魔将軍、迷子になる2
相変わらず着地点が分からないです。宜しくお願いします
10/29誤字修正しました
私が考えに耽っていると、突然ポカリ様があ!と言って体を屈まれました。
ど、どしたの!?ポカリ様?
「っヤバ…世界の反発…体が千切れそ…カデちゃん、ごめんねぇ~ヴェル君の事頼んだよぉ~」
わわっ千切れっ!?世界の反発とやらは体に直接攻撃をしかけてくるのかな?ポカリ様は瞬時に消えてしまわれました。一気に辺りは静寂に包まれます。私は正座のし過ぎで痺れた足を叩きながら、しばらく地面の上で悶絶していました。
怒涛の遭遇でした。
しかし…よくよく考えると…胡散臭いですね。
だって私は魔神なんて初めて見ましたし、ポカリ様本人が魔神だよ~と言い張ってるだけですしね。
それを言えば私だって人間だよ~と自分が思っていても周りからみたら人外かもしれないし…
そもそも記憶を持ったまま転生を繰り返している段階で、私は人の道をすでに外れてるし…魔の眷属の方を忌み嫌う権利はありません。私だって人外の生き物ですしね…
いけない…暗い思考のループに入りかけた。
とりあえずポカリ様は直感ですが悪い人?魔神?ではなさそうだと判断し、私はアロエもどきを入れた手提げ籠を手に下山することにしました。
「ヴェル君を捜しにガンドレア帝国に行ってみようかなぁ~今それほど忙しくないし~」
またおひとり様の必殺技、独り言攻撃をしています。しかし他国に行くとなると、制限される諸事情があります。
先ほどポカリ様にばれました私の生まれが関係してきて簡単には行動に移せません。
おや待てよ…?
「あれ?ヴェル君て何歳?どんな格好してるの?」
基本的情報をお聞きするのをすっかり忘れておりました。私も相当動転していたようです。
そんな訳で…一週間が過ぎました。
首都アンカレドのバットリラ市場の路地裏に私とモサッとしたドロドロからは身綺麗になった魔神の息子(仮)と二人で佇んでおります。
私は深く物思いに沈んでおりましたが目の前の大きなヴェル君(仮)の一言で意識が浮上しました。
「父上を…知っているのか…?」
ヴェル君は素敵なバリトンボイスですね。お声はポカリ様によく似ています。体が痺れます。私はモジャモジャ毛だらけの大きなヴェル君(仮)を見上げました。
「はい、一週間ほど前にお会いしました、それで…」
と、話しかけた時に路地裏に人の気配がしました。人のいるところで話す内容ではありませんね。
しかも大きなヴェル君はほぼ全裸の裸族様になっていますし、腰は私の巻いたマントのみ。防御力ゼロです。
「ヴェル君、ここから移動魔法で私の家に行ってもいいですか?」
ヴェル君(確定)は小さく頷きました。
私はヴェル君の手を取ると頭の中に自分の家の居間の景色を思い浮かべました。フワッと体が浮きます。自分の魔力の波動を感じ、目の前の景色は家の居間に変わりました。
ヴェル君はゆっくりと部屋を見回しました。そして、急にガクッと体の力が抜けて倒れこみました。
あぁぁ!!でっかい大きなヴェル君が前のめりにこちらに倒れてきます。オタオタしている間にヴェル君に倒れこまれたまま床に後頭部から倒れていきます。何故かスローモーションに感じます。
痛いっ絶対痛い!
来るべき後頭部への衝撃に身構えます。ポスンッ……衝撃は来ずに、やや硬めのいい匂いの何かに背中を包まれました。
「カデちゃんとヴェル君、抱き合って何してるの?僕、お邪魔しちゃったぁ~?」
美しい黒曜の髪と金色の瞳の持ち主が私を覗き込んでいます。あああ!!!ポカリ様ぁ!
「もうぅ!ヴェル君~心配したよぅ~捜したんだからぁ~オリアナちゃんもすっごく心配しているよっ!親を泣かせるなんていけないよぉ~あっカデちゃんありがとね~ヴェル君魔力切れかなぁ~?」
会った途端にポカリ様の怒涛の口撃に晒されています。
ヴェル君はちょっと気が抜けたらしく今はソファに座っています。私の好みで選んだ淡いピンク色のラブリーソファにでかいヴェル君…浮いてます。何だかすみません…
私はヴェル君に果実水を渡し、今は温めた布巾でヴェル君の頭を拭いてあげています。お風呂に入るにはまだ体が本調子ではありませんしね。おっと、野菜たっぷりスープが炊きあがったようです。
「父上……」
「なぁに?」
親子の会話の邪魔はしちゃいけません。
私は過去の転生人生で培った職業、メイドの技術を発揮しソッと台所に移動すると、野菜スープと手作りのパン、ポカリ様には紅茶っぽいサラーというお茶を手早く準備しました。二人の前に配膳し終わるとヴェル君の横に座りました。
「ポカリ様、とりあえずお茶をどうぞ。ヴェル君は食べれそうならまずは腹ごしらえをしてね」
声を掛けたのには訳があります。ヴェル君のおなかの虫が大音量で鳴いているのです。
空腹ですね。
ヴェル君はしばらく固まっていました。ポカリ様は優雅にお茶を飲まれています。やがてポツリとヴェル君の声が聞こえました。
「こんな時でも腹は減るんだな…」
ヴェル君の声は震えていました。おもわずヴェル君の背中に手を当ててさすってしまいました。ヴェル君は精神的にも行き場のない迷子なのかもしれません。
ちょっと!ポカリ様っ
優雅にお茶を飲んでる場合じゃないでしょ!!
ヴェル君がヘタレになってしまった