↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぺんぎん・らいふ  作者: 朝野りょう
ぺんぎん・らいふ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/318

6.学校へ行こう(2)

 いつまでも私をじっと見ているので、彼に声をかけてみた。

 

「ゥア」

 

 食べれば?と。

 これくらいは理解してくれてもいいだろう。

 

「どうした? 先に牛乳を飲むか?」

 

 うむ。それは飲みたい。

 ブリオッシュを置いて、彼の側へと歩み寄る。

 ローテーブルは短い足でも歩きやすい。

 ただ、床と違って私の一歩ごとにデンッと鈍い音がする。

 この身体は思ったより重い。

 その重さを耳で実感するのも、ちょっと悲しい。

 寝起きのせいなのか軽快さも欠ける。

 

 デンッ、デンッ

 音も自分の機嫌のように不貞腐れているように聞こえた。

 しかし。

 

「ほんっとに可愛いなぁ、佐保は」

 

 彼は肘をついて溜め息を漏らしそうなほどの顔で私を見ていた。

 昨日から思っていたのだが。

 

 彼は語彙が少ない。

 ひたすら、可愛い、ばかりだ。

 もう少し何とか違う表現をしてみようとは思わないのだろうか。

 こう同じ”可愛い”ばかりでは、聞き飽きてしまう。

 

 可愛い?、はいはい。

 こんな反応にもなろうというものだ。

 彼の言葉は聞き流し。

 

 さあ、牛乳飲むか。

 私は彼に向ってパカッと口を開けた。

 

「佐保―――っ」

 

 喜んでないで牛乳を頂戴よ。

 パクパクする。

 催促である。

 ついでに尻尾も動いた。

 

「ううっ、尻尾がメチャかわいい」

 

 彼を無視して私は牛乳の入った容器を嘴で咥えた。

 ひょいと首を持ち上げると、ぐびぐびと喉へ牛乳が流し込まれていく。

 なんだ、簡単じゃないか。

 

「えらいぞ、佐保!」

 

 彼は私が高校生だということを完全に忘れているらしい。

 昨日からそうだったのだから今さらではあるが。

 牛乳を飲む時も、ローテーブルを歩く時も、ブリオッシュを堪能する間も、彼は何度も可愛いを繰り返していた。

 

 早く食べれば?

 

 

 

 朝食を終えると彼は朝の支度をはじめた。

 顔を洗って歯を磨いている。

 開け放たれたドアの向こう、洗面所からそんな音が聞こえる。

 

 制服に着替えて彼は学校へいく。

 そして、私はここに残されるんだろう。

 

 ぽてぽて

 

 私は部屋の中を歩いた。

 

 学校には行けない。

 ペンギンだしな。

 ダークな気分になりそうなので、歩いて気分の解消をはかる。

 

 ぼんやりと部屋を歩いていると彼が奇妙なものを持って現れた。

 小さな黄色いポンチョと、昨日見た黄色い蝶ネクタイ。

 

「さ、学校へ行こうな」

 

 学校へ?

 

 私が驚いている間に、彼は私の首に蝶ネクタイを付け、黄色いポンチョを被せた。

 

「ゥアッ、ゥアッ」

 

 学校へ行くってどういうこと?

 ペンギンだし、マズイよね?

 

「このネクタイとコートを着てれば、他の人には佐保は見えない。だから、大丈夫だよ」

 

 この黄色いのが?

 これ、相当に目立つ色だと思う。

 警告色だよね?

 もうちょっと普通の色がよかった、かな。

 そんなことを思いながらも、学校へ行けることが嬉しかった。

 嫌いじゃないけど、学校へ行きたいなんて思ったことは、なかったのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誤字などありましたらぜひ拍手ボタンでお知らせくださいませ。m(_ _)m
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。