表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぺんぎん・らいふ  作者: 朝野りょう
ぺんぎん・らいふ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/318

4.彼の家にお泊りするらしい(3)

 食事を用意してくれた彼に向って吐きだすとは、とても許されざる行為だと思う。

 しかし、今の私はそれどころではなかった。

 

 生臭いっ。

 生臭すぎるのだよ、口が!

 

 ローテーブルの上のグラスを見つけ、がばっと顔を突っ込んだ。

 嘴を少し開き、頭をゆすって麦茶で口を洗う。

 ジャバジャバジャバッ

 

 ひとしきり洗って満足すると、私は首をあげた。

 彼は呆然とした顔で私を見ていた。

 

 うむ。

 申し訳ない。

 

「ゥアアアッ」

 

 私は彼に向って頭を下げた。

 彼のTシャツの胸元には魚のためについた汚れがべったりと残されていた。

 その魚は、姿が見えない。彼の足か絨毯に落ちてしまったのだろう。

 いや、本当に申し訳ない。

 ごめんなさい。

 

「ゥアァ」

 

 何度も頭を下げていると。

 

「魚、嫌いだったのか」

 

 彼がぽつりと漏らした。

 

「ごめんな、気がつかなくて。魚じゃなくてメロンパンとポッキーを選ぶくらいだから、わかるべきだったな」

 

 まあ、そうだよね。

 私もそう思う。

 ペンギンの本能を期待してはいけない。

 うん、うん。

 

「じゃ、生の魚はやめような」

 

 すまないな。

 客に対しての心配り、有難く頂戴する。

 

 うん、うん、と彼に頷いて見せた私は、ニョッと彼の前にある焼肉弁当の方へと首を伸ばして口を開けた。

 自ら、あーん、である。

 さっきの反省はどこにいったのかという行動ではあるが。

 

 焼肉弁当が、本当に美味しそうだったのだ。

 妙なものを出されて失敗するよりも、確実に美味しく食べられるだろう物を示すことも必要だと思うわけで。

 

 言葉が通じないなら行動で示す。

 これ基本。

 

「そっか。焼肉弁当なら食えそうか。じゃ、これ半分こしような?」

 

 はじめてスムーズに意思疎通できた気がする。

 うんうんと頷きながら、嘴を焼肉に近付けた。

 ご飯より、肉がいいな。

 なんて素直な私。

 

 彼は大きめの肉を私のくちばしに置いてくれた。

 頭を上げてごっくんと飲み込む。

 

 焼肉のたれの味と油の甘味がたまらなーい。

 うーっ、満足!

 夕飯はやっぱりこうでなくちゃ。

 

 思わずジタバタ羽を動かして味を堪能していると。

 

「そんなに旨かったか? よかったな」

 

 彼は嬉しそうな顔で私を見ていた。

 顔は嬉しそうなのに、少しだけ寂しそうにも感じた。

 

 一人で呟いて、一人でペンギンの相手をしている。

 テレビも何もなく、電話で友達と喋っている様子もなかった。

 他に誰もいない家。

 彼はいつも一人で食事をしているんだろうか。

 寂しいなと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誤字などありましたらぜひ拍手ボタンでお知らせくださいませ。m(_ _)m
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