11.ぺんぎん・らいふ(3)
さて、忘れずにいられたらと思ったわけだが、問題はその期間だった。
一週間覚えていればもう忘れないのか。
一カ月とか、一年なのか。
しかし、そうそう長くは待っていられない。
できれば友情を培いたいと思っている。
高校を卒業してしまえば、同じクラスでもない彼との縁はスッパリ切れてしまうのは間違いない。
だから、今年中に何とかする必要があるのだ。
確か、春休みが終わったら皆忘れてたと言ってたから、春休みの日数分覚えていればOKにしてはどうだろう。
十日ほど。
いや、それはすごく短すぎて、かなり不安だ。
十一日目に忘れると困るから、余裕を見て二週間にしよう。
そう決定した私は、彼に会う時に話しかける言葉に頭を悩ませることになった。
一緒に過ごしたとはいってもお喋りして親しくなった訳ではない。
そして、残念ながら、私は彼氏がいたことも異性の友人がいたこともない女子である。
私に男子と気軽に話せるスキルは、ない。
あの状況だったら話せたとは思うが、すっかり他人の今、自分からイケメンな彼に話しかけられる気がしない。
私は、忘れる忘れない以前に、くじけそうになった。
だが。
やらねばならない時はある。
私は二週間後を来て欲しいような来て欲しくないような複雑な気持ちでじりじりと待った。
そうしてとうとうやってきてしまった十四日後の放課後。
私は緊張しながら三年四組の教室へ向かった。
手には、リボンをつけたポッキーの箱を持って。
彼が一緒にいたいと望んだのは、喋らないペンギンの佐保であって、今の米田佐保ではない。
きっと喋らないペンギンに理想の友達を思い描いていただろうと思う。
あれだけ何度も忘れた私が会いにいっても、彼は喜ばないかもしれない。
さまざまな理由をつけて、会いに行くのを止めようかと何度も思った。
今だって引き返したいのは山々だ。
それでも私は足を前に出す。
足を止めたら、次はもっと難しくなる。だから。
進んだ廊下の先では、三年四組の教室の戸は開いていた。
そこから、何人もの生徒が出ていく。
彼はと見ると、こちらに背を向けて鞄に荷物を詰めているところだった。
私が近づいても気づかない。
ドキドキする。
足が震える。
あと少し。
さあ、と息を吸い込んだ。
「北見祐くんっ、先日は大変お世話になりましたっ」
一気に言い切り、私は彼の後ろでポッキーを差し出した。
お願いしますのポーズ。
声は少し大きすぎたかもしれない。
帰る支度をしている生徒達の視線を集めた。
恥ずかしくて顔は上げられない。
しかし、恐ろしく緊張している私に、彼からは何の反応も返ってこなかった。
差し出したポッキーの寂しいことといったら。
受け取ってはもらえないのか。
やっぱり来なければよかったのか。
恥ずかしさとか恥ずかしさとか恥ずかしさとか居たたまれなさが、堪らない。
どうしよう。
そう思った時、彼の手が私の背中に触れた。
「佐保」
彼の制服が目の前にあった。
ペンギンの姿で見た時にも大きいなと思ったが、やっぱり大きいなと思った。




