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始源の樹の下



サテンたちはまず、“すべての記録が眠る場所”へと案内されることになった。


「その前に、一度……“始源の記録晶”をご覧いただけますか?」


そうルーフェリアが言った時、サテンは首を傾げた。


「記録晶?」


「はい。始源の樹の根元に隠された、我々エルフが代々守り続けてきた“記憶の結晶”です。

過去の出来事、民族の記録、禁忌の魔術……すべてがそこに封じられております」



ルーフェリアの案内でサテンたちが進んだのは、巨大な樹――始源の樹の根元だった。


「うお……これは、でっけぇな……」


サナが思わず見上げたまま呆然とするほど、始源の樹は高く、そして重厚な存在感を放っていた。

無数の根が大地を裂き、空へと伸びる枝葉は雲さえも貫いていた。


その根元、苔むした地面にぽっかりと口を開けた場所があった。

そこには、巨大な両開きの扉が、樹皮の中に溶け込むように設けられていた。


ルーフェリアが手をかざすと、扉が静かに開いていく。


「ここが……記録晶の眠る場所です」


中は薄暗く、石造りの階段がゆっくりと下へ続いていた。

その壁には等間隔に光の水晶が埋め込まれており、

淡い青白い光で階段全体を静かに照らしていた。



数十段の階段を下りると、広い空間が現れた。

そこは静謐で、どこか神殿のような荘厳さを湛えていた。


中央には、円卓のような大きな石台があり、

その周囲に大小無数の水晶が浮かんでいた。

それらはまるで心臓の鼓動のように、淡く脈動している。


「ここが、“記録晶の間”……」


一人の老いたエルフが姿を現し、サテンたちに深く一礼した。


「ようこそ、始源の記録晶へ。

私はここの管理者、ヴァリュールと申します。

……今より、特別な情報をお見せしましょう」



管理者ヴァリュールは、無言のまま手をかざすと、

中央の水晶のひとつが淡く光り始めた。


その光が空間に拡がり、一人の女性の姿が浮かび上がる。


──銀髪のエルフ。

──顔には傷、そして、背後には……魔王の玉座。


「……これは……?」


サナが息をのんだ。


ヴァリュールが語り始める。


「この者こそが、現在もなお魔王領に潜入し続ける我らが希望――

コードネーム《オーロラ》。記憶転送の適性を持ち、世界の真実を観測してきた者です」


「コードネーム……?」


サナが問い返すと、ルーフェリアが一歩前に出て頷いた。

そして、喋り出した。


「本名は極秘ですが、彼女は**我が一族が千年に一人の適性を持つ“記憶転送特化型”**です。

彼女の記憶は、距離や精霊の障壁を無視して、精霊回廊を通じて一瞬でこちらに届く。

……つまり、彼女ひとりで“全世界の動静”を観測できるのです」


「それって……最強のスパイじゃないか……」


サテンが腕を組み、険しい表情を見せる。


ルーフェリアは続けた。


「しかし、問題は……彼女の現在の潜入先です」


そう言ってルーフェリアが部屋の卓の一枚の大きな地図の一点を指さした。


そこには、漆黒の紋章と禍々しい魔力の波が描かれている。

これと記録晶と繋がって世界情勢を映し出している。


「オーロラは、現在……“魔王”直属の侍女として潜伏しています」


サナとマイナが同時に息をのんだ。


「……魔王って、あの……?」


「はい。世界最強の魔族……魔王アビス・エグゼキューター

オーロラは、五年前に奴隷として魔族に“売られる”形で潜入しました」


ルーフェリアは手元の巻物を見ながら、言葉を選ぶように続ける。


「……彼女からの記憶転送は、今年の春を最後に途絶えています。

転送妨害か、記憶封鎖……あるいは……」


「死んだかもしれない、ってことだな」


サテンが低く言うと、ルーフェリアは目を伏せたまま頷いた。



「彼女は……我々が世界を守るために、多くの犠牲を背負わせた者です。

……どうか、サテン様。

あなたの力を、貸していただけないでしょうか。

彼女を……オーロラを、救い出すために」


ルーフェリアが深く頭を下げる。


サテンは、一瞬無言になった。


しかしやがて、ふっと口元を歪めて、言った。


「まったく……手間のかかる連中だぜ、ほんと」


「……っ!」


「いいぜ。行ってやるよ。

オレの旅はいつも自由気ままだが、

……そいつを助けるのは、なんか、胸に引っかかる」


マイナが思わず拍手し、サナは安堵の笑みを浮かべた。



次の目的地は魔族の領土――それは、未知と危険に満ちた世界。

そして、サテンたちの旅は、次なる舞台へ。


スパイエルフ《オーロラ》の生死を確認し、

必要ならば、救出し、真実を掴む。


次元を超えた戦いの果てに、

再び神と精霊の力が交錯する。


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