魔将軍と襲撃2
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コ、コレ早くヴェル君にお知らせした方がいいよね?
「オ、オリアナ様……その、倒れている方、魔術師団長で間違いないのでしょうか?」
茫然と立ち尽くしているオリアナ様に声をかけると、横に寄り添うようにオリアナ様を支えていたルラッテさんが振り向いて、何度も頷いてます。
ああ……間違いないようです…確かこの魔術師団長はエーマントに来ていると、ヴェル君の手紙には書いていました。でもどうしてここに?どうやってここにいることが分かったのでしょう?
「そうだ、ヴェル君にお知らせせねば……うん?フェルトさんどうされました?」
いつの間にか私の足元に来ていたフェルトさんが、座っているベンチに駆け上がって来て私の太ももに前足をちょこんと置きました。
「私が言おう」
小さいお声ですが、確かにそうおっしゃいました。今なんと?
フェルトさんが言う?ってどうするの?ああっ分かりましたよ!例の「もしもし?父上?」みたいなアレですね!
……って、でも待てよ?フェルトさんは、もしもしするお手がありませんけど?
フェルトさんは虚空に向かって少し顔を上げてお座りポーズでじっとしています。
……あれ?もしかしてアレで会話しているのかな?
と、思った瞬間、私の前に影が現れ、あっという間に何かに包み込まれました。
感じる優しい魔力といい匂いの方はもちろん知っています。
「ヴェ……ヴェ、ヴェルゥくーーーん!?」
「カデちゃんっ!?怪我無いかっ!?」
「わたっ、わたしっは大丈夫ですっ!リヴァ殿下が」
そう言い終わらないうちにヴェル君が、瞬間移動の如くヴィオお姉様のお膝の上に座っている、リヴァイス殿下の前に膝を着きました。
は、早ぇぇ!
「殿下、お怪我はありませんか?」
「ヴェ……ヴェル」
「はい」
「フェ……フェルトが、たすけてくれたぁ」
リヴァイス殿下は、ふぇふぇと泣きながらヴェル君にしがみ付いて行きました。ヴェル君は優しくリヴァイス殿下を抱っこすると、頭をポンポンしてあやしながらこう話しました。
「それは、フェルトも殿下をお守り出来て嬉しいでしょう。後でたくさん褒めて上げてやって下さいね。それにしましても、殿下はお強いですね、私も殿下と同じ年頃に怖い目に遭いましたが、恐怖で失神と失禁すらしてしまいましたものです」
ヴェル君の黒歴史がっ!リヴァイス殿下の大人への階段の足掛かりに、ヴェル君の犠牲は無駄にはならなかったよっ!
「ヴェルが?」
「はい、私が。殿下は流石ですね。これでは私もあっという間に、殿下に敵わなくなりますね」
「そ、そうだっヴェルッ!ドラゴンとやらをみせてくれっ。私も見たいっ」
うおっとそれはっ……ヴェル君の黒歴史再び!
「あれは拓けた大きな場所が必要ですので、今すぐは無理ですね」
ヴェル君、上手くかわしましたね。
「おおきな所がいるのかじゃあ……じゃあ、おじい様にきいてみる!」
げげっ!国王陛下に話がいっちゃうの?段々大事になってきましたよ。
すっかりご機嫌になったリヴァイス殿下を床に降ろすと、ヴェル君は再びヴィオお姉様の前に膝を突かれました。
「取り急ぎこちらに転移して来ましたので、一度帰らせて頂きます。ルーイドリヒト王太子殿下の御前で急に消えましたので、驚かれていると思いますのでこちらの様子もお話させて頂きます」
ヴィオお姉様は頷かれました。
「宜しく頼むわね」
「御意」
そしてヴェル君は、倒れているロブロバリント魔術師団長の近くまで歩いて行きました。サバテューニ様とラヴァ様、お二人も後を追います。そう言えば三人とも同い年ですね、今は関係ありませんが。
しばらく三人で何やらお話されていたようですが、連れだって戻って来られると私の所へ来られました。
「カデちゃん、腰はもう大丈夫?」
「はい、それはもう問題ありません」
「魔術師団長、体中に禁術仕込んでるから、素手で触れない。で、捕縛魔法で縛ってはいるのだけど、出来ればカデちゃんも別の捕縛系の術式で縛ってて欲しい」
ひええ、禁術!?呪いのアレですよね。
「なんで~?もうヴェルの魔法で縛ってるならいーじゃん?」
ラヴァ様……もうこの短時間でヴェル君との距離感縮めていますね。流石コミュ力の塊。
「さっきも言ったけど、得手不得手が似ている魔術師同士の術式は、一つが解術出来ると似たような構成式の術は、解かれやすいんだ。特に俺とジーニアスは完全に同系統だったし、レンブロも似ている。三つの術で捕縛していても、一つ解けたらあっという間に全部解けてしまう」
「知らなかった」
サバテューニ様の呟きに、ヴェル君は少し微笑みました。美しい者同士、今日一番のベストショットです。
「魔術師団長クラスじゃないと、コレの法則とか知らないと思う。近衛には特に必要な知識じゃないし、俺は研究するの好きだから知ってるだけ」
サバテューニ様は、説明を聞きながらヴェル君を見つめています。
カークテリア君に続いて、また耽美な音楽が流れて来そうです。見つめあう二人……
「お前、絶対うちの隊に入れ」
「え?」
サバテューニ様がヴェル君の肩を掴みました。きゃああ!
