14.「四十六億年掛けて得た力の喪失」
「無理矢理人間たちに抱かせた信仰心によって獲得していた力を全て失い、魔力が枯渇しておる。モンスターたちをこの世界に存在させ続けられなくなってしまったのじゃ。今の妾は四十六億年の中で最弱じゃからのう。許せ」
新しく出来た家族を失って呆然とする僕に、力なくドラファが呟く。
彼女曰く、一度死んで復活した瞬間にカウントが一旦リセットされるらしい。
再び〝最弱〟からスタートした後、また寿命である〝四十六億年〟まで、毎年戦闘能力が増していき、〝四十六億年〟でピークを迎えて再度死ぬ、という形になるようだ。
「「「「「殺せええええええ!」」」」」
人間たちが押し寄せてくる。
「『ワープ』」
ドラファの声に呼応して、彼女と僕、そしてカレレと彼女の両親は、山頂に空間転移した。
「これで、少しは時間稼ぎ出来るかのう」
なお、先程の噴火後、ドラファは再び溶岩を冷やして大地を作っておいたらしく、問題なく大地に立てる。家は吹っ飛んでしまっているが、仕方が無い。
「少しは抗ってみるとするのじゃ」
ドラファが右手を天に翳すと、肘から先が巨大なドラゴンの顔へと変化した。
「『漆黒獄炎』」
世界最強のドラゴンブレスが、神の巨躯を一気に包み込むが。
「無駄だ」
神が冷酷に告げると同時に、霧散してしまった。
「まぁ、そう……じゃ……ろ……う……な…………」
「ドラファ!」
右手を元に戻したかと思うと、力尽きたのか、ドラファが倒れそうになり、僕は慌てて支えようとする――が、力が入らず、一緒に倒れてしまう。
あれ程漲っていた力が!
僕はドラファと力を共有している――ということは、それだけドラファが弱体化しているんだ!
「「「「「殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!」」」」」
山を登ってくる人間たちの声が遠くから聞こえる。
今のドラファと僕なら、きっと彼らでも、楽に殺せるだろう。
どうしたら良い?
どうしたら、ドラファを守れる?
上体を起こした僕は、地面に横たわる彼女を見ながら、必死に考えるも、何も思い浮かばない。
いや、それどころか――
「……人間……たちが……ここに……辿り……着く……前に……限界が……来そう……じゃのう……」
ドラファの目から生気が失われていく。
ドラファが……死ぬ……!?
嫌だ! そんなの絶対に嫌だ!!
「何、弱気になってるんだ! ドラファは世界最強のドラゴンなんだろ!? だったら、こんなピンチ、楽勝で切り抜けなよ!」
叫ぶ僕の頬を、ドラファの白くて長い指が、震えながらなぞる。
「……其方に……涙は……似合わ……ない……のじゃ……笑って……いて……欲しい……のう……」
「誰のせいだよ!」
抱き着く僕を、優しく抱き締め返しながら、ドラファがぽつりと呟いた。
「……最後に……一つだけ……頼みが……あるのじゃ……」
「……何?」
出来るだけ叶えてあげたい。
どうせ僕らは、もう少ししたら殺される。
きっと、あと僅かな時間しかこうしていられないから。
「……最後の……頼み事……それは……」
「それは?」
「……子作り……じゃ……」
「………………」
一瞬、沈黙が流れる。
「ふざけてるの?」
「ふざけていないのじゃ! 生存本能じゃ! 弱っている時ほど、子孫を残そうとするものなのじゃ!」
「……意外と元気じゃん」
僕は、「はぁ」と、深い溜め息をつくと、「いたぞ! あそこだ!」「殺せ!」という声を背後に聞きながら、ドラファに顔を近付けた。
「子作りは出来ない。っていうか、こんな外でやる訳ないでしょ?」
「ガーン!」
「けど……これなら出来るよ」
僕が自身の唇を彼女のそれとそっと重ねると。
「んっ!」
大人っぽい彼女が、初めて可愛らしい声を上げた。
唇を離すと。
「好きだよ、ドラファ。僕と家族に――夫婦になって」
「!」
僕の告白に、彼女は目を見開いた。
と、その時。
「「「「「殺せええええええ!」」」」」
押し寄せてきた兵士たちの夥しい数の槍と長剣が、僕らに突き刺さる寸前。
「「「「「なっ!?」」」」」
僕らの身体を眩い光が包み、槍と長剣を全て弾き飛ばした。
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