3.世間の話題にのれません(6)
キタミと別れて自分の教室に入ると、そこではUFOの話題が飛び交っていた。
「おはよう、米田さん」
杉野さんが声をかけてきた。
朝はいつもテンションが低い杉野さんが、どうしたのだろう。
めずらしい。
「おはよう、杉野さん」
「ねえねえ、UFOの話、聞いた?」
「ああ、うん。テレビは見てなくて、お母さんから聞いただけだけど」
「そっか。土曜日は友達と出かけるって言ってたんだっけ」
「そうそう。北見くんと海に行ったんだぁ」
ちょっと自慢?
いや自慢にはならないように、さらっと言ってみただけ。
キタミは友達だ。
だが男子だ!
宇宙人でも男子だ!
たまには自慢させてくれよー。
だが。
「海!? じゃ、UFO現場にいたの? ね、見た? 見た? アナウンサーも?」
残念ながらキタミのことは完全スルー。
いや、食いついて欲しいの、そこじゃないから。
「海にいたけど、別に何もなかったよ。アナウンサーも海じゃなくて、店の方にいたんじゃないの? カメラなんていなかったし」
「ロワン・ホテルのプールサイドから撮ってるっぽかったかな。でも、海側だったから撮影してたの海からも見えたと思うよ」
ロワン・ホテルはキタミと泊まった場所だ。
にへらっと顔が緩む。
「ロワン・ホテルにも行ったけど、カメラなんて気がつかなかったよ」
ちょっと、言ってみました。
ホテル行ったんだよー。
ステーキも美味しかったよー。
ヘラヘラ顔が笑ってしまう、が。
「やっぱり海には何もなかったのかぁ。一昨日、テレビ見てたんだけど、アナウンサーの騒ぎっぷりがすごかったよ。カメラが空ばっかり映してね、」
いや、だから違うんだよ。
そこどーでもいいから!
キタミとホテル行ったの、聞いてー。ねえ聞いてー。
聞いてくれよーー。
しかし杉野さんは興奮気味に一昨日のテレビのことを語った。
母から聞いた話とさして変わらない情報を熱を込めて。
そして私の話は忘れ去られ、完全にスルーという悲しい結果に終わった。
キタミが絡んだ話になると、大抵の場合はこういう結果に終わるのだが。
少しぐらいは大人な体験談を語ってみたかった。
フレンド・パークの住民の話なんぞ、どーでもいいのだよ。
空には未確認飛行物体の一つや二つ浮いていても、全然おかしくないのだ。
宇宙人はその辺をウロウロしているのだから。
杉野さんの話に他のクラスメイトも加わり、話は大いに盛り上がっていたのだが、私だけが取り残された朝トークとなった。




