プロローグ
「ウィル、何ボサッとしてるの! 速くついてきてよ!」
「ゴメンゴメン、すぐ行くってー」
少女に急かされ、燈髪の少年――ウィルは歩調を上げた。
勝手知ったる村の側の小さな森。
小さな木の上に腰かけて翠色の眼を不機嫌そうに細めた少女が脚を揺らす動作に合わせて、日光を浴びた金髪がキラキラと光る。
二年前に父を亡くしたウィルが隣に住んでいた少女の家に引き取られてから、何度も繰り返されてきた光景。
――その繰り返しが、切れる日が来た。
「お……」
「ウィル、何か言った?」
少女の問いに、ウィルは素早く視線を巡らせつつ首を振る。
「おおお王女様!?」
「へっ?」
ウィルは咄嗟に声の元へ視線をやるが、そこにはもう誰もいない。
ハッとして少女に視線を戻すと、少女は木の下で騎士の格好をした老人に抱えられていた。
「あの、私王女なんかじゃありません――」
「下手な嘘をついても私は誤魔化せませんぞ!」
「いや、その子はホントに王女じゃないんです!」
「君が知らんのも仕方ないかもしれんが、この子は王女様じゃよ。きっとお忍びで遊びに来ていたんじゃろう」
「だから違うって――!」
老人は聞く耳を持たない。
だが、少女が王女なはずはないのだ。
村で幼い時から共に育った幼馴染なのだから。
だが、不意に老人の姿がブレたかと思うと、その後ろ姿は遥か先を駆けていた。
その日、少女――ファラ・ミオルニスは消えた。
後日村を訪れた騎士が彼女を王女の影武者として引き取る旨を告げた。
当然誰もが反対したが、何度も交渉と説明を繰り返す内に誰もが納得していった。
そこには少女の両親も含まれており、遂に少女が影武者になることに反対するのはウィルだけとなる。
その翌日、ウィルは一人旅支度を整えて村を出た。
――自宅に、帝都へ向かう事を記した手紙を残して。
どんな物語の受けが良いか測るための実験的作品の一つです。
ブクマ件数等で反応を見て、伸びそうだったら続ける予定です。。
というわけで、数日放置して様子を見るつもりです。。