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ぺんぎん・らいふ  作者: 朝野りょう
ぺんぎん・らいふ

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5.夜が更けてきてすることは(4)

 目を閉じた私は羽毛布団の中で眠るための態勢を整えようとして、疑問を抱いた。

 この体型で人のように眠るのは、まずないだろう。

 横になると起き上がるにはかなりな労力を要するのは体験済みだ。

 では、ペンギンは普段どうやって寝ているのか。

 

 自分の脳裏に、吹雪の中をおしくらまんじゅう状態でペンギン同士が固まって夜を過ごす映像が蘇る。

 つまり、立って寝ているということだ。

 自然界でそうならば、それが一番眠りやすい態勢に違いない。

 

 よーし。

 私は立ったまま、ふわふわ羽根布団に身体を寄せて目を閉じた。

 

 

 ゴンッ、ズルッ

 

 痛い。

 せっかく眠っていたのに、固い木のベッドヘッドで頭を打ってしまったらしい。

 身体の上に首を縮めて乗せていたはずの頭が、でろーんと身体とベッドヘッドの間に垂れていた。

 

 せっかくぐっすりと眠っていたのに。

 

 直立で寝るのは慣れてないのだから、失敗するのは仕方がない。

 私はショボショボする目で頭を引き起こし、ベッドヘッドとの間を縮める。

 頭もやや前側へと倒した位置にキープ。

 これで落ちないだろう。

 

 

 ゴンッ

 

 おかしい。

 対策はしたはずだが。

 眠いので深く考える気力はない。

 

 私はぐるっと反転し、ベッドヘッドに背を向けた。

 彼の机の灯りがあるのでやや眩しいが眠りを妨げるほどではない。

 再び眠りへと落ちる。

 

 

 むにゃむにゃ

 

 ばふっ

 

 痛みはないが、衝撃は眠りを覚ますには十分だった。

 今度は前に倒れてしまっていた。

 

 直立で寝るのは無理らしい。

 倒れた私はふわふわ羽毛に乗っかった状態で、腹ばいで寝転んでいる。

 これなら倒れることも何かにぶつけることもない。

 起き上がれないが、それは後で考えればいい。

 ウトウトしながらそう結論を出した。

 

 すると。

 

「佐保は寝像が悪いな」

 

 近くでクスクスと笑う声が聞こえる。

 ギシッとベッドが揺れた。

 

「だから言ったろ? 俺と一緒に寝ればいいって」

 

 羽毛布団にくるまれた状態で、身体が宙に浮く。

 ぷらん、ぷらん、と足が揺れる短い距離の空中遊泳の後、ふぁさっと降ろされた。

 

「落ちないようにしといてやるから。お休み、佐保」

 

 耳元で小さく彼が囁いた。

 そして頭をそうっと、本当にそうっと撫でる。

 

「ゥアァ」

 

 お休みと返事を返したら、息だけで笑っていた。

 お休みくらいは通じただろうか。

 

 

 

 翌朝、私は超アップでイケメン男子の寝顔を拝んでしまい、朝から盛大な叫び声をあげることとなった。

 

「ウアアアアアアァァァッ」

 

 自分がペンギンになっていたことを思い出すまでには、さらに時間を要したのだった。


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