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ダンジョン時代と人見知り  作者: 酉名酉丁
第二章 友達つくろう高校生活

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31話:予定がある日

 白と薄ピンクの服を着た蒼。可愛らしい洋服は、確実に動きにくい。ダンジョンに着ていく服装ではないことは分かる。

 ここ最近の週末は、毎回伽代と過ごしている。今日も同じ。

 しかし今までとはひと味違う。二人は大型ショッピングモールで気の向くままのお買い物。ダンジョンではないのだ。


 両親に話したら案の定反応が面倒くさかったが、その甲斐あってお小遣いが貰えた。前回のお小遣いとこれまでのダンジョンでの稼ぎも合わせて、今日の蒼は少しリッチである。


 年頃の女子が二人いて、買い物をするという。

 意味もなくアパレルショップを回って、やれこっちの方が可愛いやら、やれ値段が高くて買えないやらとするに決まっている。葛藤や悩み、そういった楽しい時間の共有にこそ価値がある。



 様々な店を眺めながら、ショッピングモールの中を練り歩く。

 購入どころか入店もしないで、冷やかしのように歩くだけでも十分楽しい。


 最初に寄ったのは本屋。自分の好きな小説を伽代に紹介しようと、蒼が引っ張って入った。

 あの作品は主人公が面白いだとか、あの作品は作者が不思議な人だとか、自分の知っている知識をとにかく喋ってしまう。

 伽代との会話に慣れた蒼の暴走。止めたのは一冊の本だった。


 蒼が両手で抱えて持ってきたその本は、『ゴブリン帝国千年記』。今年販売されたばかりの二十六巻。

 辞書かと思う分厚さの本に、伽代は少し頭が痛くなる。


 毎日何時間も読むのをおよそ一週間続け、ようやく物語内で1年ちょっとが経過した。

 受験勉強と同じような負荷がかかっていた気がする。


「電子版なら結構読んだよ。まだ主人公は建国してないけれど」


 軽く感想を伝えただけでも、蒼はとびきりの笑顔で喜ぶ。


「私のお気に入りの作品なんだ。気に入ってくれたら嬉しいな」


 読んでも読んでも進まない物語に、少しだけ頭を痛めた。しかし、今の蒼の笑顔で伽代には読破してやろうという気持ちが湧く。


 お気に入りの作品を共有したいのは伽代も同じ。

 本屋を出て、DVDショップでお気に入りの映画を紹介する。手に持っているのは『マリミアの子供たち』。伽代の大好きな映画だ。

 マリミアという国で圧政を敷く政府に対し、子供達が手を組んで国家転覆を計るという物語。


 伽代はそれを購入し、蒼に手渡した。

 どうしても見てほしいから。


 プレゼントを貰ったことに蒼は舞い上がっちゃってもう。

 お返しとばかりに、本屋へ戻って『ゴブリン帝国千年記』二十六巻を購入して渡した。

 25冊飛ばして二十六巻。部屋の本棚に負荷をかけることになるだろう。


 初版じゃないことを理由に申し訳なさそうにしている蒼だが、もっと他に考えることがあるはずだ。


 持ち運びに適したサイズ・重量ではない。貰った伽代も少し困り顔。



 伽代がコインロッカーに荷物を預け、散策再開。預けたといっても一冊の本だが。



 服やアクセサリーを眺める伽代と異なり、蒼はひたすらにフードコートを気にしている。

 こういった意識の違いが、乙女度バロメーターとなるのだ。


 あまりにも蒼がフードコートの方を気にしているので、伽代は『仕方ないなあ』と少し早めの昼食にすることを決めた。


「蒼ちゃんは食いしん坊なんだね」


 その一言が蒼を深く傷つけた。



 §



 食いしん坊。それがクールという言葉と交わることは、一般的にない。

 ギャップ萌えの一つとして存在するかもしれないクール系食いしん坊という属性。しかし蒼にとってそれはまさに水と油、ハブとマングース、ホワイトハウスとブラックフライデー。萌えないのである。


 だからクール系美少女を気取っている蒼に、伽代の「食いしん坊」という言葉は深く刺さった。

 それはもう深く深く刺さったが、蒼はそれで食事を制限するような人間ではなかった。なので行動は変わらない。



 蒼が気になっていたのは実はフードコートではない。そのフードコート内にある、とある店だった。


 二人は別れ、それぞれで昼食を購入することにした。


 ウッキウキで目当ての店の前にやってきた蒼は、はたと気づく。

 人見知りは店員さん相手にだって人見知りする。蒼だって当然人見知りする。

 人見知りしながら、飯を買わねばならない。


 大変そうに言ったが、やることはとってもイージー。購入したいものをあらかじめ決めて、相手に聞かれる前にすべて言ってやればいいのだ。そうすればそれはもはやコミュニケーションではない。人見知りなど恐れるに足らぬ。


 覚悟を決めていざ、ビビディバビディブー。


「ビーフインビーフサンドをひとつ。ドリンクのセットでコーラをください。ここで食べるので持ち帰りません。お金はあげます」


 1,100円を置いて、地蔵になる蒼。

 ただ注文しただけなのに手汗がびっしょり。


 少し挙動不審な少女が来たけれども、店員さんはマニュアル通りに対応する。

 そして置かれるビーフインビーフサンド。肉と肉の間に肉と肉を挟んだ狂気のメニュー。


 バーガーナイトセブンデイズ。海の向こうからやってきたそのファストフード店は、「毎晩バーガー食おうぜ」をキャッチコピーに、日本で暴れ回った。

 ビーフインビーフサンドを筆頭に、プレミアムゴールドロイヤルスーパーバーガー、フィッシュアンドチップスサンド、ローストビーフオンビーフなどのメニューを期間限定で販売して知名度を上げている。


 弟が美味しかったと言っていた、ビーフインビーフサンド。羨ましく思った蒼。

 今日、その店がフロアガイドに載っていて、食べることができると喜んだ。


 肉を携え席に戻る。伽代はまだ帰ってきていなかったようで、蒼は席で待つ。


 伽代の持つお盆の上はいっぱいだ。チキンカレーうどんカツカレーパン山盛り。それらをお盆に乗せて帰ってきた伽代。

 食いしん坊じゃんっ! 蒼はそう思ったが、口には出さない。


「カレーが好きなんだね」

「無性に食べたくなっちゃって」


 可愛くはにかむが、目の前には大量の食べ物。

 これがギャップ! 蒼は萌えた。


 蒼の買ってきたビーフインビーフサンドを見て、伽代が口を開く。


「それ私もこの前食べたよ」


 伽代が美味しかったと告げるので、蒼の期待感はMAX。


 両手を合わせていざ食べよう。

 食べようとはするものの、どこから食べればいいのか分からない。蒼がどうにか綺麗に食べようと工夫している時、伽代はすでにチキンカレーを食べ終えていた。


 ようやく蒼が攻略の道を見つけ出して食べ始めた時、伽代はすでにうどんを食べ終えていた。

 蒼の食べる速度が遅いということもあるが、伽代の食べる速度は異常に速かった。ちゃんと噛んでいるのか不安になるレベルだ。


 カツカレーも食べ終え、たくさんのパンも食べてしまった伽代は、苦戦しながら食べている蒼を眺めていた。


 伽代は席から立ち上がり、水を取りにいった。

 水を取りに行ったはずの伽代の手元には、なぜか五段アイスとアサイーボウルがあった。

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