番外編1 王太子の溺愛は永遠に続く
結婚式から数日。
私は王城の自室で、書類と向き合っていた。
王太子妃教育とは別に、王城での仕事も少しずつ教えてもらっている。
今まで領地経営については、お父様とエド兄さまにお願いしていたので、私には初めてのことばかりだった。
覚えなくてはいけない言葉や領地、人の関係などたくさんある。
「・・・・・・思っていたより大変。」
思わずつぶやいた。
「シャルは頑張っているよ。」
後ろからふわっとアル様の香りに包まれた。
「無理はしないで。私の奥さん。」
いつの間にか後ろから抱きしめられている。
「お仕事中は恥ずかしいです。」
お茶を出しに来たミレーユやレオンもにこにこと微笑ましそうに見ている。
「仕事中じゃなければいいんだね。
じゃ、今日の仕事はもう終わりにしよう。」
そんなことを言い出すアル様。
まだ、仕事を終わるにしては早すぎる時間。
「もう、アル様ったら。アル様のお仕事は終わったのですか。」
「今日は、会議が早く終わってね。かわいい奥さんの顔を見に来たんだよ。」
私の頬に軽くキスをしながら言う。
「昼食の時間にお会いしたばかりじゃないですか。」
恥ずかしくなって、顔をそむけてしまう。
「ずっと一緒にいると約束したじゃないか。片時も離れずに。」
意地悪そうな顔になってそんなことを言う。
「仕事も大事です。」
まじめな顔をして諭すように言った。
「いつまでいちゃいちゃしているんですか。俺たちもいるんですよ。」
いつまでも終わらない話にレオンが割って入る。
「本当にお二人は仲がいいですね。私の理想のお二人です。」
ミレーユはレオンに一瞬視線を送り、うつむいた。
「早く役に立ちたいのに・・・」
私がそう言うと、アル様は一度離れて私の手を取る。
「君がいるだけで充分私の役に立っているんだよ。それを忘れないで。」
その声はとても優しい。
「それに。」
アル様はまた意地悪な顔になって笑った。
「結婚したばかりなのに、仕事ばかりでは寂しい。」
思わず顔が熱くなる。
「そ、それは……」
気が付くと、私たち二人だけになっていた。
アル様は私の肩を抱くと、そのまま窓の方へ連れていった。
窓の外には王都の街並みが広がっている。
夕焼けに染まり、とても綺麗だった。
「覚えている?」
アル様が静かに言う。
「ここからの景色。」
「あ……」
私はすぐに思い出した。
プロポーズされた、あの塔の景色だ。
「シャルにあの時言っただろう。」
アル様は私の手を少し強く握る。
「君と家族を作りたいと。」
胸が温かくなる。
「はい。」
「今、本当に幸せだ。」
その言葉に胸がいっぱいになる。
「私もです。」
アル様は少し照れたように笑った。
「昔は感情が薄いと言われていたのにね。」
そして私を見つめる。
「でも今は違う。」
「君がいるから。」
その真っ直ぐな視線に、思わず目を逸らしてしまう。
「シャル。」
優しく名前を呼ばれる。
「これからもずっと、私の隣にいてくれる?」
私はすぐにうなずいた。
「もちろんです。」
「私はアル様の妻ですから。」
そう言うと、アル様はとても嬉しそうに笑った。
「それは嬉しいな。」
そしてそっと私を抱き寄せる。
「もう絶対に離さない。」
その言葉は、あの夜と同じだった。
でも今は、不安ではなく、幸せで胸がいっぱいになる。
「私も離れません。」
私はアル様の胸に顔を寄せた。
王都の夕焼けが、二人を優しく照らしている。
「シャル。」
「はい?」
「今日の仕事はここまで。」
「え?」
「今日は私の妻を独占する日だ。誰にも邪魔はさせない。」
思わず笑ってしまう。
「毎日そう言っていませんか?」
「そうだったかな?」
アル様は少しだけ悪そうに笑った。
「でも、王太子の特権を使おう。」
「もう……」
私はくすっと笑う。
こうして今日もまた、アル様の溺愛に包まれる。
王太子妃としての人生は忙しいけれど。
それでも。
愛する人が隣にいるこの毎日は、とても幸せだった。
この先どんな日々が待っていても、きっと――
この人となら、大丈夫だと思えた。
アルとシャルのその後です
いつまでもお幸せに・・
あと1話投稿します。
次は、あの人です。




