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魔将軍のご主人様になりました  作者: 浦 かすみ


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魔将軍と偽魔将軍2

改行に修正ばかりして申し訳ありません。





「ダメです、絶対ダメです!」


「カデちゃん」


 私はヴェル君の前に回り込むと、ルーイドリヒト王太子殿下をキリッと睨みつけました。


 うちのヴェル君を、あんな熊みたいなごついオジサン達の中に放り込むなんて、主人としては許可出来ませんよ!


 だって、以前ユタカンテ商会の商談でお城を訪れた際に、通りかかった鍛錬場にいた軍人の方々、皆みーんな熊みたいなごっつい殿方ばかりでしたものっ!


 それでなくともヴェル君は魔将軍と言われ恐れられている身、きっと軍法会議なんていうのに引っ張り出されたら、イヤミを言われたり暴言を吐かれたり、意地悪されるに決まっていますっ!


「それほど言うなら、カデリーナも一緒に来い」


「殿下っ部外者を……」


 声を上げかけたロアモンド様を手で制すると、王太子殿下はニヤ~ッと私に笑いかけました。


「カデリーナはいざとなれば、どこでも付いてくるのだろう?」


 そうですよ!何か悪いですか?ヴェル君のご主人様ですからね!


 私はまだ戸惑い顔のヴェル君の後ろに控えながら、軍法会議が行なわれている第一会議場に乗り込んで行きました。


「王太子殿下入られます!」


 扉の前に居た近衛の方の声に、室内が静まり返ります。


 一呼吸置いて王太子殿下が中へ入られると、私達も後に続きました。一旦静まりかけたざわめきが、またぶり返します。


「静粛に」


 王太子殿下の一言でまた静かになりました。


 はあぁぁ……緊張しますね。ヴェル君をチラリと見ましたが、顔色はいつもと一緒です。


「今日、集まってもらったのは他でもない、先週から騒がれているガンドレア帝国のエーマント地方への、干渉に関しての案件だ」


 王太子殿下は一呼吸置かれました。普段は蒟蒻みたいに掴み所の無い方ですが流石、公の場でしっかりしていらっしゃいますね。


「ガンドレア軍には魔将軍、ヴェルヘイム=デッケルハイン将軍が行軍しているとの情報があった。しかし我々が急ぎ、確認した所……偽者と判明した!」


 ザワザワ……会議場内が凄いざわめきです。


「馬鹿なっで、殿下!私は間近で魔将軍と対峙したことがあります!小山程ありそうな大男で、体は筋骨隆々。今、エーマント地方に現れたヤツに間違いありません!」


 そう叫んだ熊……もとい茶髪の口髭の軍人様が、ふとこちらを見てヴェル君に気がついた。


「なっ?えっ!」


 王太子殿下はニヤリと笑った。


「本物はコイツだ。ちなみに卿と対峙した魔将軍も偽者だ。三年前、本物の魔将軍はグーロデンデの森に出没した魔人二体の討伐に行き、帰って来たのは1年後だ。更に一年半年前にユゥーフィの沿岸部でパッテジェンガ閣下が見た魔将軍も偽者だ。本物は魔術凝りで意識不明の重体、将軍職を罷免されていたことが、我国の諜報の報告で確認済だ」


 ロマンスグレーの軍人、あの方がパッテジェンガ将軍閣下でしょうか。今まで黙って聞いておられましたが、挙手しながら僭越ながら……と話し始められました。


「魔術凝りで将軍職を罷免とは、些か考えにくい理由ですな。本来、魔術凝りはかかれば重症化する病ではありますが病が目視検査で発見されやすく、例え重症化していたとて、ガンドレア帝国の医術で、しかも魔将軍という立場のお方が罷免される程重症に陥るとは考えにくい。何か他に罷免の理由がありますのかな?」


 私は緊張の余りに、握り締めていたスカートに気づいてそっと皺を伸ばした。


 やっぱり、軍人の偉い方って鋭いわね。王太子殿下はチラリとヴェル君を見た。


「デッケルハイン侯、酷な事だがご自身で語られた方が良いと思う。話して頂けるだろうか」


 ヴェル君は細く息を吐くとゆっくりと立ち上がりました。


 頑張ってヴェル君!


「僭越ながら……私がこの場合、本物と呼称させて頂きますが、本物のヴェルヘイム=デッケルハインです。ガンドレア帝国元第二将軍職に就いておりました。罷免の理由をお話する前に一つ補足説明を述べさせて頂きます」


 ヴェル君は一呼吸置いて、ぐるりと会議場内を見回しました。


 やっぱりヴェル君、語り部みたいにお話上手ですね!


