3.意思の疎通は難しい(1)
私はスーパーのレジ袋の中からメロンパンを取り出した。
嘴で半透明のナイロンを開く。
すると、途端に香りが広がった。
これは、パン屋の焼きたてパン!
香りが違う。
ふぅんわぁと空いたナイロンから漂う香ばしさに顔が緩む。
そして、まだほんのりと温かい。
これは絶対に美味しいに違いない。
私は嘴で挟んだ。
が……メロンパンは大きかった。
食いちぎれ、ない。
そうか。
鳥って、歯がないのか。
パンを絨毯の上に落とすと、足で押さえて嘴をメロンパンの中央にザクッと突き刺した。
そして首をぶんっと持ち上げると、サクッとちぎれるメロンパン。
パンの中のふんわり柔らかな部分が綿菓子のように後を引いて嘴から垂れている。
ふんふんふん。
もったいぶるようにして顎を上げパンを喉の奥へと送り込む。
うむ、うむ。
美味。
美味堪能する私の姿を彼は真剣な眼差しでスマホに保存していた。
バカな奴。
私は彼に背を向ける。
「ペン佐保ー、こっち向いてくれよー」
知らんわ。
メロンパンをちぎって、あーん。
美味い。美味いよ、このパン。
「うーっ、後ろ姿も可愛すぎるっ。尻尾が、うぅっ」
一人で呻いている、気色の悪い奴。
だが、このパンを買ってきたことは評価してやろう。
サービスに尻尾をちょちょいと振ってやると、彼は歓声を漏らした。
チョロい奴だ。
食べながら、この部屋は整いすぎてると思った。
イケメンだが、このマニアックな趣味のために寂しい生活を送っているのかもしれない。
「ペン佐保ー」
このセンスだし。
無視して私はメロンパンを完食。
さて、次は何にしようかと再びスーパーのレジ袋へと舞い戻る。
床に散らばったパンカスは放置。
ペンギンは掃除しないのだ。
次はと目に付いたのは、ポッキー。
チョコの付いた細い棒状のアレである。
よっしゃー。
と、箱を床に払い落とすと。
「それは駄目だっ」
慌てて彼がポッキーの箱を取り上げてしまった。
膝立ち状態とはいえ、ペンギンな私から見れば、彼は結構な大きさだ。
ポッキーの箱を持った男に見下ろされるのは、気分がよろしくない。
「ゥアッ、アアッ」
ひるまず威嚇で対抗する。
ポッキーを返せ!
「これは駄目だ。お菓子は色んな身体に悪い物が含まれてるから、ペン佐保の寿命が縮んでしまうんだよ?」
待て待て。
寿命ってお前。私がいつまでこの姿だと思ってるんだ?
何とかいう機械を直そうとしてるんじゃないの?
こいつ、この可愛すぎる姿に、惑わされたのではなかろうな?
私は目の前の人物に不審感を抱いた。