「絶対、近衛に引き抜くから覚悟しておけよ!」
何その決め台詞!
全世界(異世界含む)の乙女達が、歓喜の悲鳴を上げましたよ。ヴェル君!引き抜かれて、覚悟してしまいなさいなっ!
「あ……でも俺、カデちゃ「はいはい、ヴェル君お疲れさま。捕縛の魔法はしておくから、とっととルーイドリヒトお義兄様の所へ戻ってあげてね」
「でも、俺、カデちゃんのご「バナナタルト、レイゾウハコにそろそろ入れようかな~」
「戻ります、じゃあ」
何か言いかけていたヴェル君の言葉をすべてぶった切りましたよ。最後はヴェル君は甘い物に釣られて一瞬で戻って行きましたね。
ふぅ~やれやれ。ヴェル君は案外抜けている。レイゾウハコからわざわざ取り出さなくても、ここでバナナタルト食べていけばいいのに。
そんなヴェル君を見送った私を、サバテューニ様とラヴァ様がなんとも言えない目で見ています。
「何でございましょう?」
「近衛に来てくれるかどうかは、姫次第ですか?」
「?」
「姫が可愛く、近衛の制服着ている所見たいわ~とか言ったらすぐ来るんじゃね?」
「それで行こう」
ちょ……ちょっと何?何?何の話?
ヴィオお姉様達は室内に戻られたので、私はラヴァ様と二人で裏庭に残ってロブロバリント魔術師団長から若干離れつつ、捕縛方法を思案していました。
「さっきも言ってましたが、ヴェルと姫様の術式って真逆の性質なんでしょう?」
「え~と口で説明するには、あ~そうね!ヴェル君は紙に術式を綿密に描き起こして、理論通りに術を展開していく術士だけど、私はこうなればいいな~とか、これがあるとこうなるよね~とか、勘で術式作っていくの」
「繊細と大雑把か」
……ん?今、ラヴァ様なんと言いましたか?
おや、足元にフェルトさんの気配を感じます。見るとフェルトさんが私の靴の上を前足でトントン叩いてます。
「あら?フェルトさんなんでしょう?」
「私の神力も混ぜて使うがいい。アレは少々厄介な呪術だ」
「ぎゃああ、喋った!」
「喧しいぞ、赤毛」
ラヴァ様は一瞬で私の後ろに回り込みました。おいっ!女子を盾にするなんて、騎士様のすることじゃありませんよ。グイグイとラヴァ様に押されつつ……フェルトさんと私の一匹と一人は、魔術師団長を診てみました。
「うわ~呪術ってこんな魔術式なのですね」
「あまり見るな。引き込まれるぞ」
フェルトさんに叱られました。呪い系って、見たら呪うぞ~みたいなの多いですよね。
あの白いスカートの髪がだらんとした、きっと来る系の映画とかを思い出しました。
ふむむ……捕縛か。ようは犯人だから捕まえておきたいのよね。でもあんなロープみたいな形状では足が動けば立ち上がって逃げちゃうよね。もうどこかに閉じ込めちゃえばいいのよ。
でも…目の届かない所だと自殺しちゃわない?そうか、だったら透明で結界みたいなのがいいわね。自殺しそうならすぐに気絶させちゃう系の魔法も結界内に設置しておいてね。
魔法が発動します。隣のフェルトさんからも神力が流れてくるのを感じます。
出来る!よしっ!
「いでよっ!クリスタル・イーーリュージョンッ!」
次はヴェル君の番外編です。