「先程、私の前歴をお伝えした折に、第二将軍とわざわざ付けさせて頂いたのには訳があります。実はガンドレア帝国では第一将軍は近衛の大将閣下の呼称で、第三将軍が対人間戦専門の将軍となります」


 パッテジェンガ閣下が、うむ……と唸られました。ヴェル君は一つ頷かれました。


「私が所属していたのは第二部隊、魔獣害獣討伐専門でした。よって私が相対していたのは、十二歳で入隊してからずっと魔の眷属と害獣のみでした。閣下方にお会いするのは今日が初めてです」


 一段とざわめきが大きくなります。


「ご静粛に!」


 内務省の方でしょうか?声を張られてますが、なかなか静まりません。そんな中鮮やかな短めのブロンド髪をかきあげながらほっそりとしたローブを纏った青年が挙手されました。


 ああ!?あの麗しのお姿の方はぁぁ!


「フィリペラント、申してみよ」


 やっぱりぃ!皆のアイドル、フィリー殿下ですよっキャー!やっぱり可愛い!熊のオジサン達に隠れて私の方から居るの気が付かなったわ。


「確かに今、こちらにいらっしゃる魔将軍殿は私が戦場でお会いした魔将軍より魔力が段違いに多い。私はあれが魔将軍だと言われてはいましたが…どうも噂ばかりが先走って実際は大したことは無いな、といつも思っていたのですが」


 あら……想像していたよりかなり毒舌な方ですね。


 いつも、リヴァイス殿下と遊んでいる時しか会わないからかな?今日は流石に雰囲気が違いますものね。


 ジッと見つめているとフィリー殿下と目が合いました。すると小首を傾げて天使の微笑みを向けてくださいました。


 やめてぇーー!目がっ目がっ!(〇スカごっこ再び)


「今日こちらにいらっしゃる魔将軍は正直、僕は恐ろしい。まだ魔力を抑えていらっしゃいますよね?きっと本気を出されたら、僕は手も足も出せない」


 会議場内が水を打ったように静かになりました。


「フィリペラント殿下、それは間違いありませんか?」


 茶髪の髭閣下?が聞かれました。するとフィリー殿下はコテンと首を傾げてから


「カデリーナにも証言して貰ったら?」


 と、仰られました。


 仰られてしまいましたよ?!こんな緊迫した瞬間に大注目ですよぉ。ひええっっ……


「カデリーナ申してみよ」


 王太子殿下に、促されてしまいましたので、仕方なくヨロヨロと立ち上がりました。


「ご紹介に与りました、カデリーナ=ロアストと申します」


 私がそう自己紹介をした所、エヘンコホンとか不自然な咳をしながら、目配せをする腹黒様と目が合いました。


「え~と、今はロアストと名乗っておりますがぁ」


 そう言いながらチラッと腹黒様を見ると満足そうに頷いておりました。


 そりゃあ私の元身分があれば、この場での発言力も上がりますがぁ……はぁぁ。


「王位継承権を放棄は致しておりますが、シュテイントハラル神聖国第二王女、カデリーナ=ロクナ=シュテイントハラルと申します」


 またもざわつきが凄いです。静粛に!の、お声が何度もかかります。少し喧噪が収まり出したので私は話の続きを始めました。


「今回証言をするにあたり私が放棄した名前を持ちだしたのは、私がガンドレアとカステカートどちらの益を含まない中立の立場から、事実のみをお話する意思があることお伝えするためです」


 よし、出だしは上手くいった。


「こちらにお集まりの歴々の方々ならば、わが神聖国の王族に受け継がれし、癒しの力のことはご存知の事と存じ上げます。その力をもって、こちらにいらっしゃるヴェルヘイム様を視せていただきました」


 おぉ~とどよめきが上がります。フィリー殿下がすごく前のめりです。


「カデリーナ元姫、どのように彼は視えたのですか?」


 フィリー殿下も気になりますよね~ヴェル君は少し怯えて見えますね。


 大丈夫ヴェル君!思わずサムズアップをしそうになりました。危ない……


「潜在魔力量は私が知りうる限りの術士の中で一番です。治療系の魔術以外は、苦手なものはないのではないでしょうか?魔術の色彩波形も初めて見る美しい色です。ここまでの術士はお見かけしたことはありません。もし魔将軍と呼ばれる方が、術士としても武人としても超越した強さの持ち主だと言われるのならば、私は自信を持ってこのヴェルヘイム=デッケルハイン様がそうであるとご証明致します」


 またも水を打ったような静けさです。 


「と、言う訳だ。デッケルハイン候、続きを」


 はぁぁ……緊張した。うまい具合に王太子殿下が繋いでくれました。横をチラッと見るとヴェル君が少しだけ微笑んでくれました。よしよしぃ!


