11.ぺんぎん・らいふ(4)
『ちゃっちゃっちゃちゃっ、はい!
右腕上げて―、左手は腰にっ、右、左、右っ』
右っ左っ右っ
私はリズムに合わせて腰を振る。
『ちゃっちゃっちゃちゃっ、
左腕上げて―、右手は腰で、左、右、左!』
左っ右っ左っ
目の前の台に置かれた画面で踊るのに合わせて腰を振る。
右っ左っ右っ
左っ右っ左っ
『最後に決めるよーーっ、ちゃっちゃっちゃちゃっ、
はい、ポーズ!』
右っ左っ右っ、左っ右っ左っ、ジャーン。
私は腕に力を入れ、斜め角度のマッスルポーズでラストを飾った。
「佐保――――、そのポーズは可愛くないぞー」
「ゥアア」
ほっといて。
私はそう返事をした。
私は今、彼の部屋で『リズムでダンス』という映像を見ているところだ。
それに合わせてダンスをしていた。
彼の作ったペンギンの姿で。
この姿で過ごすのは視界も動きも違ってとても面白い。
翻訳機を付ければこの姿でも言葉が喋れるのだが、運動する時は邪魔なので外している。
翻訳機を付けて欲しい時やペンギンから元に戻る時の合図は決めているから、全く問題はない。
家の主である彼はといえば、部屋で寝転がり私にスマホのレンズを向けている。
相変わらず、私のペンギン姿の動画を取ることに熱心だ。
いったいどれだけ撮ったら気が済むのだろうと呆れてしまう。
ポッキーもって会いに行った結果、まあ、つまりこういうことになった。
私が今後も彼を忘れないという保証はないし、彼は人間の米田佐保とは気が合わないかもしれない。
それでも、はじめることにした。
まずは親しくなることから。
私は小さな台に近づいた。
私専用のテーブルだ。
最後の夜に届いた宅急便の箱の中に入っていたものの一つ。
これを使えば、ペンギンの姿でも楽に立ち上がれるのだ。
私はその上にあるタブレットの動画を止めた。
私のテーブルにペンギン姿でも簡単に使えるようにセットされている。
横にはルームランナーもある。
この部屋には私の場所が用意されていた。
もちろんペンギンの私用だけではない。
人間の私のためのクッションもスリッパもお菓子もある。
綺麗な部屋に、雑多なものが増えていく。
彼は嬉しそうに笑って、動画や写真の編集に余念がない。
私が気に入っていた空間がここにある。
私は彼の方に振り向くと、じゃーんと決めポーズをしてやった。
彼の好きなバージョンで。
私にはサービス業が向いているかもしれない。
「佐保―――、メッチャかわいいっ」
そうだろう。そうだろうとも。
―END―
最後までお読みくださり誠にありがとうございました。m(_ _)m




