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1.旅人サブリナ
サブリナは、知らない土地を訪れた際の立ち回りは心得ている。
例えば、慣習や文化を否定しないこと。そして肯定もしないこと。つまり、余所者として弁えて、深い事情には首を突っ込まないことが肝要だ。
彼女は、その土地にとって善い客人でいることを信条としている。そして今日まで実践してきた。それなのに。
サブリナはいま、村の現人神として祀られていた青年を連れ去り、逃げている。村人たちは驚き、悲しみ、途方に暮れ、サブリナを恨むだろう。
ふぅ、と息を吐くと青年が気遣うようにサブリナの顔を伺った。彼は先ほどまで鎖で縛られていた翼を広げ、空を羽ばたいている。
比喩ではなく、本当に。
腕にサブリナを抱き、遠く離れた地上を静かに眺めている。
後悔はしていない。
だからサブリナは「やってしまった」という言葉を飲み込んだ。しかし、心ではまさにそう嘆いていた。




