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魔将軍のご主人様になりました  作者: 浦 かすみ


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魔将軍と同居します1

ヴェル君のイメージがどんどんヘタレる

10/31行間と誤字修正しました




 ヴェル君はゆっくりとスプーンを持つとスープを一口飲みました。そしてホッと息を吐きました。


「美味しい」


 ああ、なんだか泣きそうです。私は肉体年齢十八才ですが精神年齢大年寄なので涙もろいのです。


 私はヒートの魔法をかけながら、温かくした布巾でヴェル君の大きな背中をゆっくりと拭いていきます。


「ところでさ、カデちゃん」


「はい、ポカリ様なんでしょう?」


「このお屋敷、カデちゃんの防御障壁の魔法かけてあるよね?しかも三重障壁の」


 ちょっとびっくりしました。流石は魔神様というべきか、よく気が付かれましたね。


 あれ?そういえば……どうしてここにポカリ様いるの?


「ポカリ様、この家は魔法で防御していまして、許可なく侵入出来ないはずなのですが?」


「そうだね!素晴らしい障壁だね!流石はご加護持ちだね~もしかして攻撃魔法も使えるの?回復系も使えたよね~神殿の巫女よりすごくない?」


 私はギクリとしました。一番触れて欲しくない話題です。ポカリ様はニヤリと笑いました。悪魔のような笑いです。


 悪魔……はこの世界でも見たことがないので魔物のような笑いと称しましょうか。しまった、この方魔物どころか魔神だったわ。


「心配しなくてもいいよ、吹聴したりしないし。大体神殿のやつらなんて僕とは相性悪いじゃない?」


 そうでございますか……相変わらず乙女の心を読んでいるようですね。


 確かにコーデリナ神を拝する神殿はポカリ様から見れば相対する存在ですがね。


「父上、ここの障壁を破って入ってきたのか?」


 なんだと!?ヴェル君の声に、おもわず自分の作った障壁を慌てて見ました。


 あぁぁ障壁が破れてるっ!私は障壁を修復し直しました。思わぬ魔力の無駄遣いです。ポカリ様を睨みつけました。


「いや~すごいね!カデちゃん~無詠唱で魔力も物理も不干渉な障壁作るなんて~さすがっ」


「神殿の巫女様じゃなくて、も障壁くらい城付の魔術師クラスなら使えるでしょう?」


 わざとらしいポカリ様の賛辞に答える声が低くなります。ポカリ様はニッコリと微笑みます。


 笑顔が黒いです、やはり企んでますね?この腹黒イケメン爺、爺めぇ腹黒爺め~~


 ポカリ様は嫌そうな顔をして、若干呪いまじりになってるよぅ~と叫んでいます。


「ここならさ~カデちゃん印の神力混じりの魔力障壁で、反発の力も和らいで快適だねうん!素晴らしい環境だねぇ」


「お引き取り下さい」


「まだ何も言ってないよぅ~」


 なんだか漫才のようなやり取りになってきました。


 そういえばすごく大人しいヴェル君は何をしているのだろう?と、隣を見ました。おお!出された食事を完食して、自分で布巾で顔を拭いていますね!うんうん~良かった~


「ヴェル君、食事完食出来たね!ちょっと待ってて下さいね」


 私は大きめの体拭き用のタオルとヘアブラシを持ってきました。まだほぼ裸族状態のヴェル君の体にタオルを掛けてあげます。この家には男性用の衣服は無いですしね。しばらくは我慢してもらいましょう。


「ヴェル君、私は男性用の衣服を持っていませんので、後ほど準備しますね!それと、お嫌じゃなければ髪の毛切り揃えましょうか?」


 ヴェル君はコックリと頷きます。あらぁ~誰かさんと違って物静かで優しい子ですね~


「ねぇねぇカデちゃん」


「あら?まだいらしたんですか?ポカリ様」


 私は(はさみ)を準備すると、ブラシで毛先を整えつつヴェル君の髪にゆっくりと鋏を入れていきました。ポカリ様を見ずに手先を動かしていきます。


 まずは後ろ毛から……ショリショリ……


「ポカリ様のおっしゃりたいことは分かります。この家は自慢ではありませんが完璧な防御です。おまけに癒しの力のある私が居ます。ヴェル君を保護する環境としては最高ですね」


 ヴェル君の体が強張りました。私はヴェル君の肩を軽く叩きました。


 さらに話を続けます。


「ヴェル君に何があったかは詮索しません。私は目の前で魔力凝りで瀕死になっている方を、見過ごせるほど冷酷にもなれません。ポカリ様に脅されなくても、私からヴェル君の保護に名乗りを上げさせて頂きますよ」


 ポカリ様は無表情です。怖いくらいの美貌ですね、こんな表情をしていると本当に魔神様のように見えます。


 まあ実際、魔神様ですが……ポカリ様はフゥ~と長く息を吐き出しました。


「脅してないけどなぁ~」


「御冗談を」


 食えない親父です。私が断ればこの場で魔力を吸い尽くすか、神殿に私の事を密告するくせに。


「とにかくヴェル君は私が奴隷として買いましたので!私が面倒をみますからご心配なく!」


 私の宣言を聞いてポカリ様は満足そうに頷くと、ソファから立ち上がりました。


「カデちゃんって……お人よしだよね~」


「私、手の届く範囲しか助けませんよ?」


「その手の届くって範囲がなぁ~だから辛いと思うんだけど……まぁいいか~」


 ポカリ様は本当に、私の記憶の隅々まで見てきたのですね。まあ腐っても魔とはいえ神様ですしね。


「腐ってないしっ!」


「はいはい、お疲れ様でしたぁ~またのご利用をお待ちしておりますぅ~」


 なんだよっそれっ~カデちゃんの居た異世界にあったエーティーエムって機械とかの音声魔力みたいだよ!素っ気ない!愛が無いよぅ!とか喚きながらポカリ様は消えていきました。


消える直前、振り向いたポカリ様の口から血が垂れています。もしや世界の反発とやらから、相当の圧を掛けられていたのでは?


ご回復お祈り申し上げます。




やっと同居がスタートです。

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