夫婦漫才?ってんなわけあるかーい!
残酷描写は保険
母譲りの無鉄砲でいつも損ばかりしている。
アツコはいつもそう思っている。何故受け入れられないのか?ヤンデレ以上にピュアな恋愛なんてないというのに。
アツコは幼馴染にしてにぃちゃん的存在のハルキが大好きだ。狂愛だ。でも悪いとは思っていない。狂おしい程愛して初めて愛は完成する――はず。そう信じてやまない。
これはそんな2人を取り巻くラブコメ――なんてそんなぬるいもんじゃない「狂ラブコメディ」である。
✽SSです
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おはようの挨拶を済ませると、おもむろに幼馴染のアツコが
「ねぇあーん♥」
と言ってきた。しかし何も差し出してはいない。こいつ、またか。
僕の関西で鍛えた(予定)ツッコミ力をなめてもらっちゃ困りますな?
「お弁当のあーん、みたいに言うなアツコ。その右手に持ってるものはなんだ」
「えー何だと思いますー?」
すごくイヤな予感しかしない。そのきゃぴきゃぴするのやめろ……すんごい、イライラするっ!
「……針?」
「ピンポーンせいかーい、では召し上がれ」
どーぞ?じゃないですから!?
「いらないよ!?死ねってことなの、ねえ死ねってことなの!?」
文字通り召されちゃうよ?ってんなこと言ってる場合か!?
「だってーまた他の女とイチャついてたでしょ、ハルキにぃ?」
「イ……イチャついてないし?プリント持ってあげただけだし」
「ねぇ?ハルキにぃのクラスメイトだよね?なんて名前だっけ?」
「クラス委員の恩田晴美……あっやべ」
しまったぁああああああああああああああああああああああ!
ちーん。
「恩田晴美……ね。ふーん」
ちょっとなんか目が生気を失っているんですけど!?怖いからぁ、やばいからぁ!?
「ちょ、おまっ何もするなよ!?絶対何もするなよ!?」
「そういうフリですね、わかりました」
指を立てないでぇええええええええええええ。
「フリじゃないよ!?ねぇわかってんの?わかってないよね、絶対わかってないよね!?」
「わかってますよ」
「そうか、なら良かった」
なら一安心。安心?
「大丈夫です、命までは取りません」
「命以外は取るんだね!?」
全然全く微塵も大丈夫じゃないよ?十分だよ、十分すぎるよ!?
「いえーす、うぃーきゃん。一緒にれっつとぅぎゃざーしようぜ?」
なんで軽くルーなんだよ!?
「……僕はしないから。アツコもやめてよ?」
「ノリ悪いなぁハルキにぃ。……さてどうぬっ殺すかなぁウヒヒヒ」
「殺すいってるじゃん!やばいよこの子、誰か助けて」
「やばいよやばいよー」
「〇川かオマエは」
リアクション芸人にでもなるつもりか、こやつ。
「むしろハルキにぃを助けるのはアタシです。びっちの魔の手から」
「むしろオマエが助けてもらえよ、例えば僕とか僕とか僕に」
「責任とってくれるんですね……?結婚してくるんですねうひゃっほい」
「うっひゃほい言うなよ……ったくなんで登校するだけでこんな疲れんの?オマエ馬鹿か」
「いえ、牛並みのノロマで性格は蛆虫で、実に使えないかわいそうで涙なくして見れないハルキにぃと同レベルの無能です」
「無能て、そこまで言ってないよ!?というか、さりげなく僕の悪口やめてくれる!?」
「もうアタシに婿にもらわれるしか道はありません、観念してください。というわけで結婚しやがれこのやろー」
「はいはい、後でね」
「むぅー」
ずっとふてくされてろ。
そのままだったら可愛いんだよな、こいつ。というか何もしないでくれ、頼む。
そして、登校後。
恩田晴美の姿を見たものはいなかった……。
「え、まじでか」