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魔将軍のご主人様になりました  作者: 浦 かすみ


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3人は同い年  SIDEヴェルヘイム

ヴェルヘイムの番外編です。




「これ、間違いない?魔術師団長かな?」


 赤毛の近衛が俺に聞いてくる。割と距離感がない人だな。


 自分が人と距離の詰め方が分からないほうなので、逆に詰めてきてくれる人の方がやりやすい。


 しかし、先生ひどい状態だ。うわっ呪術がびっしり体覆ってる、いつ発動したのかな?


「誰も彼に触れてない?近づいてないか?」


「大丈夫ですよ。どうしてです?」


 そう聞いてきた綺麗な晴天の空みたいな髪色の近衛に、俺は少し頷いて見せてから思わずよかった、と小さく呟いた。


「体中に呪いの魔術が発動している、禁術だ。おそらく意識を失い昏倒したらとか発動条件があって、今も発動している。うっかり触れてたら手が壊死していたかもしれない」


「げぇっ!」


「怖っ!しかしジーニアスの野生の勘のおかげですね。気が付いていたのですか?」


 ジーニアスと呼ばれた赤髪の近衛は、鼻の頭をポリポリと掻いた。


「そんなんねーよ。やべぇって気がしたんだ、なんか淀んでる感じがしたし」


 俺は赤毛のジーニアスを再度見た。意外に若いな。しかし言葉遣いすごい。


「淀んでいるで正解。禁術の影響で空間が歪んでいるから、空気が悪い。ジーニアスは『癒しの目』があるな」


 俺がいきなり距離を詰めた感じで、名を呼んでみるとジーニアスは目を丸くした。


「え~なんで分かるの?ばぁちゃんが治療士してんだわ、でも俺『目』はあっても治療系の魔術がダメ」


 おお、俺と同じだ、仲間だ。癒しの目があっても使えないと意味ないよな、分かる。


「一緒だ、俺もダメ。根本的に無理。膝の擦り傷すら治せない」


 俺が同意するとジーニアスが顔を近付けて来た。


「マジッ!?俺も無理~やっぱ誰でも最初は、ちっせぇケガで試してみんのなっ」


 そうだな、まず『目』があると分かると、転んだ擦り傷から治してみるのが鉄板だよな。


「なぁ……あんた、魔将軍、だよな?」


 俺がジーニアスと盛り上がっていると、もう一人の綺麗な髪色の近衛が話しかけてきた。女の子みたいに綺麗な男だな。


「そう呼ばれているらしいけど、厳密には俺じゃない」


「え、どういうこと?」


「俺、魔獣害獣討伐の専門部隊の責任者だった。対人の戦地になんて十年間一回も行ったことないし」


「十年?って君、年いくつ?」


 空色の髪の近衛が聞いてきた。


「二十二才」


「なんだよっ俺らと同い年か!」


 ジーニアスがマジでー!?とか言っている。そのノリ嫌いじゃないな。


「それに偽物は……そこの転がってるおっさんが勝手に作って俺だ、とかやってたっぽい」


「ぽいってなんだ?」


 呆れたように空色の髪の近衛が言った。


「よく分からん。だから正直ここで捕まえられてよかった。ただ教えてくれるかな?」


 あ、そういや自白はフィリペ殿下が得意そうだ。俺、苦痛の与え方なんて考えたくもないし。


「自白はフィリペ殿下に頼もうか。あの人、得意そうだ」


「それは分かる。あの方はあの外見から想像も出来ないえぐい魔法を使うし」


 青色の髪の近衛がそう言い切った。


「言い切るな~レンブロ。なんかあったの?」


 彼はレンブロというのかなるほど。本当だ、何かあったのか?


「一年前ほど前か…王太子殿下を狙った集団と遭遇した。その時フィリペ殿下も追撃に参加された。殿下が風の攻撃魔法で集団を滅多切りにし始めて、切った生首がこちらに飛んで来て顔に当たった。今だに何故、避けられなかったのかと自問するが、未だに夢に見る飛んできた生首とキ……」


「よし、うん。お疲れレンブロ。その唇は未亡人との口づけで癒して貰え」


「甘い菓子でも食べて唇を癒せ」


 俺達はレンブロの肩に手を置いて思い思いに声をかけた。レンブロはその時の光景を思い出したのか、少し顔色を悪くしながら頷いた。


「そ、そうだな。ますはカデリーナ姫に菓子でも頂こうかな」


「そうだな、カデちゃんの菓子は最高だ」


 レンブロとジーニアス、二人が一斉に俺を見た。な……なんだ?


