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魔将軍のご主人様になりました  作者: 浦 かすみ


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魔将軍と偽魔将軍3

登場人物がゴチャゴチャしてきました





「はい~ぃ、注目~ぅ!」


 私の声に会議場内に居たオジサン達が、一斉にこちらを向きました。


 座ってホッコリしているオジサン達に付き合っていたら、日が暮れてしまいますからねっ。ガンガン仕切りますよっ!


「ガンドレアの偽将軍ですが、本物のヴェル君に近い背格好の軍人様が使われていると思われます」


 あ、しまった。いつもの癖でヴェル君って言ってしまった、まぁいいか。


「因みに、顔の部分には幻視の術が使われていると思われます。はいっ再度注目~こちらのテーブルの上を見ていて下さいませ~そ~れっ!」


 私は魔術式を素早く組み立てるとテーブルの上を見つめました。ポワ~ッと光が膨らみます。そしてテーブルの上にはお皿の上に乗った、某ドーナツショップのドーナツ!チョコが半分かかってる、コレとリングのコレの抹茶味好きだったなぁ、もう一回食べたい。


「成功です~はい!これがドーナツです……って違った、幻視の術です!」


 オジサマ達はおおお!と感動の声を上げています。


「このように、一度見て記憶しているモノを幻として再現することが出来ます。但し、魔力量をすごく消費しますので長時間使うには不向きです」


 私は一度、閣下クラスのオジサマ達を見回しました。なるほどね。


「今、このように幻とはいえここに存在していますが、ではこれが魔術で出来たものだと、はっきり分かる方は挙手して下さいませ」


 フィリー殿下を筆頭にパラパラと手が挙がります。コラッ!ヴェル君、あなたは挙げなくていいんですうぅ!


「と、いうことで、もうお分かりかと思いますが、将軍位の皆様の中でお手が挙がっていたのは、パッテジェンガ閣下のみということになります」


 髭の閣下様や、その横に居る熊のオジサン達が気まずそうにしておられます。


「一言付け加えますと、見えないのが悪いことではないのです。魔術の扱いより武術の扱いが優れた方が、軍属になられておられるのですから、寧ろ当たり前のことなのです」


 パッテジェンガ閣下が面白そうに頷かれています。


「しかし、今回はそれが仇になっているのも事実です。魔術の見極めに不向きな方々が前線に出ますし、そこで幻視の術を纏わせた魔将軍を見ても、偽物だとは気付かない。気づかれたとしても他の方々から、あれは本物だ!と言われてしまったら、その意見を飲んでしまいます。そうして虚像の魔将軍は、数年前から暗躍し続けてきたと思われます」


 一旦、水魔法で口の中を潤わせてから話し始めます。


「そしてこの幻視の術ですが、かなり至近距離にいないと対象物に幻視を掛けられません。よって魔将軍の傍には常に、魔術士がついているはずです。閣下方及び、よく前線に赴かれる歴々の方に思い出して頂きたいのです。毎回術士が付いて来ているはずです。どのような方かご記憶ないですか?」


「カデちゃん、術士の風貌は今、重要なことか?」


「魔術使用量が半端ない魔法なのです。ヴェル君には実感湧かないかもしれませんが、普通の術者なら三十分出し続けていたら、魔力切れを起こします。戦闘中最低でも人目に触れる間中、ヴェル君を模せるなんて相当の術者です」


ヴェル君は私の導きたい答えに気が付いたようです。目が大きく見開かれます。


「ん~その術者とは、あれじゃないかな?第一魔術師団長のロブロバリント公爵だろう?」


「!」


 私とヴェル君が応答える前に、そう言い放ったルーイドリヒト王太子殿下を向かってにじり寄りました。


「お、おい?何だ?二人して」


「お義兄様はどうして名前までご存じなのですかっ!?」


「どうしてって……私だって王太子だぞぅ!ガンドレアに訪問くらいはしたことある。その時、魔術師団長だって紹介されたしなっ。それで私だって前線に出る、お歴々の方だぞぅ!彼の公爵が前線に居ることは気づいているぅ!」


