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ワールドギア  作者: ウルフさん
25/25

氷帝の焦燥

復活

 静寂。

 ユグドラ結界の奥深く、風すら凍りつくような空間で、氷帝はゆっくりと目を開いた。

 違和感。

 それは、ほんの僅かな“ズレ”だった。

 本来あるべき気配が、ない。

「……ギア?」

 低く、静かな声が空間に落ちる。

 返事は、ない。

 氷帝はゆっくりと立ち上がり、周囲を見渡す。

 結界は正常。侵入の痕跡もない。破壊もされていない。

 だが――

「……消えた?」

 一瞬の沈黙。

 次の瞬間、氷帝の瞳がわずかに見開かれた。

 ――あり得ない。

 あの結界は、外からも内からも容易に抜けられるものではない。

 それを“破らずに”抜け出したというのか。

「……またか」

 小さく、しかし確かに焦りを含んだ声。

 氷帝はすぐに結界内を巡る。

 根の影、花の咲く丘、光の溜まる泉。

 ――どこにもいない。

 次第に歩みが速くなる。

「ギア」

 呼ぶ声が少しだけ強くなる。

 それでも、返事はない。

 やがて、結界の外へと足を踏み出す。

 森を駆け、風を裂き、影を追う。

 しかし――

 どこにも、いない。

 時間だけが、過ぎていく。

 日が沈み、夜が訪れる。

 月光が森を照らす頃には、氷帝の足も止まっていた。

「……」

 静かに空を見上げる。

 焦り。苛立ち。わずかな不安。

 だが、それを表に出すことはない。

「……無事でいろ」

 それだけを呟き、氷帝は一度引いた。

 ――翌朝。

 氷帝は迷うことなく、ある場所へ向かっていた。

「……雷尾」

 名を呼ぶと同時に、気配が動く。

 現れた雷尾は、いつものように涼しい顔をしていた。

「どうした、氷帝。朝から珍しいな」

「ギアがいない」

 短く、端的に告げる。

 その言葉に、雷尾は一瞬だけ目を細めた。

「……あぁ、それか」

「知っているのか」

「まぁな」

 どこか軽い口調。

 氷帝の眉がわずかに動く。

「どこだ」

「地竜のとこ」

「……は?」

 一瞬、時が止まった。

「だから、地竜のとこ。昨日から一緒にいたぞ」

 雷尾は肩をすくめる。

「今もたぶん――寝てるな」

「……」

 沈黙。

 そして、

 氷帝は静かに目を閉じた。

「……探した時間を返せ」

 低く、冷たい声。

 雷尾は軽く笑う。

「まぁまぁ。無事だったんだからいいだろ?」

「良くない」

 即答だった。

 そのまま氷帝は地竜のもとへ向かう。

 そして――

 視界に入った光景に、完全に固まった。

 草の上。

 無防備に眠る、地竜と――

 その隣で丸くなっているギア。

 穏やかな寝息。

 あまりにも、平和すぎる光景。

「……」

 氷帝はゆっくりと歩み寄る。

 しばらく無言で見下ろし――

「起きろ」

 軽く、しかし確実に冷気を落とした。

「ひゃっ!?」

 地竜が飛び起きる。

「な、なんだ!? さ、寒っ……!」

 その横で、ギアももぞもぞと動き――

 ぱち、と目を開けた。

「……」

 氷帝と目が合う。

 一瞬の沈黙。

 そして、

 ギアはにこっと笑った。

「……帰るぞ」

 それだけ言って、氷帝はくるりと背を向ける。

 ギアは小さく鳴きながら、ぴょこぴょこと後を追った。

「……あ、あの! ご、ごめん! 俺が――」

 慌てる地竜に、氷帝は振り返らずに言う。

「次は報告しろ」

「は、はいっ!!」

 こうして、騒がしい一夜は終わった。

 ただ一つ。

 氷帝は、誰にも見えないように――

 ほんの少しだけ、安堵していた。

今後もゆっくりですが書いてみます。少し書き方変わってますが気にしないでください。

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