魔将軍の父との遭遇2
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ああ…どうしよう…腰が抜けて動けません。
おまけに先ほどから魔力がすごい勢いで吸い取られています。
足早に近づいてくる、魔人か何か分からない得体のしれないイケメンのお兄様に向かって。(推定年齢二十代半ば)
魔人(仮)が魔力吸い取るなんて『危険!超魔物大図鑑』には載ってなかったよっ…あの本、銀貨一枚もしたのにぃ~出版社訴えてやるっ~
…とかウロウロと考えて現実逃避している間に視界が暗くなってきました。とうとう魔力切れをおこしかけております。
これは先ほどから切望していた気絶という状態になれるのではないでしょうか?
しかしこの状態で昏倒してしまったら魔人(仮)のイケメンお兄様…長いなイケ兄でいいか…に頭からかじられてしまうのでないでしょうか?
いやぁぁぁ!!まだ嫁にもいってないのに、しかも長ーい転生人生中でも一度も嫁にいってないのにっ…
いよいよ全身の震えがおこってきました。イケ兄がとうとう私の目の前に来ました。異世界生活最大のピンチです。
「あれれ?あ~ごめぇ~ん、勝手に魔力吸い込んでたね。はい、戻すね!」
「え?」
あっというまに、魔力が体に満ちてきました。イケ兄から魔力がグングン私に流れ込んできます。
何が起こっているのでしょう?それに先ほどから気になっておりましたが、このイケ兄『魔人』の割には会話がスムーズに出来ています。
魔人って『危険!超魔物大図鑑』によりますと、人間としての知性は保たれますが魔素の影響で凶暴性が増し、攻撃的になり人格崩壊がおこると記載されていました。
魔人…ではないのでしょうか?イケメンお兄様だし、私的基準ではイケメンは正義ですしね。
イケ兄はコテンと首を傾げました。ホント、イケメンですね…さすが文字通り人外のイケメンさんです。
「それにしても娘さんの魔力、変わってるね~神力が混じってるね。お蔭様で無意識に取り込んじゃったけど『世界の反発』が少なくて済んでるよ!」
何やら気になる理解不能なワードが出てきております。さすがの転生のプロの私もついていけません。
「ちょ…ちょ、ちょっとお待ちくださいっ」
「はい、待ちますよ」
礼儀正しいイケ兄様ですね。私は抜けた腰に治癒魔法をかけて思わず正座しました。ご挨拶の作法としては間違ってないと思います。
「お名前をもう一度お願いします」
「アポカリウス=カイエンデルトです」
「では、アポカリウス=カイエンデルト様は魔人様…でしょうか?」
「様はいらないしもっと気安く名前読んでよぅ。ちなみに魔人じゃなくて魔の神様ですよ!えへん!」
もっと理解不能なワードが追加されました。今なんとおっしゃいましたか…?マノカミサマとか言いましたか?カミサマといえば私の知っているあの神様でしょうか?
「その神様だよ!だからこの世界から見たら『異物』だから反発を食らうわけ」
今私、言葉に出してましたっけ?よもや心を読んでいらっしゃるのでしょうか?
「読んでる読んでる~。でも珍しいね異世界の転生者さんって、神のご加護付だね。君の魔法?そうでしょ?」
「乙女の心を読むなんて殿方にあるまじき振る舞いですよっ!」
なんたること!魔神様(本物?)心を読む能力をお持ちのようです。魔神様(本物?)はニヤニヤしながら私を見下ろしています。
「乙女なんて年なのぉ~?ぶっちゃけ記憶見たけどね。魂年齢は僕と同じくらいだよね」
なんてことでしょう…異世界で初めて魂の同世代様とお会いしました。
「失礼しました、では改めましてポカリ様」
「気安く…て言ったけどなんで微妙な箇所で 名前はしょってるの?」
「ポカリ様」
「……」
某スポーツドリンクの略式名称が頭の中をよぎります。夏場は凍らせて部活動の時に美味しく頂いておりました。懐かしいですあの味。お世話になりました。
別にいいけどさ~飲み物の名前なのぉ~?と魔神様は口を尖らせています。
また心の中を勝手に読んでおられますね、ポカリ様。魂の同世代同士とはいえ、女性に対して乙女じゃねぇ!と言ったことは忘れませんよ。ええ、大年寄ですから根に持ちますよ。
「それはそうと、ポカリ様」
「…なんでしょーか?」
「私の魔力にシンリョクが混じっているとおっしゃっていましたが神の力の神力… ということでしょうか?」
「ああうん。そうだよ、神の力があるね。神の血筋だよ、カデリーナ=ロクナ=シュテイントハラル王女殿下」
本当に心を読んでらっしゃいますね。私は苦々しい気持ちでポカリ様を見上げました。
「もう王位継承権は放棄しています。今はカデリーナ=ロアストと申します」
「これは失礼しました、カデリーナ嬢」
ポカリ様は紳士の礼をとられました。
流れるような黒髪。目は金色の光彩です。顔だけイケメンではなく美丈夫です。所謂、シュッとしているといわれるイケメンです、眼福です。中身はアレですが…
あ、そういえば最初にポカリ様が気になることを言っていたではないですか!すっかり忘れていましたよ!
「ポカリ様失念しておりました。お会いした時に聞かれました、ヴェル君… とおっしゃる息子様のことですが…」
「そうだった!いけないいけないっ、ヴェル君探してたんだった!」
ヴェル君のお父様っしっかりなさいませ!
やっと主人公の名前が出てきました(笑)