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ダンジョン時代と人見知り  作者: 酉名酉丁
第二章 友達つくろう高校生活

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閑話:三国志的嫁

「暇ですね」

「暇だな」


 人気のないゴブリンダンジョン。にしても今日は一段と不人気。

 もうお昼だというのに冒険者は一人もやってこない。やってくる気配もない。


 他の受付嬢は昼休憩、飯島は一人受付にいる。冒険者が来た時のために必ず一人は受付にいないといけないので、今日のお昼は少し遅めになってしまう。

 そこにやってきた杉野は、理由もなく受付に留まる。非常事態のためにいる指導官は、通常時は暇なのだ。


 クールビューティーが仕事中にスマホを弄ったりするわけもなく、おもしろおじさんに至ってはスマホを持ってきていない。

 おもしれーおじさん。

 実はスマホ大好きな飯島は、そんな杉野を理解できない。


 とにかく、今は誰もスマホを弄らない。

 よって今できる暇つぶしは手元の書類を読むか、世間話でもするか。

 手元の書類は面白いものではない。

 クールビューティー的に、仕事中の世間話はアウト寄りのセーフ。

 この二択であれば答えは一つ。セーフには変わりないのでボールを投げる。


「杉野さんは元々冒険者だったんですよね? なんで冒険者辞めて指導官になったんですか?」


 指導官になれるほどの冒険者は、冒険者として活動していた方が儲かる。それに冒険者と指導官、両方とも続けるということだってできる。なのになぜ敢えて冒険者を引退したのかという質問。

 おっさんの過去にたいして興味はないが、世間話にはちょうどよかったので投げた。


「当時一緒にパーティを組んでいた妻が大怪我で引退することになってね。一緒に引退して欲しいと言われたから引退して比較的安全な指導官になったんだ。金に困ったら復帰して稼ぐさ」


 既婚者!?

 初めて知る事実に驚きを隠せない。

 口をOの字にして驚いた飯島。そこまで驚かれると思っていなかった杉野。



 女子は恋バナが好き。


「馴れ初めは? どんな方?」


 矢継ぎ早の飯島に困る杉野。

 ひとつひとつ答えていく。


「馴れ初めは、中層のモンスターに襲われてるところを助けた時かな」

「小説の始まりみたい!」


「どんな人か……心が少し不安定だけど良い女性だよ」

「写真とかないんですか。もっと説明してください」


 いちいち合いの手がうるさい。

 写真の有無を聞いて、そういえば杉野はスマホを持って来ていないのだと思い出す。だから今求めているのは奥さんに関する追加の説明だけである。


「あとは……そうだな、三国志的な嫁さんって感じかな。あ、これが写真」


 写真持ってた杉野。

 杉野が懐から取り出したポラロイド写真には、パンクファッションに身を包んだ目つきの鋭い女性が写っていた。


「カッコイイ系の美人さんですね」


 これが三国志的な美人かあ――そう納得しそうになったところ、少し引っかかりを覚えた。


「三国志的って……何?」

「彼女は『死ぬ時は同じ』が口癖なんだ」


 だから一緒に引退するように言ったんだ。

 飯島は納得した。これがパンク系美人かあ。



 男子も恋バナが好き。

 性別関係なく恋バナは好きなものなのだ。話題が自分に向かってこない限り。


「飯島さんは恋人いないの?」


 生まれてこの方、お付き合いの経験がない飯島。少し意地を張って答える。


「今はいないですね」


 嘘ではない。が、誤魔化しに行った。

 杉野はなんとなくこの話を終えることにした。


 惚れた腫れたは踏み込み過ぎると、切った張ったに転じてしまう。

 面白いけれど地雷原。

 引くときは引く。これが大事。ダンジョンも恋バナも。

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