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ぺんぎん・らいふ  作者: 朝野りょう
ぺんぎん・らいふ+(プラス)
47/318

2.可愛すぎるのも大変です(4)

 カラス達を見送り、方向を確認した私は岸に向かって泳ぎ始めた。

 小さなペンギン姿のわたしにとって、岸はとても遠く感じる。

 だが、帰らねばならない。

 

 私はばしゃばしゃと足で水をかいた。

 ペンギンになって初めての泳ぎだ。

 私自身、泳ぐのは嫌いではない。

 だが、当然のことながらペンギンとは泳ぎ方は全然違うわけで。

 泳げず水没という事態は避けたかった。

 だから暑い夏でもない今、海に入ることは全く考えておらず、ペンギン姿で泳ぐことは想定外だったのだが。

 

 さすがはペンギンだった。泳ぎやすい。

 一かきが、凄い。

 足が、ではない。この羽が、だ。

 

 小さな空を飛ぶこともできないこの羽の威力が、凄い。

 ペンギンはフィンの付いた足で進むのかと思っていたが、誤っていたらしい。

 足よりも羽の方が面になってるので水をとらえやすく、非常に効果的に水を押すことができるのだ。

 ペンギンの羽が役に立たないと思ってたなんて、猛省だ。

 

 泳ぎなれてくると、水面での波や空気の抵抗がかなりスピードを殺してしまう事に気づいた。

 なので私は息を止め、水中へ身を潜らせることにした。

 

 細い頭から続く丸く細長い胴体は、水の流れに逆らわない。

 はじめは足で。

 そして羽のかきで、ぐんとスピードを増す。

 ぐん、ぐんっと水が流れていく。

 海中では景色がかわらないが、水の流れを体感すれば早さが増していることはわかる。

 私は面白いように水中を泳いだ。

 

 だが、息継ぎが必要なので水面には顔を出さなければならない。

 水面に浮上しては岸を確認し、また潜る。

 

 それを繰り返すうちに、私はどんどん泳ぐことに慣れていった。

 だが、疲れて腕も足も重くなってくる。苦しい。

 遠いと思っていた岸が近づいてくることだけに意識を集中させる。

 私は気力を振り絞る。

 あと少しなんだ!

 

「佐保――、佐保――――っ」

 

 私を呼ぶキタミの声をとらえた。

 もう、そこに岸があるのだ。

 力が抜けそうになる。

 私は息を溜めて水中に潜ると、一気に加速した。

 

 水の透明度はよろしくないため、あまり遠くまでは見えなかったが、水中にキタミの身体を発見した。

 私の所まで泳いで助けに来るつもりだったのだろうか。

 岸で待っていればいいのに。

 少し前の恐怖も忘れて、そう思った。

 

 私はキタミの元へとラストスパートをかけた。

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