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“忘却の輪肆”

“忘却の輪肆”


結局。何もつかめないままではあるがKKさんのとある作業は一通り終えたので、ここにこのまま居る必然性もなくなった。ただ皆で歩いているだけというのも怪しい集団に見えなくもないため、〔見回り〕をしている風を装いながら……結局は井戸端会議とさして変わらないまま目的もなく皆でどこかからの帰り道であるかのようにぞろぞろ歩き出す。僕はといえば、時間感覚のおかしくなる館になんとなく後ろ髪をひかれるというような感覚だろうか。そんな喩え、今までに遣ったことなんてなかったけれど、ま、まぁ、そんな心境だった。

“……僕、ちょっと連絡とってみます、皆さん、歩いていてください。すぐ追いつきますから”

“ぇえっ?別にいいよ、この辺で座っているし、やることもなくただ歩きながら話しているだけだからさ”

“そそ。親と同居なんでしょ?早く連絡したって”

“はぃ、”

応えながら、上着の内ポケットから携帯を取り出す。壊れていなければ……つなが、、、らなかった。2つほどボタンを押すだけだから結果なんてすぐ判る。……尤も壊れているからなのか、電波の関係なのか僕には判断が難しく、ただ電源が入りボタンは押せた。番号の変わりに、妄想癖人という文字が画面に表示され発信はされたようだがそこで途切れてしまった。2度同じ操作を繰り返してはみたが変わらず。

“繋がらない?”

Nさんに訊かれ、ぇえ、という言葉の変わりに頷きと苦笑いで応えた。

“俺の使ってみ?”

“ぇ、いや、大丈夫です、”

“いいから、使ってみって。そんで何か状況が判るかも知れんじゃん、なんかキミんとこ犬の件とかで普通じゃないつか、特別っぽそうだし?俺は携帯が特別のだし”

“ぇえっ……そん、な、特別な携帯なんて僕、使えません。機械には不向きで”

彼の差し出した携帯は、とても僕の携帯というモノの発想力からかけ離れた形というか機種で変わらないのは大きさくらいなものだった。

“ナンバー云ってみ、入力して発信までして渡すからさ”

云われるままに自分の携帯を操作して妄想癖人のナンバーを表示させ、告げる。そのままにNさんは打ち込み発信したようだ。

“……ぁ、ダメだな、こりゃ。発信したと同時に切れる……壊れているわけじゃなく、繋げないよう操作されてっぽぃ”

“は、はぁ……そ、そうなんですか”

“俺のいろいろ仕掛けがあってさ、何がまではわからないけれど状態くらいならわかるようにしてあるんよ”

そう云って、大きさだけは携帯と思われるモノの裏蓋を開け、中のこれまた到底僕には理解できない配線やらなにやら、そう、前に妄想癖人が壊れた機械を分解したときに見た……否、強制的に見せられた、あんな感じで面倒くさそうな線がいくつも並んでいる。とても蓋が閉まっていたとは思えない気がするほどに。

“あの、なんでそんな、趣味なんですか?”

“趣味じゃないけど、興味があった”

Nさんはそういって、にやっと軽く歯をみせた。……そ、そうですか。妄想癖人は判らなくなるとやりっぱなしで投げ出すそれは困り者だけれど、そうじゃないってことか。個人の価値観によって意識レベルの違いが生じてトレードオフというか個人生産上の二律背反……って。今はそこじゃなく!これから何をどうすりゃいいんだよ。あ。家に帰ればいいのか;

“ちょっと集まってくれ”

御手洗くんと何やら話しこんでいたJさんが……元からあまりバラけていない皆に声をかける。

“い、いや、集まるも何も、なぁ”

“ちょっと気分を味わいたくて云っただけだろ”

“まぁそういわずに聞きましょう、お茶がありませんがねぇ”

自販機が……見あたらない。都会ほどないのか、田舎ほどないのか?

“眠くなってきたんで目の醒めるやつを頼む”

“はっはっは。これからのことだが、俺らは警察でも政府でもないのでこのままマスターのところまで戻ろうと思うんだが”

“ぇ?今まで御手洗くんと話していた結果がそれ?”

“あそこなら眠れるし俺はいいけど”

どこでおつかいを間違えたんだろう……;なにこの罰ゲームのような話の進みかたって。尤もマスターのところまで戻れば自宅も(たぶん)近いし、

“そこまで送ってくれるそうだから、といっても、一瞬で帰れるらしぃ;”

“ど、どういうこと?”

“な、なにそのオカルト。瞬間移動ってやつ?”

『……平たく云うとそう、、そんなところでございます。次元の穴を繋ぎます』

“ど、どうやって?”

『こ、こうやって、で……ございます、ふぅ……どうぞ。1分しか持ちません、いそいで』

御手洗くんは空間に手先を突っ込んで点から穴へと拡大というより;こじ開け、その中に両腕を突っ込んで更にこじ開けた。なにを開けていたのかは僕には判らない。僕からみれば、ただ空間で握り締めた両拳の手の甲側を合わせ、そこに小さな穴があり指先で指全体が入るほどまで引き伸ばすかのような仕草をした。そして、ぐにゃぐにゃに見えた穴の中にいつぞやに見た石を入れた途端、空洞が出来た。いわば固定させたかのようだった。御手洗くん自体が小さいため、僕らには地面に穴が開いたようにみえる。

“え、ここに、飛び込むの?”

“な、なんで横にしてくれなかったの”

“わ、私はこんな汚さそうなところ入りたくありません”

『皆さん、時間がありません』

“私は体系がこんなだから1番最後で、”

そう云ったOさんは、周りにいた皆を穴の中に押し込むように突き落とし、その後に自分が入った。

“Osa----------ん、なんてことxを”

“……Jさん、お先どうぞ”

“俺は責任者だから、お前が先に入れ”

“ぼ、僕の後から入るって、な、んかイヤなんで先に入ってください。”

なにされるか判ったもんじゃない;先の恨みもあるだろうし。どさくさに紛れて元嫁さんへの恨みも追加され僕で晴らす気かもしれない。

“ここで、先の続きをしても構わないですよ”

“な、おま、ここで何わけの判らんこと云っているんだ”

『時間がないと云っているでしょう。世話の焼ける2人ですね、本当に。日ごろのBOSSの行い、の賜でしょうか』

そう云った御手洗くんが僕ら2人を突き落としてくれたのは……書くまでもない。

世話の焼ける2人?ですか?Jさんはともかく、僕は関係ないでしょう!!

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