表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぺんぎん・らいふ  作者: 朝野りょう
ぺんぎん・らいふ
21/318

6.学校へ行こう(3)

「管理局が調整しているから佐保は学校に行かなくても学校に通っている事になってる。でも、佐保は授業を受けないと、勉強が遅れてしまうだろ?」

 

 管理局とやらが、私がペンギンの間は社会的(?)にフォローしてくれているらしい。

 でも、私の頭の中は、お勉強したことにはしてくれない、と。

 それもそうだなと納得もするけど、簡単に頭が良くなる方法とか授業が頭に入る手段とかを講じてくれてもいいんだよと思ったりした。

 

 学校へ行けると喜んだものの、勉強という言葉が耳に入った途端、行きたくなくなるから不思議だ。

 

 受験も控えているのだから、授業を休むのはよくない。

 今日だけと言うならまだしも、明日もどうなるのかわからないのだから。

 それはわかっているのだが。

 勉強……受験……。

 はあ、学校へ、行こう。

 

 

 そうと決まれば。

 

 私はてってってっと小走りで廊下に向かった。

 そして廊下のスライドドアを開ける。

 目的はクローゼットにある鏡だ。

 

 そこに映っていたのは、黄色いポンチョにフードからのぞく小さな顔。

 ポンチョはちらっと尻尾の見える丈で、下から黄色い足が出ている。

 その姿は、足のついた黄色い雪だるまでしかなかった。

 

 むっ。

 これで、学校?

 

「似合うよ、佐保」

 

 姿見に映る鏡越しに後ろから笑顔を向けてくる彼。

 似合う?

 雪だるまになっている姿が?

 その言葉はお世辞ではないようだった。

 彼の満足そうな笑みを見ればわかる。

 自分の選択に満足しているのだ。

 

 この黄色いポンチョ。

 首元にのぞく黄色い蝶ネクタイ。

 彼が選んだものなのだろう。

 

 ペンギンのこの姿も彼が作ったと言ってたので、彼は黄色という色自体が好みなのだと思われる。

 だが、彼のセンスは、標準的に考えると微妙と言わざるを得ない。

 

 制服に着替えた彼はイケメンであるだけに羨ましいほどの姿だった。

 対する私は……。

 

 ガックリと項垂れる。

 これなら鏡を見なかった方がよかったかもしれない。

 

 鏡の前で私がどんよりと消沈しているというのに。

 

「これを着てれば、誰にも佐保が見えないも同然になる。だから、これを着て、一緒に学校へ行こう」

 

 彼の声はどことなく弾んでいた。

 嬉しいのを抑えている。

 そんな感じだ。

 

 私が学校へ行くのが嬉しい?

 お気に入りのペンギンだから?

 

 一緒に学校へ行こう。

 

 嬉しそうだなと思った。

 私としては助かっているがペンギン相手に独り言をつぶやき続けている男が、すごくすっごく嬉しそうだった。

 それは、とてもいいことのように思えた。

 

 私はこくこくと首を縦に振り、肯定を伝えた。

 学校へ行こう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誤字などありましたらぜひ拍手ボタンでお知らせくださいませ。m(_ _)m
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