“夏の虫 参”
“……Jさん、それなら何故あっさり還したんすか、ここで産廃にしてマスターに解析してもらうとか”
“ヤツには本拠地につながりそうな場所を教えて貰う”
“……どういうことっすか?”
“マスター、可能だよな?”
“あとは勝手にそこのモニタでもつけてくれ”
例の。奥のほうからマスターと思われる野太い声が返事をした。
“ぉい、ど、どうやるんだ、これ;”
“俺がやります”
動いたのはNさんだった。僕が見ただけではまったく判らないモニタの電源を彼は容易く入れてみせた。
“ぉおお……っ”
“ぁああ……っ”
緑色の淡い光が点滅していた、と思ったのも束の間……それはスグに点灯に変わる。
“マスタ、これは”
“……点滅が行動可能、点灯は不可能状態”
つまり。
“さっそく産廃か”
“……のようっす、ね”
“けど、どうやって場所特定できたのさ?”
“あの1体に予めマスターに頼んでおいたただの発信機着けただけだ”
“い、いつのまに……”
“よく読まれなかったな……嫁には騙されたのに”
“ぉい;……もうその話からは離れてくれ;”
そのとき、Nさんが思いついたかのように話し出した。
“ぇ、つまり、空世相手に思考を読まれなかったってことっすよね?”
“うむ”
“発信機に関してのマスターとのやり取りは、もしか暗号?……おそろしく古い、初期のころに出回ったものを使ってってこと?”
“ま、まぁそんなところだ”
“ぇえ?だとしてもさ、”
“なんだ?”
“だとしても、取り付ける際や目的地に着いた時点で空世なら発信機なんて除去出来るんじゃないの?”
“それはマスターに訊いてくれ、俺はこの先に突っ込む場所さえ判りゃどうでもいい”
“ま、マスター!!”
“企業秘密だ。教えるか”
本当に残念そうなNさんの表情……のわりに、この程度で諦めていないとでも云いた気な瞳が……とても印象的だった。向上心や好奇心って、大事だよね。
そして。相変わらず僕には暗号だの発信機だのの類いを受け付ける記憶の余裕、なんてものは……なかったけどね。
“Jさん、スグにでも突っ込むんすか?”
“いや。このまま突っ込んでも俺らが夏の虫になってしまうからな……何か対策をたてないと”
“ですよねぇ……このままじゃ勝率もほぼ0%だわ”
ほぼ0%?それって、僅かではあるだろうけれど微かな見込みがあるって意味だろうか……?
“やられっぱなしじゃな、俺の気がおさまらん”
“ぇ。やられっぱなしって、思いっきり騙されたのJさんだけだし、ついでに今の戦闘はJさん独りで片付けたから……なぁ?”
“ですね……結果的にあまり俺らなにも被害ないし、精々寝ていないくらい?”
“私とキミは眠りましたよねぇ”
“はぃ、特になにもないですね”
“ぇ?なになに、ってことは奴らの狙いっていうか目的はJさんなんじゃないの?”
“ぉいぉい、俺だけ弾くなよ;特殊な何かがあるわけじゃあるまいし”
“ぇ。特殊っていやぁ特殊だよな?”
“うんうん、マスターと知り合いって時点でもうね”
“そうそう、元嫁が空世ってところもね。何か目つけられるようなことしたんじゃないの?……当人に自覚があるかどうかは別としてさ”
……無自覚のうちに何かやってしったことになるって、生きてりゃ何かしらあるよな。ヒトに好みがあるように、思考も受け止め方も様ざまあるわけだしさ。
“まぁそれはおいて。なにか良い方法ないか?”
“……こういうの、どうでしょう?”
後ほど訂正ありでございます。




