暗い。明るい。
電話をする声が、雑多に聞こえてくる。
奥のガラス張りの会議室では、会社の役員たちが会議をしている。
よくある光景だ。
「今日も裁判所?」
「いや、今日は行かない。まじで奇跡的。」
「そう、じゃあ今日お昼一緒にいかない?」
「うーん、そうだね、行こう」
いつもは弁当、と言ってもコンビニで買ったいちごスペシャルだが、、、
なんだか今日はお昼を食べにいってもいいかなと思ってしまった。
話しかけてきた彼女は、池上さん、会社の同期でコーディネーターと呼ばれる仕事をしている。
主に、派遣社員を募集するために、バイタルやはたらけニャンコなどの求人情報サイトに求人を載せたり、仕事に応募してきた人の面接をしたりする仕事だ。
150センチくらいの身長で、いつもちょっぴり高めのヒールを履いている。
ヒールのサイズが合っていないのか、カカトのところにできている隙間がなんだか可愛らしい。
「ランチ行ってきます」
オフィス全体には聞こえないが、ちゃんと言ったよと言えるくらいの大きさの声で伝え、池上と外に出た。
「何食べる?」
「魚以外ならなんでも」
「うーん、じゃあハンバーグは?」
「うん、いいかも」
「じゃあハンバーグ!」
近くの居酒屋のランチにハンバーグ定食がある。
うまいらしい。
池上が熱弁している。
「あそこのハンバーグランチがすごいのは、本当にランチで食べさせるつもりがあるかわかんないくらいのサイズだってこと。食べたことある?」
「ない」
普段はいちごスペシャルしか食べないから。
「すみませーん!」
ドンッと背中に何か当たった。
「ん?」
震えが止まらない。
気持ち悪い。
嘔吐した。
気持ち悪い。
とにかく震えが止まらない。
気持ちわるい。
とにかく震える。
きもちわるい。
息が上がる。
嘔吐した。
黒い。黒い。黒い。
かなり遠くの方で池上が読んでいるような気がする。
霞んでよく見えないが、見たことのある中年の女性が見えるような気がする。
身体に温かさを感じる。
自分の身体が温かいような気がする。
暗い。明るい。




