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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第三章 愛の化物
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3/34 取扱注意の危険物(アレクシオ視点)


 王と言うのは俺の力を発揮できる天職であると思っている。思わなきゃやってられねえってのもあるがまあそれはいい。

 だがその椅子は同時にどうしてもしがらみってやつが多い。多すぎる。引き千切りてえ。


 そんなわけで俺が気安く本性を他人に晒したのは何年ぶりだったか。息子たちにすらそんなものほとんど見せていない。王妃であるアリスの前でくらいだったんだ、完全に気を抜けるのは。

 けど、それはとある少女によって激変した。もう訳が分からないくらい百八十度ぐるっと回った。なんだあいつは。同極磁石の反発かと思うくらいいい勢いだった。そして笑顔。何あの輝き。黙ってれば美少女なのに。


 ともかく。


 あれは、俺にとっては、嵐のようにやってきて、嵐のように去って行く少女だ。むしろあれが嵐そのものだ。

 ――シャーロット・ランスリー。

 彼女が変わった数年前、本当にこれがかつて目の前で気絶した少女かと目を疑った。というか、あれは本当に『少女』かと疑った。女性への認識が根底から覆された。


 だってだ。


 おかしいだろうが。いったいあれに何があった。意味が解らん。腹の中があまりに黒くて洗浄をお勧めしたいくらいだ。何がどうしたら深窓の令嬢があれほどにゲスくなるのか理解に苦しむ。うちの第二子だってあそこまでじゃ……いや似たり寄ったりだわ。周囲が全力で箱入りにしようとしているのに全力で箱を破壊し飛び出していく系だったわ二人とも。マジやめろ。


 けれどもまだ手綱を握れる息子と違ってそんなふうに呆けている暇すら与えずに、次から次へと彼女は事件を引き起こしやがる。注意しないと気付けないこともあるが、あいつ本性バレしてからは一応報告してくるくらいには同類として俺を信用してるらしいから。まあ自己申告だしわりと事後報告だし言わねえこともいっぱいありそうだが。その辺りはお互い様ではある。だって同類だし。


 そもそも。


 今となってはなつかしいが、本性で再会したのは、とある夜、路地裏だった。

 息抜きに城を抜け出して町を見て回っていたところ、嬉々としてチンピラに説教をかます少女に出会ったのだ。

 ……その衝撃、わかるか?


 開いた口がふさがらないという貴重な経験をしてしまっただろうが。


 いやいや。俺も本性がぶっ飛んでいる自覚はあるけども、これはさすがに、あれは顔だけ似ている別人かと思った。シャロンの華麗なる無双はマジ無双だった。

 そして最後にどや顔でサムズアップされた。

 どや顔すんなよ。最高に似合うだろ。

 なんで美少女が台無しにならないのか不思議でしょうがなかった。


 そんな衝撃カミングアウトを互いにすませてから、彼女は俺の執務室に突撃をしてくるようになったし。自由か。

 しかも毎回転移で目の前に現れる。自由か。

 マジやめろ心臓に悪い。俺は繊細なんだ。……大変爽やかな笑顔で楽しんでいらっしゃるからやめないんだろうけどなあの猫かぶりは。知ってた。


 国王の権威とは何だったのか。そうか張りぼてか。


 いやだって、息子も容赦なく拳を喰らって数メートル吹っ飛んでるもん。王族ってなんだっけ。シャロンのサンドバッグの可能性が出てきた。まあ、それでもめげずにストーカー行為を続けるのは見上げた根性だと思うぞ、俺は。あのシャロンが軽く恐怖してたからな。いいぞもっとやれ。


 ではなくて。


 とにかく、そんなシャロンは突撃の手段に文句はたくさんあるけれども、たずねてくれることに異論はあまりない。というか訪ねてくれないと困る。

 だって件のやらかし案件の報告はその襲撃時に行われるからだ。そして俺にとっても重要な案件を携えているあいつはどういうことなんだ。


 あいつと俺とは同類だが、関係性をもっとはっきり言うなら『協力体制』であって『仲間』じゃないから、用もないのにホイホイ来たりはしない。お互いこれでも責任ある忙しい身だし。でもたまにはアポ取ろうぜとも思う。……いや、あいつは俺の奥さんとかとは普通に仲いいからアポ取ってからくることもある。でも必要以上に目立ちたくないから極力その関係隠してる。つまり絶対これからも俺単体には唐突に襲撃してくるだろう。そして茶を貪っていくんだがまさか喫茶店感覚で来てたりすんのあいつ。


 いや、置いておこう。


 ――今回は重要過ぎてもっと早く言ってほしかった案件だったから性質が悪い。

 だって、これは。あいつが今回持ってきた案件は、俺の弟に関するもので、その罪状は。


 国家反逆罪。

 普通なら一族郎党問答無用で死罪だ。

 クラウはもともと王族だが、それを考慮しても一生牢から出られないだろう。


 それほどの罪だ、これは。動いてはいた。疑いたくはなかったが気になるそぶりがあったのは事実で、だから調査をしている最中だった。


 なのにその心苦しい中での俺の努力を踏みにじって結果を真っ黒ですと軽快に放り投げてきたシャロンは鬼畜だと思う。心の準備をさせろよ。可哀想だろ、俺が。






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