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ぺんぎん・らいふ  作者: 朝野りょう
ぺんぎん・らいふ+(プラス)

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6.みんなでお茶を(8)

「米田さんは、あの男の子のせいでペンギン、疑似体っていうの?、その姿にされたのよね?」

 

 茫然とした様子の八坂さんが、つまりながらもペンギン姿の私に話しかけてきた。

 おお。あの状況を見てそう判断するとは鋭い!

 あんな宇宙人達の会話を聞いてよくわかったなぁ。

 役に立たない黒沢にもめげず、この現実を把握しようとするなんて前向きだ。

 

「うん、そう」

 

 そう私は自信満々で答えたのだが。

 そうだったか?

 あれ?

 

「違うよ。佐保はあいつの疑似体に同調させられると思って、俺の疑似体に同調したんだ」

「え? 前みたいに、あいつが何かしたせいじゃないの?」

「あいつは自分の疑似体に同調しろって言っただけだよ。だから、佐保がこの姿に同調したのを見て驚いてたんじゃないか」

 

 そうなのか?

 だが、同調したいと言った覚えもなければ、指輪が反応した感じもしなかった。

 自分で同調したとは思えないのだが。

 少年が何かをしたわけではないらしい。

 少年、ごめん。

 

 私は解除ができないだけだと思っていたが、そもそも同調することがよくわかっていないらしい。

 

「えーっと、そういうことらしいよ、八坂さん」

 

 私はへらへらと笑って八坂さんに伝えたのだが。

 そういうことってどういうことなんだ、私!

 黒沢だけでなく、私も説明が下手だと判明した。

 となれば、八坂さんの読解力に賭けるしかあるまい。

 

「わかったわ。米田さんは無理やりその姿にさせられてるわけじゃないのね? 元に戻れないわけじゃないのね?」

 

 無理やり? 元に戻れない?

 ああ、私の事を心配してくれてたんだ。

 八坂さん、いい人だな。

 同調解除は自分ではできないのだが、それは言わなくてもいいだろう。

 彼女の前でキタミの元に消えた時にも黒沢に突っかかってくれたのだった。いい人だ。

 

 こんな人が、黒沢に関わったばかりに意味不明な現場に遭遇することになるとは。

 いい人というのは、貧乏くじを引くものなのかもしれない。

 

「無理やりじゃないよ。心配してくれてありがとう」

「どういたしまして。じゃ、食べましょうか。この悪魔チョコ・ケーキは、黒沢くんの奢りなんでしょう?」

「そうだ。さ、食べてくれ、お嬢様方」

 

 黒沢が機嫌よく促した。

 悩んでいたのは八坂さんだけで、調子のいいことだ。

 黒沢のフレンドは断って正解!

 

 さて、私も食べるとするか……。

 ん? どうやって?

 

 目の前に置かれた皿の上で黒く艶光る悪魔チョコ・ケーキが、私を呼んでいる。

 キタミの部屋ならば、ガツッと食らいついただろう。

 だが、ここは喫茶店である。

 目の前には八坂さん。

 

 ガツガツ嘴で食い散らかすのは、絶対に嫌だ。

 私はケーキを睨んだ。

 なぜペンギンには指がないんだと詮無いことを思いながら。

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