「お恥ずかしながら魔の眷属や害獣の討伐に忙しく、私の与り知らぬところで他国との戦場に自分が本当(・・)に戦場に出ているとは露も思わず、体格の似た方と自分を見間違えて勝手に恐れているのだろうと、気にしておりませんでした。そして私が十八才で将軍職に就こうという時に……」


 ヴェル君、苦い薬飲んでる時みたいな顔してますね~余程嫌なのねぇ。


「十八才で将軍位とは異例ではないかね?」


 パッテジェンガ閣下が目を細められた。ヴェル君はもっと苦々しい顔をしています。


「正直、第二部隊とは殉職者がもっとも多いのです。ガンドレアはグーロデンデの森に隣接しており魔獣の被害が毎年凄まじい、しかし部隊に人員は割かれない。常に人手不足で少人数で国中を飛び回っておりました。将軍位もなり手がいないから仕方なくです。皆、殉職していなくなりますので」


 ヴェル君の話に軍部のオジサマ達は、重い溜息をつかれています。


「酷いな」


「ガンドレアは平民や軍人の扱いが悪いとは聞いていたがね」


「とにかく、討伐ばかりで世情に疎いところへ、魔人討伐から帰ってきて見れば遠くからしかお会いしたことのない、ましてや会話などしたことのない年上の姫との臣籍降嫁の話を薦められました」


 ヴェル君の臣籍降嫁の話に、今度は文官っぽいオジサマ達がテーブルの端の方でコソコソ話しておられます。


「ガンドレアの王女殿下ってどなたでしたかな?」


「ホラ、先だってコスデスタ公国の第二公子と」


「ああ、大分婚期が……ああその方か……そういえば……」


「確かフィリペラント殿下も、随分年がね……向こうから強引にだとか?」


 うわ~~皆様小声とはいえ、すごいな。


 ヴェル君はフィリー殿下を熱い目で見つめています。同じ言い寄られた者同士、熱いシンパシーを感じているに違いありません。


「私は六才も目上であらせられるのに無断で公所に婚姻書を出し、あまつさえ夜這いをかけたりそして当家の使用人を買収し、婚姻しろと意識朦朧としている私に冷水を掛ける女性とは絶対に婚姻したくありませんでした。断り続けて病に伏してしまい、それでも断っていたら罷免されていました。罷免の理由は病でしょうけど、王女殿下の事も影響していると思います」


 お労しやっヴェル君っ!その当時に出会っていましたら、お救いしましたのにぃぃ!


 しかしヴェル君ってばリアル冷や水を本当にぶっかけられていたなんて、私は心の中だけでとはいえ、なんだかごめんなさいです。


「怖いな」


 ポツンとパッテジェンガ閣下が呟かれました。


 コホン…とルーイドリヒト王太子殿下の咳払いが聞こえて、一同が殿下に注視されました。


「因みに、公所に無断で提出した婚姻書はこちらで確認出来ただけで十四回あった。そのうち四回は署名がヴェルヘイム本人のものでは無いとして、受理前に無効になっている。残り三回が受理はされたが、ヴェルヘイム本人の嘆願により無効に。後の六回が巡回中の第二部隊の兵士によって回収。回収の際に王女が暴れて負傷者が出ている。そして残り一回が受理されたままになっていたので、私が独断と偏見で嘆願しておいた。公所も慣れているだろうから、近日中に無効化の申請書が届くだろう。王女も二重婚姻は不味かろうと思うので、ヴェルヘイムは届き次第早急に署名してくれ」


 会議場内は別の意味で静けさに包まれてます。熊みたいなオジサマ達がプルプル震えておられます。私だってあまりの恐ろしさに怖気がとまりませんよ。


 流れるように説明されたルーイドリヒト王太子殿下に、ヴェル君は深々と頭を下げると涼しげな顔で答えました。


「ご配慮感謝致します。早急に署名に参らせて頂きます」


 いや~ラブランカ王女殿下ってすごいですね。あまり偏見は持ちたくはありませんが年上のお姉様に妄執されるなんてどんなホラーより怖いし、辛いですね。


 怖気に震えている私とヴェル君のところへ、走り込むようにフィリペラント殿下が現れました。


「ヴェルヘイム殿、あ、あなたも被害に遭われておいででしたか。しかもあんな鬼畜な所業、心中お察しします」


 泣きそうになってますよ、フィリー殿下。ラブランカ王女殿下とのお見合いで一体何があったの?聞きたいけど、超絶怖い。


「僕なんか……八才も年下なのにまだ十五才だったのに……女性からあんな強烈な……ひ、卑猥な言葉を浴びせ掛けられたの人生で初めてでした、恐ろしかった」


 ひやぁぁぁ!?それアカン!完全にアカン!異世界日本じゃ即アウト案件ではないですかぁ!


 SNSとかで若い子を誑かすオバハンとして身バレさせられて、さらし者になるレベルじゃないですかぁ!もちろんヴェル君のも犯罪級どころか、完全アウト案件ですけど。


 ヴェル君とフィリー殿下は熱い握手を交わしておられます。


「俺は乗り越えて無事生きています!」


「よくぞ耐えましたね!デッケルハイン候!」


 男の子同士の慰めあいがしばらく続いています。周りのオジサマ達もなんだかホッコリしています。王太子殿下までヴェル君達の傍に来て、肩を組み合ってたりしちゃってます。


 ○クール・ウォーズ?泣きだしてませんか?私はつい挙手してしまいました。


「ん?どうしたカデリーナ元姫」


「今……フト思ったのですが、結局エーマントの件どうなったのでしたっけ?」


 王太子殿下以下オジサマ達が動きを止めてしまわれました。盛り上がる気持ちは分かりますけど~地元の人が困ってますよ~






いつ、エーマント助けに行くんだよ!byカデリーナ

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