その流れに沿った動きを人々がした時に。

 本当にここは現実か。


 ……私は確かめただけだ。

 だというのに。


 ――『だが、そなたならもっと、違う方法も、選べたであろう?』


 すごい無邪気な感じで疑問を呈してきたのは目の前の自称神でした。何を言い出したんだこいつは。あれか?


『国王とタロラード公爵のことを言ってるの、自称神』


 ぽんと手を打てばこっくりと頷く仕草をするものだから頭痛が痛い。……何を言っているんだ、この自称神は。――そりゃね。


『ぶっちゃけ、私が記憶を取り戻した時点ではタロラード公爵は取り返しがついたよ』


 少なくとも処刑にはならなかっただろう。生涯幽閉になっただけで。

 あっけらかんと告げた私に、自称神は戸惑うのだ。







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