「そうで御座いますか」


 そうだった……普段、蒟蒻と腹黒に擬態しているから気が付かなかったけど、王太子殿下は意外にも魔術も剣技も将軍クラスにお強いのでした。


 私はヴェル君と二人、気の抜けたようにテーブルに戻って椅子に座り直しました。その間にも前線に出ている方々からロブロバリント公爵様の情報が次々出されています


「あの栗色の髪の細身で神経質そうな男かな?」


「三十代くらいかな」


「そういえば毎回いるな」


「ヴェル君……今まで確信の持てなかったことが今、はっきりと形を持って見えてきている気がしますね」


 ヴェル君は焦点の合っていないような目で、私を見て来ました。ロブロバリント公爵様はヴェル君にとっても、信用の置ける方だったのではないでしょうか。


 こんな茫然としているヴェル君初めてですね。恐らく、オリアナ様を害していると言っても、今一つ実感が湧いてなかったのでしょう。


「母上をグーデリアンス先生が害していると聞いても、今一つ信じ切れてなかった。現実感がない?とか…まさかな?という感じで。でも今、戦場で俺を模す為に、先生が居ることが分かって、自分にも何かゆっくりと近づいて来ているというか」


「はい、オリアナ様の魔石事件は、やはり自分の体内に起こっている症状ではないので、ヴェル君としても実感しづらいのは当然です」


「体内の魔石ですって?」


 あ、しまった。ここにはフィリー殿下や閣下達がいらっしゃったのだった。フィリー殿下まだご自分の席に戻っていらっしゃらなかったのね、おまけに鋭い目をして擬態王太子がこちらを見ているし、正面に座っているこれまた睨んだだけで射殺しそうなパッテジェンガ閣下が、こちらを見つめてくる。


 ああ、まさに前門の虎、後門の狼だわ。


 その時、ヴェル君がポンポンと私の手を軽く叩いてからスクッと立ち上がった。


「私の母が患っている病がありまして、こちらのカデリーナ様に治療をお願いしているのです」


 ガンドレアでヴェル君が自身にかけた魔術から今、オリアナ様に起こっている魔石による魔力放出の事まで包み隠さず話し、最後にこう付け加えた。


「私としましては、エーマントへ赴き真実を確かめたいと思います」


「ヴェルヘイム殿にとっては、母上の知己の方の悪行を、まざまざと見せられることになるかもしれませんぞ?」


 パッテジェンガ閣下が低音の良いお声でそう聞かれました。


「ラブランカ王女殿下の時は逃げ出してしまいました。今度は逃げたくないのです」


 そう答えたヴェル君をパッテジェンガ閣下が優しそうな顔でみつめています。


「魔人にも臆さず挑まれる方が人間は恐ろしいと見えるな。いやそうか、人間が一番恐ろしいのかもな。よし、では私も一緒に参ろうかな?」


 おおっ!どうされたの?イケオジのパッテジェンガ閣下?


「迷える若者の背中を守ってやるのも、先達の役目だろう?逃げ出さないように見ていてやるから、見極めて来い!」


 ひゃぁ~カッコいい!ロアモンド様に続き、今日はイケオジ様祭の日でしょうか?祭り会場は王宮でしょうか?いい日に来たなぁ~私っ!ワッショイ!ワッショイ!


「よしっでは本日二刻後にエーマントにパッテジェンガ閣下率いる第一騎士団と第一魔術師団が帯同、よいなフィリペ!王宮奥の転移門前に各自集合だ!散会っ!」


 王太子殿下の声に皆様の号令が挙がってなんだかテンション上がりますよね!


 わぁ~転移門使うのぉ~私、初めてなんですよね!この転移門の使用料は一般料金は結構高いので、何か移動する場合はついケチって、自分で行ける範囲まで転移を繰り返しています。


 セコイデスケド元姫ですよ?問題ありますか?


 そして意気揚々と転移門まで付いて行った私はヴェル君に一言、言われました。


「何やってる?カデちゃんは留守番だろ?」


 ちょっとっっ!聞いてないよっ!




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