“距離感”
“距離感”
当然、堕とされたのだから……出口からも堕ちるわけで?
“ぁ。”
僕は、Jさんをことわりもなくクッションにしてしまった。足で着地するのになんなく反応できたのだけれど……それは秘密;
“い、今、降ります;すみません”
“そのままでも構わないのに、お前が無事ならそれでいい”
“……逆じゃなくて良かったな、つぶされてたぞ;”
先に到着していたNTさんが手を差し出してくれる。そのままその手を掴んだ僕を引き起こしてくれた。
“ありがとうございます”
“J氏は自分で起きられるっしょ”
“ぉい、俺のほうがダメージでかいんだぞ”
“Jさん、受身得意でしょ……ね、いろいろと、さ”
そうNさんに返されながら床から身体を引き剥がし、Jさんはひとりで起き上がろうとしたそこへ、御手洗くんがちょこんと乗った。その姿が……なんか、可愛い。滅多に何かや誰かをそうは思わない僕なのだけれど、ね;……心がないわけではなく、興味がない。たぶん。
『皆さま無事到着されたようで何よりでございます……中には途中ではぐれてしまうかたも稀にいらっしゃいますので安心しました』
え?!
“え。”
“み、御手洗くん;今さら何をおっしゃいますか”
“まぁまぁ、皆無事だたことですし、よしとしようじゃありませんか、ねぇ”
“ぁ。僕、マスターに、”
“ここにいるよ、好き勝手にやってくんな”
いつもの奥のほうから野太い声が返ってきた。良かった。声を聞くまで疑っていたというわけではないけれど、マスター……本当に無事だったんだ、、、って。部屋の中もあれだけ散々にやられたのに見事に修復されている。マスターって、一体何者?空世と関係があったりするのか?それとも……あの、おっ……おじさまと?……Jさんは何か知っているのかもしれない。ま、まぁいいか。
“ところで、御手洗くん。”
『はい、なんでしょう?』
“Jさんに訊いても応えないとおもうからキミに訊くけど、彼と何を話していたの?”
『といいますと、ここに来ることになる前のことでしょうか?』
“そう、それ!”
『はぃ、それはですね、』
“ぉい、約束忘れていないよな?御手洗くん、ん?”
稀にみる、あの顔つき。Jさん、誰かに訊かれるとよほどの拙いことがあるらしい反応だ。
“おっと、その顔はかなり……”
『はい、婚活について説明なり案内書なりを、とのことでした』
“ま、まじで?”
“まじか……止めたほうがいいんじゃない?KKさん、止めてよ”
“…………”
“そうじ、始めちゃったみたいで……。大まかな修復は済んでいるようですが、ゴミやら土やら破片などの散乱まではまだところどころ残っているようで”
“相変わらずだな、”
いつものことをいつも通りにできるって、良いことだよね。なんだかんだ平凡が1番だと思う。
“御手洗、ちょっと来い”
『YES,BOSS』
“……ついに呼び捨てだわ”
“ないわ、ないない”
“……わかっているよな?”
『YES,BOSS』
“ぁ。そうだ、御手洗くん、これ、返すよ”
僕はズボンのポケットにずっとしまったままの、あの時Jさんが投げてよこした〔くすねた石〕を御手洗くんにこっそり渡した。
『これは……あなたがお持ちください、石がそう云っております』
え。……最後の、石が~を皆に聞こえないように、こっそりと耳打ちしてきた。どういうことだろう……?ただ、Jさんが不信な顔をしていたのを僕は見逃さなかった。




