8.夏休みがやってきた(5)
私は絶好調のテスト結果とともに夏休みへと突入することになった。
クラスの友達とも何度かは会う約束をして。
だが、受験という雰囲気がどことなく夏休みを浮かれた気分にしてくれない。
私は、キタミとほぼ毎日のように一緒に勉強するんだとこぼしてみた。
杉野さんに聞こえるよう、はっきり口にしたのに。
「あ、そうなんだ。夏期講習行かないんだ。私はね」
華麗なるスルーを食らった。
夏期講習の方が重要な話題。そうさ、受験生だからな。
さすがキタミの影響力は凄まじい。
一応、キタミが私の友達だという認識はあるらしいので、キタミが透明人間になってるわけではない。
不思議だなと思う。
去年は私もそうだったのに、わからないものだ。
わかってくれそうな八坂さんはというと。
クラスが別だし、ピリピリしているのでプチ自慢に付き合ってもらえる雰囲気ではない。
黒沢が夏休み前にと他校生から突撃告られた話を耳にもした。
黒沢、ああ黒沢よ……大丈夫なのか?
そんな調子で私は終業式を終えた。
夏休みの最初の月曜日からキタミの家に通うことになったのだが、困ったのは服。
いつもは制服だし、たまに土曜とか日曜にキタミの家にお邪魔して一緒に食事をする時には少ない中から選んでいた。
頻度が違うので、少なくてもやりくりできていたのだ。
だが、夏休みは長い。
連続してキタミに会うのに同じ服というのは、ちょっと情けなく。
「お母様、大事な相談があります」
「何よ、改まって。気色悪いわね。お金ならないわよ」
母、察しの良いことで。
お金ではなく服を買ってほしいのだが、それも同じことか。
バイトをすればお金は手に入る。
しかし、受験生なのだ。
勉強するためにキタミの家にいく、そのための服を買うためにバイトする。
それは本末転倒というやつだろう。
しかし、このクローゼットの状況では一週間もつかどうか。
「平日は友達と一緒に勉強しに行くんだけど。これじゃ、いつも同じ服になっちゃうから……」
「そうねぇ。私が買ってきてあげるっていうのを断るから。高校に入って服があまり増えてないんでしょ? 一緒に買いにいく? 二千円までなら買ってあげるわよ」
「に……二千円……」
ショボいです、母。
母行きつけの激安ショップ巡りか。
確かに百円、二百円でも掘り出し物があるにはあるのだが、かなりな労力を必要とする上、発見できないことも多い。
だが、背に腹は変えられない。
「お願いいたします」




