6.学校へ行こう(1)
朝から奇声を上げてしまった私は、彼にペコペコと頭を下げていた。
あんな奇声を耳元で上げられてしまってはゆっくり寝てられるはずがない。
私の奇声に彼は跳び起きた。
「どうしたっ、佐保!」
怒るどころか朝から心配してくれるとは。
反省につぐ反省である。
ペコペコペコペコ、申し訳ない。
「驚いた、のか。そうか。そうだよな。……ごめんな、佐保。戻してやれなくて」
こんな顔もするのかと驚いた。
どこか悲しそうな、苦そうな表情だった。
最初はこんなじゃなかったと思う。
家に連れてきたけれど、自分が悪いと思っている風ではなかった。
彼の鞄に触った私に余計なことをしてと怒っているのではないか。
口には出さなかったが、そういう態度にも見えた。
自分に非はない、不幸な事故だったのだと。
他人には隙を見せないようにしていたのだろうか。
そして、一緒に過ごした時間で、少しは私に心を許すようになったということなのだろうか。
イケメン男子と同じベッドで目覚めるというマンガな世界の朝を迎えた、私のドキドキは、全く彼には理解されていなかった。
ペンギンだったから奇声を上げたわけではない。
ありえないマンガなシチュエーションを生アップで遭遇したからだった。
これは高校生女子として、普通の反応だと思う。
大声で奇声をあげるのではなく、きゃっ、くらい可愛い反応でないと不味いのだと知った。
この経験は、実際に『はじめて彼氏とお泊り』が実現する時には必ず役に立つに違いない。
いい経験と言えるだろう。
そんな時が来るかどうかは別として。
彼は起きると、朝食にパンと昨日の半透明な容器に牛乳を用意してくれた。
ローテーブルにはメロンパンにブリオッシュ、チョココロネ、くるみパンが並べられた。
「好きな物を食べていいぞ」
彼は柔らかな笑顔を浮かべている。
私の姿が可愛いからなのだろうが、そういう顔に見つめられ続けるのはムズムズする。
私はパンに目を落した。
全部食べてしまいたいところだが、おそらくこのパンは彼と私の朝食になるのだろうから、割合的に言えば私は一つ、彼が三つという配分が妥当だろう。
私はブリオッシュを嘴で摘んだ。
デンッデンッデンッ
私はパンを咥えたままローテーブルの端へと移動。
このパンだけで、他のはいらないよというアピールだったのだが。
例のごとく通じてはいない。
彼は私をじっと見ているだけ。
早く食べれば?
彼は誤解しているようだが、私は食い意地が張っているわけでは、ない。