「ちょっと~聞こうと思ってたんだけどぉ」


「な、何?」


 レンブロがその綺麗な顔をグイッと近づけて来る。


「カデちゃんとか呼んでるし、さっきもどさくさに抱き付いていたし、しかもロージから聞いたのだが」


 ロージは何か余計な事を言ってないだろうな。


「「同棲しているのか!?」」


 ぶぶっ!?な……いや、確かに一つ屋根の下に住んでいるし(今は母上達が居るけれど)限りなく同棲近い同居とも言えなくもない。


「おい、なんでそんな赤面してんだよ」


「ま、まさか!?すでにあの可愛らしい姫にっ」


「ちがっ!」


「何がちげぇーんだよ?一緒に住んでて色々あるんじゃね~のか?ホラ、よくある湯殿で遭遇とか?」


「うわ~憧れる。しかも見ちゃイヤ!とか隠されたら余計滾るな」


 ジーニアスはともかく、レンブロへの認識が変わった。意外に妄想系だった。


「んで、見たのかよ?」


 聞かれてギクリとした。見てはいないが、風呂で体を洗ってもらった。


「正直に言えよ」


 レンブロが更にグイッと来る。美人の怖い顔は迫力だな。二人ににじり寄られる。


「体が弱ってた時に湯殿で頭と、せ……背中を洗ってもらった」


 レンブロの息を飲む音が聞こえる。ジーニアスに肩を小突かれる。グリッと痛い。


「ちょっおいおいっ!いいじゃねえか~やっべっ。なになに~?頭洗ってあげようか?とか言ってくれちゃったりしたの~?てか、そういやさっき姫はヴェル君っとか言ってたっけ?」


恥ずかし……今、俺絶対顔、真っ赤だ。


「ヴェル君、頭洗ってあげようか?……滾る。これ言われて拒絶出来る男はいないな。はぁ、いいな。俺も言われてみたい」


 妄想男、レンブロをちょっと睨んだ。おいっ!カデちゃんは俺の……俺の……


「で、体のどこまで洗ってもらったんだよ?ほんとに背中だけかぁ~?」


「なっ!?本当だ……前は……死守した」


「そーだよな、そんな状態で前に来られてもナァ?」


「いいな~彼女とお風呂で……滾る」


「レンブロッさっきから妄想し過ぎだっ!いやらしいっ」


「いやらしいのはお前もだっつーの!絶対お前も妄想ばっかりしてるだろ?いつか現実ででけぇ失敗やらかすんだよ」


 いきなりのジーニアスの発言に俺は固まった。


「お前らみたいなのが妄想と現実がごっちゃになって女に夢見てんだっ自覚しろっつーの」


 でかい失敗……その時、あの奴隷印の解術の際の己の痴態を思い出した。


 ヤバい、あれもヤバかった。タガが外れてどえらいことをしていたし。いつかやらかして、カデちゃんを泣かせるとかありそうだ。あ、実際泣かしたし……横目でレンブロを見た。レンブロと目が合った。


「……ヴェルお前何かあったな?」


「んだってえ?妄想拗らせて、姫様になんかやらかしたのか?」


「!」


「サバテューニ、部屋へ戻ります」


 ふいに王太子妃が声をかけてこられた。助かった……一気に現実に戻る。


 すっかり忘れてた俺はグーデ先生の体に捕縛系の魔法をかけた。よしっ、反射の魔法はかかって無いな。


 はぁ面倒くさい……相手が強すぎると自動発動系魔法は絶対仕込んでるからなぁ。


「なぁヴェルその捕縛術。一個でいいの?俺もかけよっか?」


「うん、いや……ジーニアスと俺と魔力の性質が似てる、レンブロも若干同じ系統。だから重ね掛けしても効果は薄い」


「何故わかるんだ?」


「その、俺視えてるから、魔力の資質とか色合いとか?」


「うっそ!?視えるてそんなのも診えるの?すげぇ~」


「資質て得意な術式とか?」


「レンブロは氷と水魔法と土系か?ジーニアスは炎、雷、そして土?レンブロは防御苦手?ジーニアスは治療かな」


 二人は唖然としている。ついでだから言ってやるか。


「ちなみに魔力の色で、軽い精神と体の状態も分かる。レンブロは寝不足。ジーニアスは風邪を引きかけじゃないか?」


 二人は無言だ。嫌な気配もない。気は悪くはしていないみたいだ。俺は二人を促してベンチで座っているカデちゃんの方へ歩いて行った。


 そんな俺の後ろからトントンとジーニアスが肩を叩いてきた。


「うまく逃げたつもりだろうけど、後で詳しく聞くからな?」


 レンブロが背中を思いっきり小突いてくる。人体のツボを押すなっ!イテッ!


「どんな卑猥な行いをしたのか、全部聞くからな?」


「ひわっ!」


 ああ、俺の心の邪さを知らずにカデちゃんが笑っている。


 ギュッてして抱き付きたいなぁ……





ヴェル君に友達が出来た!LV5→10にレベルアップした!

妄想仲間が増えた!

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